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ゲンを担ぐ

誰でも大なり小なり、「ゲン担ぎ」ってしている事ってあるよね?

「大事な勝負ごとに臨むときは『かつ丼』を食べる」とか。

「こういうことをすると運気が上がる」とか。


僕も最初はそういうことは信じてなかったんだけど、ある仕事の時に「ゲン担ぎ」をしたらうまく行ったことがあって、それ以来信じるようになったんだよね。

例えば、

-新しい商談に臨む前には『めざし』を食べて、成功を目指す-

-足を踏み出す時は左足から-

-毎朝駅前のコンビニでコーヒーを買う-

って感じの本当に他愛もないことばかりだけど、そうしていると気分が落ち着くのもあったりするからね。

それにそのおかげで仕事も順調にできている気がするので、意外とこういったことはバカにできないかもしれないよね。




新しい商談を始めることになったある日の朝。

いつもの駅前のコンビニで、コーヒーを買うのを忘れてしまったんだ。

『たまにはいいか』って気にしないでいたんだけど、やっぱりいつもと違うと気分がよくなくて、駅前までコーヒーを買いに戻ろうとしたんだ。

でもそれがちょうど横断歩道を渡ろうとした時で、振り向きながら「左足」を出そうとしたら足がもつれちゃって、横断歩道にしりもちをつく感じで転んじゃったんだ。

そして体を起こそうとした次の瞬間。

体じゅうを激しい衝撃が襲って、僕は意識を失ってしまった…




「…あ、目が覚めましたか?」

気が付いたら、僕は病院のベッドの上にいた。

看護師さん曰く、

「ちょうど転んだところに信号無視のトラックが来て、はねられちゃったんですよ」

とのこと。

なるほど、どうりで全身が外から中から軋むように痛いわけだ…

命に別状はないそうだけど、「両腕両足の骨折」「肋骨3本骨折」と、正直言ってあまり軽傷とは言えなかった。

でも看護師さんが言うには、

「それにしても運がよかったですね。あと半歩歩いてたら、死んでたかもしれなかったんですよー」

なんだってさ。


それを聞いて、

「このくらいの怪我で済んだのは、普段から『ゲン担ぎ』をしていたおかげなのかもしれないな」

なんて考えちゃったよ。

商談はスタートから少し失敗しちゃったけど、やっぱり「ゲン担ぎ」は馬鹿にできないね。




「何か欲しいものとか、して欲しいこととかありますか?」

看護師さんがそう聞いてきたので、僕は少し考えて、

「食事に『めざし』を入れてもらうことってできる?あと、駅前のコンビニで売っているコーヒーが欲しいんだけど」

と答えた。

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