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学園に到着~特別試験ってどゆこと?!~




「……予想より早く着いたなぁ」

 馬車を降り、目的地共同都市メーゼのルチェ・ソラーレ学院の門の前に立つ私の感想はそれだった。

「幻馬とそれ専用の馬車と道ですから。庶民なら、あと一週間程はかかっていますよ? 普通の貴族の方でも後三日ほどかかっていますよ?」

「……凄いな幻馬って……」

 私はそう言って幻馬を撫でる。

 足の部分が霞のようになっているその馬は私に撫でられると、私の手に頬をすり寄せた。

「ええ、稀少性と使役の難易度から扱えるものが限られていますけどね。それに普通の人が触ったら手がすり抜けてますから、触れないのですよ」

「成程、だから幻馬か」

 私はそう言って幻馬の胴体を撫でる。


 私が城から出て、一日で到着したのだ。

 勿論、休憩込みで。

 休憩抜きだったら一日未満でたどり着いた気もするが、それはお馬さんが可哀そうだし、御者の方々にも失礼なので休憩は大事だなと納得。


「有難う、疲れたでしょう?」

「いえ、ダンテ殿下の為ですから!!」

「御者として光栄です!!」

 御者の方たちはそう言って頭を下げる。

 頭を下げるのはこちらの方なのに。


 私は人の気配に門の方を再度見た。

「ようこそ、いらっしゃいました、インヴェルノ王国次期国王ダンテ殿下」

 品の良さそうな老年の男性が、立っていた。

「お初にお目にかかります、私はルチェ・ソラーレ学院の長をしている、ブルーノ・ソーレと申します。我が学院に入学を選んでいただき光栄です」

 男性――ブルーノ学長はそう言って頭を下げて丁寧な会釈をした。

 ゲームで何度か見た顔を思い出す。


――あーよく見た顔だ、懐かしい――


 と、思いながらもそんな事は顔には出さず私は頭を下げる。

「ブルーノ学長。こちらこそ、私の入学を許可していただき感謝いたします。未熟者ですが、どうかよろしくお願いいたします」

 そう言って頭を上げるとブルーノ学長は好々爺という雰囲気纏いながら私に近づいてくる。

 そして私を見上げて、じっと見つめる。

「ど、どうか致しましたか?」

「――いえいえ、何でもありません。では、フィレンツォ殿、ダンテ殿下の『特別試験』を実地してもよろしいですかな?」


――はい?――


 私は耳を疑った。

 そんな事聞いていないし、そんな「イベント」記憶にない。



『だろうな、ゲーム的に言えば「ダンテ」が特定条件を満たす――この場合ステータスが一定値を超えた場合起きるイベントだ。何、気負う必要はない』

――そう言うの何で先に言ってくれないの?!――

『お前がヘマしないという信頼からだよ』


 ああいえばこういう神様に、私は白い目を向けたくなった。



「はい、勿論です」

 フィレンツォはそう言ってから「戻ってきた」私にそっと耳打ちした。

「申し訳ございません、この試験は到着するまで本人には秘密にする決まりなので……」

「あーうん、分かった」

 フィレンツォが何故内緒にしていたのかを理解し、私はもうなんでも来いと半ば自棄になった。





「……これは」

 案内された部屋に用意されていたのは、三つのテーブルがあり、テーブルの上に物が置かれていた。


 左端は金属製の棒らしき物体。

 真ん中は透明な水晶玉。

 右端は白い紙。


 真ん中の水晶玉は見覚えがある、幼い頃に私がヒビだらけにしたアレと同じだ。

「ダンテ殿下、力を普段は制御なさっているそうですが、抑えつけずに出してください。何壊れても予備はありますし、殿下が最後なので次の方の事を考えなくとも大丈夫です」

 壊す前提で言われると何か傷つくが、事実なので反論できず。


 とりあえず左のテーブルの前に立つ。


「これは握ればいいのですか?」

「ええその通りです」

 私はそう言われてふぅと息を吐いて、棒を握った。


 棒がビキビキと形を変形させていく。

 白銀の刃に、冬、春、夏、秋――それぞれを象徴する色の宝石が埋め込まれた剣へと変貌した。

「――」

 本で見たことがある。

