「…週刊『地球』を創る 創刊のご案内?」
ポストに放り込まれていた差出人不明の封筒には、そんな折り込み広告が入っていた。
曰く、
「毎号付属の『地球の素』を全巻分揃えると、『あなただけの地球』が完成します!」
とのこと。
しかもこの手の雑誌にありがちな、「創刊号だけ安くて、後はどんどん高くなる」というシステムではなく、最終巻まで「290円」とあった。
これなら最終巻まで買ってもそんなに負担にならなさそうだ。
「地球を創る」ということがどんなものなのか興味が湧いたので、定期購読を申し込んでみた。
創刊日。
早速最初の「地球の素」が届いたが、届いたものはなんと「水」だった。
いきなり水とは面食らったが、確かに「地球の素」としては一番大事なものなのかもしれない。
ちなみにパッケージには「最終号で素材が全部揃うまで、開封しないでください」と書いてある。
最後の最後まで楽しみを取っておく趣向なのかもしれない。
毎週届く「地球の素」は、地球を構成する素材のようで、鉄の塊、袋一杯の土、砂金、塩…
とにかく色々なものが届き続けた。
そして部屋の中が未開封の「地球の素」だらけになってきた頃、最終号を迎えた。
最終号の付録は、ボウリングのボールくらいの大きさをした球体、「星の器」と「星の台座」。
説明書には
「『星の器』に今まで届いた素材を全部入れて『星の台座』にセットすると、46時間で『あなただけの地球』が完成します」
と書いてあった。
説明書の指示通りにすべての素材を「星の器」に入れて、「星の台座」にセットした。
ただ、どう見ても泥水の中に金属片が散らばっているようにしか見えなかった。
46時間後。
無事に地球は「完成」した。
「星の器」の中には、まるで本物のような「地球」が浮かんでいる。
近づいて見ると、地形まで本物そっくりに仕上がっていた。
あまりの出来のよさに感心して「地球」を手に取ろうとした瞬間、急に地面が揺れ始めた。
文字通り天地がひっくり返る激しさで世界がゆさぶられ、天は裂け、地面は割れ、一瞬にして世界は終わりを迎えた。
「あー!おかーさーん、ミーコがやっちゃったー!」
「なぁに、どうしたの?」
「ミーコがいたずらして、棚に飾ってあるのをおっことしちゃった…」
「あらまぁ、せっかく完成したばかりだったのにねー」
そんな会話をしている親子の足元には、「ボウリングのボールくらいの大きさをした球体だったもの」が、粉々になって散らばっていた…