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第4章4 『招待しよう』

 今、目の前に満面の笑みを浮かべてパフェを頬張る銀髪幼女がいる。

 学生の味方であるジョ○フルのボックス席にて水樹と静流が並んで座り、テーブルを挟んだ向かいにエウルイが座っていた。

 パフェを頬張る度に竜の尾がピョコピョコ動く様子を見て、水樹は内心で「犬みたいだな」と思う。同時にコスプレではない事を嫌でも認識してしまう。

 店内の人々からも物珍しそうな視線を向けられているが、気付かないフリをして無視を決め込む。


「さて、貴方は何者なのでしょうか?」


 痺れを切らしたのか、疑いの眼差しで静流がエウルイへと問い掛ける。


「我が何者なのか? 我はアガルタの正当な後継者であり、次期女王であるエウルイ・ジ・ラックである」


「そう、そのアガルタという国です。わたしが知る限り、世界にアガルタと呼ばれる国名はこの世界には存在していない筈です。しかし、貴方はアガルタの次期女王と名乗りました。当然、出鱈目というワケでもないのでしょう。だからこそ、問うのです。貴方は何者なのか、と」


「……なるほど。こちら側の者たちは我たちを知り得ていない?」


 パフェを平らげたエウルイは興味深そうにそう言った。


「……知り得ていないワケじゃないんだよ」


 アガルタ。それは門の向こう側にある世界。

 それにエウルイは「ふむ」と一つ声を溢しながら、グラスに注がれていたメロンソーダーを一気に飲み干す。


「このシュワシュワした飲み物は始めて。実に良い」


「……貴方はアガルタの者であると断言するのですか?」


「そう、我はアガルタの者。それこそ我自身が証明――と、言えば静流は納得する?」


「残念ながら納得は出来かねます。ただし、貴方がわたしは勿論、人間とも異なる存在である事は理解できます」


「……なら我が竜人である――と、言えば?」


「…………貴方が竜人である証明は?」


「我の尻尾これ


 エウルイはそう言って自身の尻尾を指差す。

 それに静流は天井を仰いだ後に溜め息と共に項垂れた。


「門の向こう側から竜人が自らやって来た。それも開門輪を用いずに単独で。これは困った事になりましたね」


「困る? 我は別に困ってない」


「貴方が困らなくても、神々わたしたちが困るのです」


 キョトンとした様子で首を傾げるエウルイに、静流はそれはそれは深い溜め息を溢す。

 ふと、水樹はとある事が気になり口を開いた。


「ところでエウルイは泊まるところはあるのか?」


「泊まるところ? 無論、野宿だ」


「………………オーケー、とりあえず今晩は我が家へご招待だ」


 エウルイの答えを聞いた水樹は長い沈黙の後にそう言う。それに待ったを掛けたのは静流だった。


「水樹、何を言っているのですか⁉ 相手は竜人なんですよ?」


「とは言っても、こんな幼女一人で野宿させるのは社会的にもアレだ。何よりも警察に補導でもされてみろ。厄介どころ話じゃすまないと思うぞ」


 短時間ではあるが、水樹がエウルイと話をして感じたのは「あまりにも純粋過ぎる」という事。

 こちら側の常識が無いのは勿論だが、何に対しても好奇心が旺盛だ。特に自身の尻尾を隠す素振りすら見せないのはあまりにも危うい。

 時折、見知らぬ人から「何のコスプレですか?」と話し掛けられたりしたので厄介極まりない。

 ならば、いっそのこと目の届く範囲に居てもらった方が得策だろうと考えたのだ。


「……まあ、いざという時はわたしと戦闘狂もいるので何とかなるとは思いますが……」


「だったら良いだろう。と、いうワケだ――エウルイには俺の家に招待してやろうじゃないか」


「水樹の家? うむ、良いぞ」


 エウルイは二つ返事で承諾した。




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