「誰だ!?」
「何者だ!?」
ノックもしないで扉を開けて入ったからか、
口々に自分の正体についての質問が飛んで
来るが、
どうやら王はいるらしく、奥の一段高い
玉座の上でふんぞり返っていて、
「
アレが王様?」
俺が何やらものものしい雰囲気の2人に
聞くと、
「無礼者!!
何者かは知らぬが、余の許可なく
前に出る事を許した覚えはないぞ!!」
そう王様が怒鳴るので、
「無礼?
失礼ですが、敬意を払うべき相手など
どこにもいなかったのですが?」
そう言いながら俺は、引きずって来た
兵士の1人を放り投げる。
「あー、そういえば彼、こういう
人間だったわ」
「簡単にやられるわけないわよねえ……」
と、先に来ていた代表の2人が、
呆れるように語る。
「
アタシは無事でしたけど、
どういう状況ですか?」
武田さんが状況を確認するため、
彼らに問う。
まあ、王との謁見の場なのに、
跪く事なく立って対峙していれば―――
そう思うのも仕方ないだろう。
「君たちが、兵士の相手をさせられて
いると聞いたので」
「それでちょっと感情的になっちゃったん
だけど」
そう言うと2人は、王の側近の中の1人に
視線を向ける。
「おやおやぁ?
どうやら、思ったより使えそうな
スキル持ちが増えたようですよぉ、
陛下?」
20代そこそこの糸のような目をした
青年の言葉に、王も呼応して、
「そのようだな。
どの道、フィーズの『
あれば……
誰が来ようが敵ではない。
彼らを拘束せよ!!」
その命令に、周囲に配置されていた
兵士たちがジワジワと距離を
「どうしたんですか?
熊谷さんはともかく、白波瀬さんまで」
「武器が無いのはともかくとして、
『
抵抗は出来ると思うのですが」
俺と武田さんがそう質問すると、
「違う、あのフィーズって男のスキルだ」
「『一方的抑止』―――
どうもあたしたちの敵意や戦意に
反応して、動きを止めてしまう
らしいのよ。
それで手出しが出来なくって」
先に来ていた男女の表情に焦りが浮かぶ。
なるほど……
それで、安全だと思って兵士たちは
近寄って来ているわけか。
「それじゃあ、まあ。
熊谷さんも手ぶらじゃ何も出来ない
でしょうし」
そう言うと、近くに転がしておいた
あの兵士の剣を抜き取り、彼に渡す。
「いや、話聞いていたか?
だから俺の『
あっても、意味無いんだよ」
「そうでしょうか?
だって、敵意や戦意に反応するだけ
なんですよね?
それなら、いくらでも対応策はあると
思いますけど―――」
すると、それを聞いていた王や
フィーズという青年は笑い出し、
「ハッハッハッ!!
面白い事を言う子供だ!!
『
ユーモアセンスはあるようではないか!」
「あのねぇ坊や、どうやって戦意も敵意も
持たずに、攻撃するつもりなんですかぁ?
後学のため……
教えて頂きたいものですよぉ」
からかうような言動に、周囲を囲む
兵士たちの歩みが一瞬止まり、
彼らも笑い出す。
「えっと、雨霧君。
あなたの方で何とか出来れば―――」
「んー、別に僕じゃなくても……
だって相手が人じゃなければ、別に
良さそうですし」
武田さんの言葉に俺が答えると、
熊谷さんも白波瀬さんも『あ』と言って
顔を見合わせ、
「よし!
2人とも離れないでくれ!」
「あー、そういう事かぁ~。
わかったわかった!」
すると2人とも、納得したように戦闘態勢に
入って、
「む?
何をする気だ?」
「何をしてもムダなんですけどねぇ」
王と側近の青年が余裕の表情を見せる中、
「はあっ!!」
熊谷さんが、自身が持っていた剣を
『床』に叩き込んだ―――