「!!」
ゴブリンやオーガの雄叫びと共に、
即座に戦闘になると身構えたが、
「!?」
「まさか、陣形を!?」
その異様な状況に気付く。
一糸乱れぬ、とまでは言わなくても、
彼らは完全に統率された動きを見せた。
恐らくは彼らの女子供であろう、小さな
個体を奥へと逃しつつ、
玉座の前に集まり、防御を固める。
「彼らは統率されているのか!?」
「やはりダンジョンマスターが……!」
シーライド王国側の召喚者たちも、
その動きに困惑した声を上げる。
「とにかく―――
彼らが全力で守っているヤツを、
倒さなければならないようです!
武田さんは僕の側を離れないで
ください!」
こうして、ゴブリン・オーガ混合組と、
アスタイル王国・シーライド王国の
召喚者たちのバトルが始まった。
「……おかしいですね」
「?? 何が?」
僕と武田さんは女子供で、非戦闘系スキルの
持ち主(と思われた)だからか―――
前線には出されず、後方で彼らのバトルを
見ていたが、
「いえ、戦い方と言いますか……
とっさに陣形のように動いたので、
何らかの連携攻撃をして来るかとも
思ったんですけれど」
俺の目にはゴブリンもオーガも―――
とにかく目に付いた近くの敵に対し、
個人の武を頼りに攻撃を仕掛けているとしか
思えず、
それは先ほど彼らが見せた、こちらを
発見してからの動きとは
予め決められた事を実行しているだけか?
確かに、本拠地奥まで侵入された場合、
まず非戦闘員を逃がし、キングの周囲を
守るだけなら、複雑な指令はいらない。
それに気にかかるのは……
彼らの背後にいるダンジョンマスター
らしき者が、全く動く気配が無い事だ。
指示の1つでも飛ばして良さそうな
ものだけど。
声が出せないのか、それとも何らかの
通達方法でもあるのか―――
と考えていると、
「おっしゃー!!」
『
やっと魔物たちの猛攻をかいくぐり、
ダンジョンマスターが座る玉座へと迫る。
「フゴゴッ!?」
「プギイィイイーッ!!」
すると、他の召喚者たちと戦闘していた
ゴブリンやオーガたちも、
察したのか、その場を放棄して熊谷さんの
後を追う。
当然、それまで戦っていた相手に背を向ける
事になり……
召喚者たちはそれを見逃さず、1匹、また
1匹と彼らを打倒していくが―――
「……!?」
玉座へ剣を振りかぶった熊谷さんに、
魔物たちの手はとうてい追い付かず、
これで決着かと思われたが、
突然、彼はその手を止めて、
「な、何をしているの!?
熊谷さん?」
白波瀬さんが思わず声を上げるが、
彼は玉座に対しては何もせず、そのまま
数歩後ずさる。
そしてダンジョンマスターらしき人物に
向けて、指差すと、
「これは―――」
「アンデッド!?
い、いや違う」
「人間の……
よく見ると、玉座に座っていたのは―――
いや、座らされていたのは何らかの衣装を
まとった人間の骨で、
「お、おい見ろ!」
「魔物どもが」
周囲を見渡すと、そこには……
跪いて祈るような姿勢を取った、ゴブリンや
オーガたちがいた。