エドガルド殿下の精神が良くなり、ダンテ様の無茶癖が少しマシになって二年近くが経過し、もうすぐ留学という時期に私は御后様に呼ばれました。
「御后様、一体なんでしょうか?」
従者や執事もおかず、私だけを呼び出すとは相当重要なことなのでしょう。
「エドガルドに『比翼副王』の証が出たわ」
「え?!?!」
そのお言葉に私は耳を疑います。
「ご確認、なされたのですか?!」
「あら、フィレンツォ。私を誰だと思ってるの?」
「あ……はい、そうでございました」
ジェラルド陛下を尻に敷き、正常な状態の息子の事を理解しているからこそ、色々と予測できる御方だったと御后様のことを思います。
「執事の件はもっと早く気付けばよかったわ」
「それは仕方ないことでございます」
「……そうかしら、でも、エドガルドの愛にダンテが答えたのは間違いないわ」
「左様でございますか……ですが――」
「ええ、そうなると問題はあの子の伴侶。あの子の性格上自分から絶対極端なアプローチはしないは、アプローチに見えてただの善意でやるから質が悪いのよダンテは。好きでもない相手にはやらないからいいのだけれども」
「おっしゃる通りでございます」
御后様の言う通りだ。
ダンテ様はそういう悪癖を持っている。
一部に対してだけ天然たらしだから質が悪い。
「あと、あの子の事だから、多分伴侶は複数じゃないかしら?」
「はい?」
御后様のお言葉に耳を疑う。
「ほら、あの子を抑えつけるの、最終的にはフィレンツォだけじゃダメでしょうし、エドガルドは潔癖の所があるわ。あの子には癒しをくれる子、汚れ役を共にやってくれる子、友のように話せる子、明るく陽射しの様な子が必要だと思うわ」
「あの……それ下手すれば四人伴侶が……?」
「さぁ、どうかしら? ともかく、複数だと思うの。だってそれ位じゃないとあの子の無理する癖最終的に治らないでしょう?」
御后様の言葉は最もだった。
ダンテ様の無理、無茶する性質は私だけでは治せていないし、エドガルド殿下だけでも治せていない。
これはもう相当大変なことになると。
「でも、あの子から好きになった子へ絶対言うことはないわ。エドガルドの件は別件だから答えたけど、他は違うもの」
「……と、言いますと?」
「――ダンテが言わなかったら、貴方がお相手に事情を説明して、ダンテを捕まえるよう言ってちょうだい。後比翼副王の件は内緒ね」
「畏まりました、フィレンツォ・カランコエ。御后様より頂きました命、確実に実行いたします」
ダンテ様は間違いなく、御后様の言う通りになる。
だから私がその時は動こう、そう決めました。