「おー、町みたいなところがありますね」
あの後、いくつかの検証を終えた俺は森を抜け、
ようやく人の住む場所らしきものが視界に
入ってきた。
一応、門番らしき兵士たちの姿はあったが、
「召喚者か?
それにしては、ずいぶんと若いが……」
「ここまでは馬車で送られて来るはず。
いったい何があった?」
2人の兵士に、馬車は森の前で停まり―――
森を突っ切って行けと命令された事を告げると、
「まったく。
手を抜き過ぎだろうが、連中」
「まぁとにかく入れ。
大人しくしていれば、それなりに
暮らせるよ」
同情か、哀れみか……
馬車の兵士たちよりはいくぶんか態度が
柔らかい。
「お世話になります」
俺は子供らしくペコリと頭を下げ、
町の中へと足を踏み入れた。
「えっ? 何で子供が……
あなた、まさか召喚者?」
しばらく中を歩いていると、セミロングの
髪をした眼鏡の女性が、俺に声をかけてきた。
「お姉ちゃんも、ですか?」
今の俺の姿は、小学校高学年~中学生くらいの
外見なので、不審がられないように話す。
「何でこんな子まで……
アスタイル王国は、子供まで召喚するように
なったの!?
取り敢えず、今日来たばかりよね?
いろいろ教えてあげるから、ついて
らっしゃい」
そう手を引かれ、俺は町のあちこちを
案内される事になった。
「そう……何のスキルも無かったの。
それは災難だったわね」
「どうもその時、気を失っていたらしくて、
馬車でここまで連れて来た兵士の人たちも、
『
多分そうなんでしょう」
とある定食屋みたいな場所で、俺は身の上話を
彼女としていた。
彼女の名前は
召喚されたものの、スキルは『
何でも体を軽くして、常人より
ジャンプし、ゆっくりと落ちて来るものらしい。
ただ当人に戦闘能力はほとんどなく、
性格的に戦いも不向きな事から……
微妙なスキルと判断され、
ここに送られて来たとの事だ。
「何かフワフワして素敵そうなスキルだなあ、
って思って取っちゃったのよ。
何でも王国では、魔物や怪物と戦う戦力を
求めていたらしくてね。
それなら最初から言ってよー、と思ったわ」
残念そうに笑う彼女を見て、俺は違和感を
覚える。
ここに来るまでの間、別段召喚者として
差別や不便は感じなかった。
今食べている物も、麺類や丼物といった料理が
普通に出て来ていて、
「あのう、ここはゴミ捨て場って兵士たちに
聞いたんですけど。
でも、あまり酷い扱いではなさそう
ですよね?」
俺がそう言うと、周囲はシン、と静まり返る。
「……一応、生活面は保障されているわ。
それに食事やお風呂、トイレといった文化も、
召喚者が広めているからそれほど元の世界と
大差は無いと言ってもいいかも。
でも―――」
と言った瞬間、
「おう、お前ら!!」
バカでかい声と共に、いかにもチンピラ893と
いった風体の、図体の大きな男が入って来た。