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こういう場面って、けっこうあるのですよ…。

 私の仕事は、町工場で金属を削って形を作る仕事をしている。

 このご時世は特に、理不尽なことを言うお客さんも多い。


「うーん、三上んさん、寸法がギリギリだから削り直して下さい。」


 そんなお客の品管担当者の言葉に、俺は眉をひそめた。


 お客の図面で寸法公差が+0.05 -0の図面寸法に対して、俺は+0.04mmを狙って納品をしたのだが、図面通りの寸法公差に出来上がっても、お客は気にくわないらしい。


 品物の受け入れなんて、組み立てなんかも考えずに、寸法だけ測ってやることも多いので、細かい現場のことなんて知らないなんてのが、特に大手企業になればザラである。


 難しいことを言うと、このケースだと工程能力指数CPKの問題も絡んでくるが、この部品に関してはそれは、ないだろうと俺は確信をしていた。


 俺は、担当者ではなく、現場の主任に声をかけて、この品物の確認を求める。

 この品物は、前にも同じ狙いで納品して問題なく使えていることを知っているから余計だ。


 案の定、現場の担当者がその部品を、組み立てると問題無く、その品物が使えたのだが、削り直しを指示した品管担当者と、そのことを聞きつけた設計もきて、現場主任と言い合いを始めている。


『やってらんねぇ』


 俺はそれを見て呆れた顔をして溜息をついた。


 こういうとき、一番の被害者は、立場が弱すぎる下請けのなのである。


 これで金が支払われるのか、そして、こういう理不尽なことで、品物を修正させられたり、再び顧客の納得いく寸法になるように無償で作り直されることもザラにあるのだ…。


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