翌日、シーライド王国の召喚者……
その代表者と思われる複数のメンバーとの
話し合いの場がさっそく設けられた。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
「あのクソ王はどこだ?
召喚した時にドヤ顔していた、
クソジジイもいやがらねえ」
「当然、責任者の首の1つや2つ、
差し出すんだろうな?」
代表として来た方々は、最初から
殺気全開垂れ流しであり―――
一応、シーライド王国の記録係として
来ていた青年が、ビクビクしながら
こちらの顔色をうかがう。
「(うわー。
こーりゃヤバそうね……)」
「(最初から人質を取って、無理やり
従わせていたんですから―――
まあこんなものでしょう)」
俺は仕方が無いというように首を
横に振る。
「(これ、話し合い出来る?)」
「(どうでしょうか……
だって向こうは問答無用だったん
でしょう?
立場が逆転したからって、それは
あまりにも身勝手な言い分だと、
彼らもわかっているでしょうし)」
答え―――
こうして、召喚者同士の話し合いは
スタートした。
「ほー……
謝罪は無理、和解もダメ」
「
「むしろそっちの方が私はいい。
下手に妥協されるより、
全力で殺したい―――」
向こうは男女合わせて5人ほどだが、
意見にそれほど差異はない。
それだけ、恨んで憎んで
事がうかがえる。
「き、希望者がいればアスタイル王国で
保護します」
「あちらも似たようなものでしたけど、
最近、和解が成立しましたので……
現状は非戦闘系スキルへの待遇改善、
差別意識の改革に取り組んでいます」
こちらの代表である熊谷さん、白波瀬さんが
まず穏健に話すと、
「そっちは一部の暴走、という事で
落としどころを見つけたんだろうが」
「こっちは最初から人質に虐待だぞ?」
「それに人死にも出ているんだ。
和解案なんてありゃしないよ。
それとも、死者を生き返らせる事が
出来るとでもいうのかい」
そう、取り返しのつかない事がある。
殺す・死なせるというのがそれだ。
原状復帰出来ない、やり直せない
最たるもので―――
これを出されるとどうしようもないのだ。
そこで俺が代表の男女に目をやると、
仕方がない、という感じで目を伏せて、
「やっぱり、皆殺ししかないですよね」
俺がそう言うと相手方から『は?』『え?』
という声が聞こえて来て、
「アタシたちも向こうでそれを主張したん
ですけど……
反対多数で却下されてしまって。
でもここの人たちなら、きっと
賛成に回ってくれると思います!」
続けて武田さんが追い打ちをかける。
「そもそも―――
この世界に召喚された事がきっかけ
ですよね?
この不幸の始まりは。
それなら、もうこれ以上……
こんな不幸な目にあうのは自分たち
だけでいい、
2度とこの世界に召喚させない、
それなら、この世界の知的生命体を、
全滅させればいいって提案したん
ですけどね」
俺の言葉に、思わず向こうが1人2人
手を挙げ、
「それは、女子供までも―――か?」
「え?
だってアタシもそこにいる
召喚された当初から酷い目にあって
来たんですよ?」
「あっちが女子供も関係なく酷い目に
あわせてくれたのに……
こっちが容赦する必要なんて
ありませんよね?」
女性である武田さん、そして
12・3才くらいに見える俺の言う事に、
向こうサイドは言葉を詰まらせる。
そして意を決したかのように、
1人が身を乗り出して口を開き、
「ま、待ってくれ!
人質になっていた妹から聞いたのだが、
あちらでも裏や見えないところで、
助けてくれた人もいたらしい」
「確かに非戦闘系スキルに対する差別意識は
強いが―――
全員、1人残らずというわけでは」
「そういう事情もあるから……
少し落ち着いて欲しい」
と、彼らの頭はようやく冷えたらしく、
そこから本当の『話し合い』に入った。