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第43話・シーライド王国の対応03


「はあっ!!」


熊谷くまがやさんが、自身が持っていた剣を

『床』に叩き込むと―――

地震のように建物全体が揺れ、


こちらを捕らえようと取り囲んでいた

兵士たちは、体勢をぐらつかせ……

中には転ぶ者もいて、


「次はあたしの番ね」


白波瀬しらはせさんが、そのワンレンロングの髪を

かきあげて、天井へと片手をかざす。


すると高い天井についていた―――

シャンデリアのような照明が、暴風に

あおられて大きく揺れ動き、


「うおあっ!?」


「よ、避けろっ!!」


兵士たちが慌ただしく動いて、落下物から

逃げ惑う。


「なっ!?」


「お、おいフィーズ!!

 なぜあ奴らは攻撃出来るのだ!?」


糸のような細い目をした青年は、その目を

大きく見開き……

王は状況について説明を命じる。


まあ、攻撃不可能だと思っていたこっちが、

いきなり暴れ始めたらそうなるよな。


「じ、自分の魔法―――

 『一方的抑止ワンサイド・デタレンス』は効いているはず……!!


 そ、それなのにどうしてぇ!?」


彼は両手で頭を抱えながら混乱するが、


「いやだって……

 敵意や悪意に反応するんでしょ?」


「床や天井や壁を、どうやって憎んだり

 恨んだり出来るんですか?」


「は?」


「あ?」


俺と武田さんの説明に、王その他の

側近たちは、ポカンと口を開ける。


「無機物だもんなあ。

 そりゃ敵対も何もねーよ」


「天井や床に対して感情的になるような、

 特殊な嗜好しこうは無いですしね」


熊谷さん、白波瀬さんの言葉に―――

連中は顔面蒼白がんめんそうはくとなる。


「く、くく……っ!」


それまでの一方的な自信や余裕は消え失せ、

この場をどう切り抜けるか考えているので

あろう、王はひたすら焦りまくるが、


周囲を見ても、特別なスキルを

持っているような人材は見当たらない。


まあ攻撃無効化のようなスキル持ちが

いるのだ。

その上で攻撃スキル持ちがいても、

無意味だと思ったのだろう。


今回の件が異常だっただけで―――


「さーて」


「王様?」


全武器特化ウェポンマスター』に『全天候魔法オール・ウェザー』の

スキルを持つ2人が、彼に足を向けると、


「ひいぃっ!?」


すでに兵士たちは散り散りになり……

俺たちと王の間をさえぎる者はおらず、

彼は玉座に背中を押し付ける。


「この国において―――

 非戦闘系スキル持ちが、どのような

 扱いを受けているのかは理解しました」


「この身をもって、ね……」


俺と武田さんがまず抗議の意を示し、


「彼らはアスタイル王国の正式な

 使者でもあります」


「今回の数々の非礼―――


 アスタイル王国及びその召喚者たちへの、

 敵対行為と見做みなしても構いませんね?」


この2人は、アスタイル王国が王城に

留め置いた召喚者の、さらに代表。

つまり最強戦力の一角。


『一方的抑止』とやらが無意味となった今、

彼らを止められる者は……

少なくともこの場にはいないのだろう。

側近も誰も彼もが遠巻きに距離を置いて、


「わわ、わかった!

 余の非礼はびよう!!


 何が望みだ!?」


いきなりの謝罪に、俺は『ん?』と

疑問を感じる。


この国がスキル至上主義というのは、

嫌でも理解した。

さらにその王たる者が、こんなにあっさりと

負けを認めるものだろうか?


「あの、失礼ですが―――

 王様には何か、攻撃スキルは無いので

 しょうか」


どうして応戦しない?

という事を遠回しに聞いてみると、


「……あるにはある。

 『星落としメテオ』というスキルだ。


 だが建物の中では使えん。

 よしんば使ったとしても、城は崩落ほうらく―――

 余も無事では済むまい。

 それに、大勢の犠牲者が出てしまう。


 よってこれ以上、事を構えるのは

 避けたい」


ふーむ……

一応、施政者としての素質はあるわけか。


確かにアスタイル王国でも、有用な

スキル持ちは、全員城で保護していたしな。


さらにお城となれば、メイドや料理人、

その他の働く人間も道連れとなる。


国の最高責任者として―――

それは容認出来ないという判断だったの

だろう。


「わかりました」


「では、こちらの要望をお伝えします」


そして改めて……

熊谷さん、白波瀬さんを中心に、

シーライド王国との話し合いが

スタートした。




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