「ねぇ、あなた?」
リビングにあるパソコンで、少し趣味でロクに読まれもしない小説を書いていると、大好きすぎる聡美に呼ばれた。
もう、結婚して18年になるが、どんなに年齢を重ねようと、俺と聡美は心が通じ合っているから、互いに愛し合っているのはズッと変わらない。
結婚して、すぐに子供ができて、今は高校生の男の子だが、今は遠くの高校に行って寮生活をしているから、家の中は俺と聡美の2人だけだ。
「聡美、どうした?。そんな深刻なそうな顔をして何があったのさ?」
俺が怪訝そうに聡美の顔を見ると、とても、言いにくそうに、俺に声をかけたのが、すぐに分かる。
「最近、不景気で仕事が暇だからって、腐っているのも嫌だからなんて理由で、あなたは小説を書き始めているでしょ?。チラッと見たけど恥ずかしすぎて、とても読めないのよ…。」
『そうか、あれを読んでしまったのか、それは小っ恥ずかしいだろうなぁ。』
そんなコトを思いつつも俺は、聡美に対して言葉を選びながら返した。
「まぁ、そんな調子だから、一部の人にしかウケないし、コンテストにも落ちるんだよね。でも、恥ずかしくて読めないからって、そんなに深刻そうな顔をしなくても…。」
「だって、深刻よ?。大好きなあなたの書いた小説が、よりによって、もの凄く恥ずかしくてマトモに読めないのよ。この先の内容を知りたいのに、これじゃ、もう恥ずかしすぎて、先に進まないの。」
「いや、無理に読まなくても。それよりも、もっと多くの人の優秀な作品があるから、それを読んでくれよ。だって、あれは、誰にも読まれなくてよい調子で書いているからね?」
聡美は、そんな俺の返事を聞いて、なんとも言えない表情を浮かべながら、俺が座っている椅子の隣に、自分の椅子を置いて座った。
そして、いま、俺が書いている原稿を見て、声に出して読み始めた。
『まっ、待ってくれ!!。それはマズい!!』
「俺は宿に戻ると、裕子と一緒にベッドの上に座った。そして、2人は幾度となく微笑みあって、クスッと笑うことが幾度となく繰り返された。しばらく微笑みあっていて、裕子が悪戯っぽく笑いながら、軽く俺の体を抱き寄せた…」
そこまで聡美が声を出して原稿を読むと、俺を軽く抱き寄せた。
「もぉ…♡、恥ずかしすぎるのよ。こんな文章を書いて、周りを悶えさせないで。悶えるのは私だけいいのよ!!」
俺は恥ずかしがって本音を吐いた聡美を、とても可愛く思っていた。
そのあと、2人がどうなったのかはご想像にお任せする。