「おー、ここが冒険者ギルドですか」
翌日―――
スフィアさんの案内でやった来た場所は、
およそ三階建ての中世風の建物。
そして武田さん、
「帰って来たかぁ、スフィア!!
ってゲッ、あのガキは……」
到着するや否や、昨日絡んできたであろう
1人が、俺を見るなり顔色を変える。
「な、何の用だよ」
「ここは一般人が来る場所じゃ―――」
他に見知った連中も、次々と俺たちが
来た事に対し、戸惑いの声を上げるが、
「いえ、ギルドマスターさんにお会い
したくてですね」
俺が穏便に済まそうとそう告げると、
「おー、お前がコイツらが言っていた、
『
だったら知っているかぁ?
お前らのような奴らは、ここに入るのに
『通行料』が必要でな」
モヒカン頭の巨漢が、そう言って俺の
胸倉をつかんできたので、
俺はそのまま彼の手を内側に回して、
関節技を
「はぐあっ!?」
急に床に顔面を押さえつけられるような
姿勢になった彼は戸惑うが、
「スキルの有り無しで、腕が逆に回るとか、
関節を外せないとか……
そんな事あるわけないでしょう。
あとすいませんね、突然の攻撃に
関しては警告対象外なんです」
俺が立ち上がると、彼は解放されたが、
極められた腕をかばうようにして、
俺を驚愕の目で見つめる。
「何の騒ぎだ?」
そこに赤い短髪をした―――
筋肉質のアラフィフの男性が出て来て、
「ビ、ビッカブギルドマスター」
受付の女性職員の言葉で、彼が目当ての
人物だと判明した。
「『
めったにお目にかかれないスキル持ちに
出会えて光栄だね。
そこの『無能』と『
そしてテイマーと何で同行しているのか
不明だが」
一番上の階、恐らくギルマスの部屋であろう
一室に俺たちは通されたが、
強力なスキル持ちが低スキル持ちと何で
一緒にいるのか、理解出来ないという事を
隠そうともせずに彼は語る。
「まあちょっと、お話ししたい事が
ありましてね」
「そこのスフィアさんの事です」
熊谷さん、白波瀬さんがまず口を開く。
「なんだね?」
2人には対してはまともに話そうと
するのか、耳を傾け、
「彼女は、この国を長年苦しめて来た、
スタンピードを解決した派遣隊、
その一員です。
それなのに、異様に扱いが低い気が
しまして―――」
「確かに戦闘そのものは落ち着いた後に
来ましたが、再発させないよう交渉し、
それを確約させたのはスフィアさんの
功績です。
ですが、それに見合った扱いを受けて
いるとはとても思えず」
武田さんの後に俺が話すと、ビッカブさんは
急に不機嫌になり、
「おい、クズども。
誰がしゃべっていいと言った?
お前らが俺の前にいる事を許して
いるのは、そこの2人がいるからだ。
わかったら俺の許可なく口を開くんじゃ
ねえよ」
やれやれ、という感じで彼は背もたれに
背中を押し付ける。
それを聞いた俺はふぅ、と、この世界に
来て何度目かわからないため息をつき、
「あー、どうどう
「わかっていない人間ならこんなもの
だから」
そう白波瀬さん、熊谷さんが俺を
なだめると、
俺はこの世界で手に入れた銅貨を
黙って取り出し、それをピン、と
彼の目の前で天井近くまで指で弾く。
「あ?」
ギルドマスターはそれにつられ、視線を
上に向け、
「シュッ」
同時に俺は彼のアゴをめがけ、
フックを放つ。
とても軽い子供のパンチだ。
それを受けたビッカブは視線を正面に戻し、
「あぁん?
てめぇ、何しや、が、る……!?」
そのまま彼は姿勢を崩し、まともに座って
いられなくなる。
「
この世界にゃ馴染みのない現象かもな。
で?
見下していた『
気分はどうだ?」
目前のテーブルやイスにしがみついて、
何とか態勢を整えようと四苦八苦する
ギルドマスターを、俺はただ見つめていた。