一方その頃―――
王に謁見を許された
アスタイル王国から渡された手紙に
ついての、質疑応答を行っていた。
「……これを見るに、アスタイル王国は
召喚者の虐待を行っていた、とあるが」
「はい。
正確には、非戦闘系スキルの召喚者への
非人道的な扱いです」
「現在は例えどのようなスキルであっても、
ぞんざいな扱いは許されないよう、
待遇改善を行っております。
それは手紙にも書いてあると
思われますが―――」
そして玉座に座った国の最高責任者は、
その内容を読み進め……
「まあ、アスタイル王国がどのような
待遇を召喚者へ行っておるのか、
我が国が知った事ではないが。
それでどうしたいのだ?
我が国でも、そういった召喚者への
待遇を改善しろと?」
王の言葉に、代表として来た男女の眉が
ピクリと動く。
「それはつまり―――
シーライド王国でも、非戦闘系スキルの
召喚者への対応は……」
「当然であろうが。
せっかく呼び出してやったというのに、
ハズレをつかまされたのだぞ?
役立たずはせいぜい、他の者の
なってもらわねば困るであろう」
思わず熊谷が立ち上がろうとするが、
跪いたままの状態の白波瀬がその肩を
押さえて、
「ところで―――
あたしたちと一緒に来ていた、
もう2名の召喚者の姿が見えないの
ですが。
あの2人は今どこに?」
彼女の質問に、王は近くにいた側近に
目配せして、
「あの者どもは確か、『
『
そのような者を陛下にお目通しさせる
わけにはいきません。
なので兵士たちの相手をしてもらう
事にしました。
その程度しか、役に立つ用途が
思いつきませんでしたので……」
「なんだと!?」
青年の方はさすがに立ち上がり、
抗議の意を示す。
そして肩をつかんだままの女性の方も、
つられて立ち上がる事になり、
「我々は、アスタイル王国の使者で
ありますが?」
すると王は面倒くさそうに、
「だから何だというのだ?
使者というのであれば、それなりの
スキルの者を連れて来るのが礼儀で
あろう。
お前たちは
そして『
使い手だからまだ会うのを許可したのだ。
無能どもを優しく扱って欲しければ、
他国に来るべきではなかったな」
「貴様っ!!」
熊谷が構えるも、さすがに武装解除は
されており、さしもの『全武器特化』も
その武器が無ければどうにもならず、
「ふぅん……
じゃあ、シーライド王国もまた―――
召喚者に対し、非道な行いをしていると
見ていいのね?」
「勘違いはするな。
分相応の扱いをしているだけだ。
で?
していると見たらどうするというのだ?」
王の言葉に、白波瀬は自分のスキル、
魔法を行使しようと構えたところ、
「っ!?」
急に彼女が構えを解く。
「白波瀬さん!?」
青年が心配そうに、もう一方の代表に
視線を向けるが、
「ダメダメ……♪
あなた方のような強力なスキルの
持ち主を、そのまま王の前に通す
わけがないでしょうが」
側近の中にいた―――
糸のような細い目の、熊谷と同じくらいの
年齢の青年が、笑みを浮かべながら話す。
「そこにいるフィーズのスキルは、
『
この者のスキルにかかれば、誰も
攻撃は出来なくなるのだ。
武器でも魔法でも、な」
「攻撃系スキルでないのなら、これくらいの
スキルでありませんとねぇ……♪
自分のスキルは―――
敵意や戦意に対し発動する
ようでしてねえ。
そして誰しも、相手を攻撃しようと
する際は……
何らかの感情を抱くもの。
つまり、王の御前に出てきた時点で、
君たちは詰んでいたんですよぉ」
ニヤニヤしながらフィーズという青年は、
自身のスキルについて
「貴様らが余に対し無礼な態度を
取った事―――
攻撃する意を示した事は捨て置けぬ。
この2人を拘束せよ。
『全武器特化』に『全天候魔法』……
良いスキル持ちが手に入ったわ。
後でアスタイル王国へは、感謝の手紙を
書かなければな」
「ふざけるな!!」
「先に手を出しておいて、
よくもそんな……!」
王の言葉に2人は反発するが、
『一方的抑止』のためどうにも
動けない。
と、その時―――
謁見の間の扉が開かれ、
「2人とも無事!?」
「あれ?
まだ話し合いの途中でしたか?」
20代半ばの眼鏡の女性の後に、
12,3才くらいの少年が……
自分よりも大きな、兵士らしき男を
引きずりながら入って来た。