「――妙な気配を感じますね」
土曜日の昼下がり、市内を歩いていると静流がそんな事を言った。
水樹は怪訝な表情を浮かべて周囲を見回すが、怪しい人物は見受けられない。赤猿のように神が人間社会に溶け込んでいるのか――と水樹は思ったが、それを静流は首を横に振り否定する。
「神の気配ではありません。人間……というにしては歪ですし、何よりもこの気配は
「ドラゴン? 龍の血族?」
「はい。ちなみに竜と龍は別種族です。映画等のファンタジー作品で登場する西洋風が竜。雲龍図に描かれている蛇のような龍。源流は同一ではありますが、彼らからすると別種族ですので注意してくださいね。まあ、出会う事は滅多にありませんけどね」
苦笑気味に言う静流。
しかし、今回感じた気配はそのどちらでもなく、あくまでも近いモノ。竜、或いは龍にしては神秘性が不足しているというのは静流談である。
「……気になりますね。水を司る神からの手出しがある程度は抑制できているとは言え、赤猿……ほどではないにせよ、その他の神の介入はあり得ますからね」
「でも、神ではないんだろ?」
「そうです。だから、気になるんです!」
水樹の言葉に静流は力強く答える。
――と、二人が歩く道先に人集りができていた。
何やら「可愛い」や「本物みたい」との言葉が飛び交っている。
「何だろう?」
「見に行ってみましょう!」
静流が意気揚々と人集りの中へ突っ込んで行く。水樹も後を追う。
「――我が名はエウルイ・ジ・ラック! アガルタの正当な後継者であり、次期女王である!」
両手を腰に当て、大きく胸を張り、威風堂々と高らかに宣言するアニメキャラクターのような洋風の服を身に纏った銀髪幼女の姿があった。何よりも目を引くのはうねうねと動く白銀の尾だろう。作り物にしては精巧であり、本物のようだった。
「お嬢ちゃん、それは何のアニメの真似だい?」
「アニメ? 真似? 何を言っているのかわからないけど、我の言葉を疑っている事だけはわかるぞ。我の言葉に嘘偽りはないぞ!」
銀髪幼女は力強く言う。
どうやらこの幼女の珍しい姿に人集りができていたようだ。
水樹としても「よくできたコスプレだ」と感嘆の声を漏らしていたのだが、静流の様子がどうもおかしい。
「……人? いや、
ぶつぶつと呟く静流。
すると件の銀髪幼女が静流をジーっと見つめていた。
「ん? 其方はこの者たちとは違う。その隣の男も――少しだけ混じっている?」
トテトテと銀髪幼女が水樹と静流の前までやって来る。
「……貴方はまさか――」
静流が何かを問おうとした瞬間、銀髪幼女が言葉を遮るように口を開く。
「ん、我が名はエウルイ・ジ・ラック。うん、其方たちに我を案内する名誉を与えよう。我の事は気安くエウルイと呼ぶと良いぞ」
銀髪幼女――エウルイは抑揚の無い声ではあるが、自信満々に人差し指を突き出しながら高らかに宣言した。