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第54話・ダンジョン調査報告02


俺は大きく鼻から息を吹き出すと、

周囲を見渡して、


「まず、トーノクーブさん―――

 当然すでに亡くなっておられますが、


 そこにいたオーガやゴブリンたちに

 取っては神様のような存在であった

 ようで、玉座のようなイスに白骨化した

 死体が座らされていました。


 そのトーノクーブさんが書き残した

 書類も、字は読めなかったでしょうが、

 長老らしき者が大切に守っていました」


そこまで説明して俺は一息つき、


「なので、そのトーノクーブさんが

 残した遺志を彼らに伝えたのです。


 彼らがそれをたがえる、破るというのは

 考えられません。


 その証拠に彼らは、トーノクーブさんの

 遺体を玉座に載せたまま去りましたから」


神同然に敬っていた者の残した言葉を、

破るはずがないという俺の主張に、

少しは連中も落ち着きを取り戻したものの、


「だ、だがそれでも魔物は危険だ」


「後々の事を考えれば、そこで全滅させた

 方が良かったのではないか?」


「しょせんは魔物。

 信頼関係など結べるはずは……」


それでもなおブチブチと文句が飛んで

来るので、俺はクソデカため息をついて、


「信用だの信頼だの―――


 状況を理解しておられるんですか?

 僕なら、迷う事なく魔物の方を信用

 しますよ」


「魔物を?」


王が俺に向かって問い質す。


「え? だってそうですよね?


 一方は問答無用で呼び出しておいて、

 役立たずだと決めつけてゴミのように

 捨てた、自分勝手で無礼なクソ国家。


 もう一方はきちんと恩返しをして、

 自分に代わって復讐まで成し遂げて

 くれた魔物たち。


 どっちを信用するかなんて、そんなの

 バカでもわかるんじゃないですか?」


雨霧あまぎり君、ステイステイ!!」


「だからもうちょっと様子見て!

 初球160kmの火の玉ストレートは

 誰も打ち返せないの!!」


熊谷くまがやさん、白波瀬しらはせさんが、

慌てて飛びつくようにして俺の口をふさぐ。


そんな様子を見て王は苦笑し、


「……返す言葉も無いな」


『王よ』『それは』と、今度は困惑した

言葉が国王に向かい、


「わかった―――


 今後、召喚者に対する待遇は

 改善すると誓おう。


 また非戦闘系スキルに対する

 差別意識にも着手する事を

 約束する」


続けて出た王の言葉に、側近や重鎮じゅうちんであろう

連中は黙り込み、


「では、今回の件は……」


武田さんが問うと、


「非戦闘系スキルの手柄や実績とは

 言えないだろうが、


 その脅威は十分に認識出来た。


 スタンピードの原因が、かつて追放された

 非戦闘系スキルの召喚者だとわかれば、

 価値観も変わっていくだろう」


それを聞くと、アスタイル王国と

シーライド王国の召喚者たちは、

安堵の表情を浮かべた。





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