あれから3日後―――
テイマースキルを持つ人が来て、
オーガともゴブリンとも見分けが
つかないほど、老いた長老らしき
人物と語り合い、
トーノクーブの言葉を伝え……
この洞窟から立ち去る事、
もう集落や王都を襲う必要は無い事、
そして彼らに大変感謝していた事などを
伝えると―――
『グアオオオオ』『ピギイィイイイ』と、
大声で涙を流しながら叫んだ。
「言葉、通じましたか?」
俺はそのテイマースキル持ちの人に
たずねてみたところ、
「そうですね。
魔物や動物とは言葉というより、
イメージで伝え合うのですが、
ここのオーガやゴブリンたちは
何というか……
かなり複雑なイメージでも理解して
くれましたので、コミュニケーションは
非常に楽でした」
長年、人間と暮らして来たわけだし―――
それに医者という高度な教育水準の人が
導いて来たのだ。
その影響もあるに違いない。
そこへリーダー格であろうオーガが、
こちらを見下ろすようにやって来て、
彼の肩をつつく。
「?? どうしたんですか?」
「ええと、ちょっとお待ちください。
えー、何々……?」
そこで彼は、そのオーガが指差す先を
見て、つられて俺も視線を移すと、
そこにはトーノクーブの
玉座があって、
「あれを持っていっても良いか、と
聞いて来ていますが」
「いいんじゃないですか?
彼らの方が、手厚く扱ってくれそう
ですし」
俺がその事を伝えると、そのオーガは
土下座して祈るような格好を取って、
感謝を伝えて来た。
「おーい、こっちは準備出来たようだ」
「全員、いつでもここを出て行ける
ようですよ」
手を振ってやって来て、
「こっちの携帯食や調味料も全部上げて
しまいましたけど、構いませんよね?」
武田さんも、両手の手の平をこちらに
向けて、ひらひらさせる。
そして俺たちは全員、洞窟の外へと
移動した―――
「ピギー……」
「ブゴッ、ブゴ……」
白波瀬さんの
洞窟は
今までの住処が崩れ落ちる様を―――
オーガやゴブリンたちは
見つめていた。
「じゃあ、ここでお別れですね」
俺が魔物たちに向かってそう言うと、
誰からともなく、彼らは玉座を大事そうに
そのまま、森の奥へと消えていった。
「任務完了、って事でいいのかな?」
「スタンピードの元凶であるダンジョン
そのものを潰したんだ。
文句は無いだろうよ」
シーライド王国の召喚者たちも
うなずき合い……
俺たちは王都へと足を向けた。