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第42話・シーライド王国の対応02


「誰だ!?」


「何者だ!?」


ノックもしないで扉を開けて入ったからか、

口々に自分の正体についての質問が飛んで

来るが、


どうやら王はいるらしく、奥の一段高い

玉座の上でふんぞり返っていて、


熊谷くまがやさん、白波瀬しらはせさん。

 アレが王様?」


俺が何やらものものしい雰囲気の2人に

聞くと、


「無礼者!!

 何者かは知らぬが、余の許可なく

 前に出る事を許した覚えはないぞ!!」


そう王様が怒鳴るので、


「無礼?


 失礼ですが、敬意を払うべき相手など

 どこにもいなかったのですが?」


そう言いながら俺は、引きずって来た

兵士の1人を放り投げる。


「あー、そういえば彼、こういう

 人間だったわ」


「簡単にやられるわけないわよねえ……」


と、先に来ていた代表の2人が、

呆れるように語る。


雨霧あまぎり君のおかげで、

 アタシは無事でしたけど、

 どういう状況ですか?」


武田さんが状況を確認するため、

彼らに問う。


まあ、王との謁見の場なのに、

跪く事なく立って対峙していれば―――

そう思うのも仕方ないだろう。


「君たちが、兵士の相手をさせられて

 いると聞いたので」


「それでちょっと感情的になっちゃったん

 だけど」


そう言うと2人は、王の側近の中の1人に

視線を向ける。


「おやおやぁ?


 どうやら、思ったより使えそうな

 スキル持ちが増えたようですよぉ、

 陛下?」


20代そこそこの糸のような目をした

青年の言葉に、王も呼応して、


「そのようだな。


 どの道、フィーズの『一方的抑止ワンサイド・デタレンス』が

 あれば……

 誰が来ようが敵ではない。


 彼らを拘束せよ!!」


その命令に、周囲に配置されていた

兵士たちがジワジワと距離をせばめる。


「どうしたんですか?

 熊谷さんはともかく、白波瀬さんまで」


「武器が無いのはともかくとして、

 『全天候魔法オール・ウェザー』で

 抵抗は出来ると思うのですが」


俺と武田さんがそう質問すると、


「違う、あのフィーズって男のスキルだ」


「『一方的抑止』―――

 どうもあたしたちの敵意や戦意に

 反応して、動きを止めてしまう

 らしいのよ。


 それで手出しが出来なくって」


先に来ていた男女の表情に焦りが浮かぶ。

なるほど……

それで、安全だと思って兵士たちは

近寄って来ているわけか。


「それじゃあ、まあ。

 熊谷さんも手ぶらじゃ何も出来ない

 でしょうし」


そう言うと、近くに転がしておいた

あの兵士の剣を抜き取り、彼に渡す。


「いや、話聞いていたか?

 だから俺の『全武器特化ウェポンマスター』が

 あっても、意味無いんだよ」


「そうでしょうか?


 だって、敵意や戦意に反応するだけ

 なんですよね?


 それなら、いくらでも対応策はあると

 思いますけど―――」


すると、それを聞いていた王や

フィーズという青年は笑い出し、


「ハッハッハッ!!

 面白い事を言う子供だ!!


 『無能ノースキル』という話だが、

 ユーモアセンスはあるようではないか!」


「あのねぇ坊や、どうやって戦意も敵意も

 持たずに、攻撃するつもりなんですかぁ?


 後学のため……

 教えて頂きたいものですよぉ」


からかうような言動に、周囲を囲む

兵士たちの歩みが一瞬止まり、

彼らも笑い出す。


「えっと、雨霧君。

 あなたの方で何とか出来れば―――」


「んー、別に僕じゃなくても……

 だって相手が人じゃなければ、別に

 良さそうですし」


武田さんの言葉に俺が答えると、

熊谷さんも白波瀬さんも『あ』と言って

顔を見合わせ、


「よし!

 2人とも離れないでくれ!」


「あー、そういう事かぁ~。

 わかったわかった!」


すると2人とも、納得したように戦闘態勢に

入って、


「む?

 何をする気だ?」


「何をしてもムダなんですけどねぇ」


王と側近の青年が余裕の表情を見せる中、


「はあっ!!」


熊谷さんが、自身が持っていた剣を

『床』に叩き込んだ―――





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