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第3話

「面白い客人が来たな」


クロディクスはそう言って朗らかに笑った。

ブルーグレーのストレートの髪が動きに揺れ、クロディクスの左肩で遊んでいる。

男性にしてはずいぶんと長い髪は左右でそれぞれ横髪を緩い三つ編みに編み込まれ、背中の中頃まで伸びた後ろ髪は纏められることなく後ろに流されていた。


左耳にだけつけられているピアスは何かの花の形をしていて、クロディクスの動きに合わせて揺れ動く。


「まさか、見ず知らずの者を置くおつもりですか!」


リュークが目を向いてクロディクスに詰め寄らんばかりに声を張り上げた。

大声を出されたことでミシャルの肩が震える。

クロデュクスに忠誠を誓っているからこその反発だった。


ミシャルはいまだについていけない状況に亡霊のように立ちすくんで2人の言い合いを見ているしか出来ないでいた。


「ミシャル…といったか?」

「はっ、はい!」


突然名前を呼ばれてミシャルは肩を跳ねさせて一驚した。

脊髄反射で返事をしてみせると、クロディクスは笑い出した。

口を覆って肩を揺らすクロデュクスの表情は見えなかったが、笑い声は漏れ聞こえている。

しばらくたってから、クロデュクスはミシャルに向き直ると首を傾げながら問いかけた。


「聞きたいこともある。いく当てがないのであれば、しばらくここに居てくれないか?」


まさかの提案にミシャルはポカンと、大口を開けてクロディクスを見上げた。


自棄になって殺されに来た場所で住む場所を見つける事になるとは、予想もしていなかったことでミシャルは突として現れた僥倖に頷いてしまった。

なぜ自分に優しくしてもらえるのか問いかけようとしたミシャルが口を開く前にクロディクスはつづけた。


「よし、ならすぐに部屋を用意させよう」


ミシャルが頷いた事により、クロディクスの中ではすでに始まっていたらしく、指を鳴らしてミシャルの近くまで歩み寄ってきた。


近くで見ればますます浮世離れした美形にミシャルは逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。


…早まった気がする。

ミシャルは心の中で自分の選択を悔やんだ。


「私はクロディクス。この国の公爵を賜っているが、土地はこの屋敷以外持っていない名ばかりの公爵だ」


クロディクスはそういって、ミシャルに自己紹介をしてみせた。

胸者に手を置いて雄々しくお辞儀をする。

それだけで世の中の貴婦人が卒倒しそうなほどのオーラがでていて、ミシャルの心臓は激しく鼓動を刻む。


「リューク以外に使用人は居ないから好きに過ごしてくれ」


謎の多いクロディクスの言葉はさらに謎を呼びミシャルを混乱させることとなった。

公爵なのに、この不気味なお屋敷だけしか与えられていないクロディクスに色々と聞きたい気持ちを抑えてミシャルもクロディクスに習った。

スカートの端を摘み、カーテシーをしてみせる。


「私はミシャルと申します。お世話になります公爵様」


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