ある日、ある時、ある場所で。
突如現れた「悪の組織」に、「世界征服」が宣言された。
悪の組織の力は強大で、世界中のどの軍隊も歯が立たなかった。
世界征服は着実に進んでいき、もはやこれまでと誰もが諦めかけたその時…
どこからともなく「正義の味方」が現れ、悪の組織に戦いを挑んだ。
彼の活躍により、悪の組織の世界征服の勢いは徐々に弱まっていった。
やがて彼と共に戦う者も現れ、かけがえのない仲間を得て、そして失い、傷つきながらも戦い続けた。
そして多くの犠牲を払いながらもついに悪の組織を壊滅させ、世界征服の野望を打ち砕いた。
世界に再び平和が訪れ、人々に笑顔が戻った。
彼はそれを見届けると、
「平和な世界には不要な、私のような存在は消えていくべきだ」
そう言ってどこへともなく姿を消し、やがて人々の記憶からも「世界の平和を守り抜いた正義の味方」の存在は消えていった。
世界征服の悪夢が潰えて、かなりの月日が経った頃。
姿を消した「正義の味方」は世界中を巡り、彼の守った世界を直接見て、聞いて、体験していた。
そこで彼が目の当たりにしたものは…
平和の上にあぐらをかき、怠惰を貪る若者。
汚職と不正に満ち満ちた政治家や企業。
人々がお互いを敬いあうことなく、自分勝手に暮らしている乱れた社会。
強者が弱者を食い物にする犯罪の横行。
どれも目を覆わんばかりの現実だった。
−私が守ろうとしてきたのは、こんな堕落した世界だったのだろうか−
彼は考え、悩んだ。
そしてある日。
彼はかつての仲間たちを、彼のもとへと招いた。
久しぶりに一堂に会した仲間たちは、長い年月を経ていても昔と少しも変わっていなかった。
皆懐かしそうに再会を喜び、そして旧交を温めていた。
しばらくすると彼が現れ、仲間たちは一斉に彼へと視線を向けた。
それは彼との再会を懐かしんでいるようでもあり、彼の言葉を心待ちにしているようでもあった。
彼は仲間たちを見回すと、静かに口を開いた。
「私は、かつて私が信じた『正義』のために、この腐りきった世界に鉄槌を下すことを決めた」
彼を見る仲間たちは一言の声も上げず、彼の話に耳を傾けていた。
「今ここに、我々の『正義』を実現する世界を作るための活動を開始する!」
仲間たちはその言葉に強く頷き、無言で賛同の意志を示した。
まるで仲間たちも、彼と同じことを考えているかのようであった。
そして彼は力強く、声高らかに宣言する。
「さあ、我々の『正義』を実行しよう!」