 主神アンノが天地創造を行う時に振りかざした剣――創造の剣クレアツィオーネ

 本に乗っていたその剣とよく似ていた。


 だが、やがてヒビが入り、砂状になってしまった。

「あの……これ、本当に続けても良いのですか?」

「はい、続けてくださいませ。休憩が必要ならば休憩しても構いません」

 ブルーノは笑みを浮かべてそう答えた。

 なので少しだけ休憩してから、次のテーブルへと向かう。


 水晶玉が目の前にある。

 あの日以来、触っていないが、今回どんな事態が起きるのか良く分からない。

 というか先ほどの意味が分からないのもある。

 これはどうすればいいのか分かっているのだが、念のため確認をする。

「これは手を近づければいいんですよね?」

「はい、その通りですよ」

 私は昔やったように手を近づけた。

 そして魔力を注ぐ。


 水晶玉は虹色の光を放ち。

 そして、各王国の王にのみ現れる紋様が次々と出現したと思ったら黒く集束し――そして強烈な光出して……砂状になった。


――……悪化してね?――


 何かますます不安になってきた。

 けれども二人は何も言わず、ブルーノ学長はニコニコしている。

 フィレンツォはなんというか、引きつっているように見える。


 とりあえず、私は最後の白い紙に手を伸ばす。

 その瞬間一瞬で、白い表紙の本へと変化した……凄い分厚い。

 それから表紙の色が代わり白から黒、赤、青、緑……等様々な分厚い本へと変化して、こちらは最終的に燃え尽きてしまった。


 私自身は何がどうなってるのかさっぱり分からず。

 水晶玉の方は何と言うか、幼少時魔力系等を計測した時に、ヒビだらけになったのよりもさらにヤバい……というか能力が上がっている気がするが他は何を調べているのかさっぱりわからず疑問符が頭に大量発生。

 そもそも、計測系統の事はあまりしなかったような気がしないでもなくないし、もしかしたらこっそり教育係の人達が見定めてたのかもしれないのでそのあたり私には全く分からない。



 そもそもこの「特別試験」どういう意味合いをなのかすら私にはわからない。



「その、すみません。全部壊してしまったようで……」

 どう見ても壊れたというか二度と使用できない状態になったので私がそう言うと、ブルーノ学長が拍手をした。

「すばらしい! 私が学長になってダンテ殿下の様な方は初めて見ました!!」

「は、はぁ……」

 煽っている言い方でもないし、馬鹿にしているいい方でもない。

 凄い興奮しているように見える。


――一体何に興奮しているんだろう⁇――


 と、色々考えてちょっと先ほどの三つの物体について思い出す。

 似たものを見たのは水晶玉のものだが、他のは初めて。

 だが、そう言った類のものは本に記載されているはず。



――相手の力を調べる物……あ、あれかな?――

『思い出したのか? ならば応えてみよ』

――最初の金属製の棒、アレは握った物の力量を測る物、名称は確か……ポテスタース――

『正解だ』

――次の水晶玉、アレは魔力を注いだ者の魔力の質や量等を測る物、名称はマギカ――

『それも正解だ』

――最後の紙、アレは触れた者の知識量等を測る物、名称は確か……サピエンティア――

『うむ、どれも正解だ』

――何故それが特別試験なんだろう――

『まぁ、今は気にするな』


 神様からの相変わらずの言葉に私は心の中で脱力する。





「学院設立以降このような状態を起こしたのは――」


「術王と呼ばれた、サロモネ・インヴェルノ陛下以外おりませんでした!!」


 ブルーノ学長の言葉に、明らかに驚愕の表情になるフィレンツォを見て驚いた。

 このような表情をするのはかなり稀だからだ。

 のろけ話をする以外は現在のフィレンツォは鉄面皮というか真面目な表情が基本だ。



『さぁ、これで――』


『お前に「全員」が興味を持つ、故に取りこぼすなよダンテ。忠告も助言もするが、それでも気を付けろ』



 神様の言葉、その意味を私は近いうちに身をもって理解する事になる。







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