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歴史の目撃者

「…成功だ」

部屋の壁に掛けてあるカレンダーの日付を見直して、俺は思わずつぶやいた。


先日やっと完成したタイム・マシンで過去と未来に各々テストで行って来て、どちらも無事に帰ってこられたのだ。


テスト中で余裕がなかったので、過去も未来もどちらにも何か証拠になるようなものは残してこなかったが、確かに俺は過去へも未来へも行って、こうして無事に帰って来た。

だが、証拠ならこれから作ればいいこと。

俺のかねてからの夢、「『歴史の目撃者』になること」で、俺がタイム・トラベルをした証拠を残すのだ。


早速俺は、「歴史の目撃者」になるべく、タイム・トラベルを開始した。


古今東西の謎の真相、歴史の中に埋もれてしまった「真実」、世紀の大事件…

そう言った「歴史に興味がある者なら知りたい事柄」を、俺は実際にその場で「目撃」した。


俺は見聞きしたものすべてを映像,写真,書面に残し、元の時代に戻る準備を整えた。

そしてタイム・マシンに「出発した日時」をセットして起動したその瞬間。

突然目の前が真っ白になり、気を失ってしまった…




−お、目が覚めたかな?−


そんな言葉が遠くの方に聞こえてきた。

その声に俺が目を開けると、そこは「ただ真っ白な場所」だった。


前後も左右も上下もない、とにかく真っ白な世界。

立っているのか横たわっているのかも判らない。


そして俺の顔を覗き込む男が一人。


「…ここは?」

俺が聞くと、男は答えてくれた。

曰く、

「ここは『どこでもいつでもない所』で、タイム・トラベラーが『歴史の記録』を持ち帰ろうとするとここに送り込まれ、元の世界に戻る方法はない」

のだそうだ。


「ほら、『歴史の謎が解明された』って話、全然聞かないでしょ?」

男はそう言い、

「実は僕も、そうしようとしたクチでね」

と続けた。


真っ白な世界に目が慣れると、俺たち以外にも人間がいることに気づいた。

いつの時代のどこの世界の人間かはわからないが、少なくない人数がいるようだ。

…それだけ歴史の謎を解明しようとして、「失敗」した者がいるということか…


妙に納得していると、足元に何か映り始めた。

そこにはさっき俺が見てきた「歴史の出来事」が、映像として流されていた。

今度は胸の前あたりで、これも俺がさっきまで見てきた「別の時代の歴史の出来事」が流れ始めた。


どれも「リアルタイムで起こっている出来事」なのだろうか…

「永遠の歴史の目撃者」になった俺は、周りで延々と流れる映像を見続けていた… 

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