「ふぎゃあふぎゃあ?!」
――ってここからかおい!!――
私は知らぬ人物に囲まれていた。
顔が良く見えない、だが感覚と自分の発した音で分かる。
まさしく、私は「ダンテ」は、生を受けたのだ。
『言っただろう、私は甘くないと』
――本当甘くねぇな!!――
大抵成り代わりとか転生ものだと、幼少時とかに前世の記憶を思い出すとかなのだが……まさか生まれた時からこうだとは思わなんだ!!
『胎児からでも良かったんだぞ?』
――我儘言って申し訳ございませんでした――
『分かればいい』
――しかし、これだと周囲が何言ってるのか全然理解できないし、見えないなぁ……このハードモードからいつ脱却できることやら……――
『ふむ、それもそうだな、では少し位は』
神様がそういうと、ぼやけてた視界がはっきりとしたものへと変化した。
音もよく聞き取れる。
「――陛下!! 男の子がお生まれになりました!! 祝福を受けておられます!!」
「おお!! 本当か!!」
白い服を着ている女性が、王様を呼んだっぽい。
つまり、
現国王。
褐色の肌、黄金の目、シルバーアッシュの髪のあの男性。
インヴェルノ王国、国王ジェラルド・インヴェルノ。
「おお、なんと可愛らしい子だ!! エドガルドの時を思い出す!! アデーレ、此度も其方の重荷を肩代わりできずすまぬ」
「いいえ、陛下。出産を終えるまでは部屋に入るのを許されるのは医療者以外は入室を許可された同性だけ、それは仕方ありませんもの」
――え、そうなの?――
流石に其処迄は知らなかった。
「ああ、何て可愛い……陛下そっくりの目と肌……」
「エドガルドは其方と同じ肌と目だったな。可愛らしいのだが……これから少し不安なのだ」
王様は御后様に私をそっと渡した。
母親の腕の中で私はきょとんとするしかない。
「大丈夫です、陛下。陛下はエドガルドが後継者でなくともあの子を愛しているでしょう? 私も、愛していますあの子の事を。ですから、あの子ともちゃんと向き合いましょう、私がお支え致します」
「……すまないな、アデーレ」
王様と御后様――否、母と父の会話と、ゲームでの経験上理解できている。
兄は、エドガルドは、祝福されている
父と母がどれほど、向き合おうとも、それはおそらく変わらないだろう。
エドガルドは長子でありながら、祝福を受けることがなかった。
そして年の離れた弟である私は祝福を授かって生まれた。
優秀であろうと、国のしきたりで、私は次期国王になる。
兄であるエドガルドは決してなることはできない。
故に、嫉妬を向ける。
ただ、愛憎を向けていると公式で書いているのだが、理由が今だに分からない。
そこはこれから知っていけばいいのだろう。
それよりも。
――赤ちゃんからのスタートマジしんどみ――
『補助もするし、手助けするから頑張れ』
――頑張ります……――
こうして、私の異世界転生は幕を開けたのだ。
最初は羞恥心とか若干あったが、すぐ捨てた。
今の私は本当の赤ん坊だ。
何も一人じゃできない。
はいはいだってそんなにできないし、喋れないからお腹がすいたりしたら泣くしかない。
けぷっとおっぱいをもらってげっぷをさせてもらって、お母さんの腕の中で大人しくしている。
「お腹いっぱい?」
「だうー」
「ふふ、良い子ね、ダンテ」
しっかし、赤ん坊のころから前世の記憶どころか色々保有してて面倒ではある。
急に前世の記憶蘇るとかよりもまぁいいのかなーと納得しながら過ごすことにした。
赤ん坊の私の傍には常に誰かがいる。
一人きりの時間というのはない。
必ず、私の泣く声を聞いてはすぐさま近寄りあやしたり、色々と対応してくれる。
その中で気づいた事がある。
お世話係のメイドさん達の容姿は共通して、色白で髪もホワイトとかシルバー系統の色をしている。
目の色に関しては異なる色をしているけれども。
そしてお父さん傍にいる男性達、お父さんの所に来る男性達も、同じだった。
――この国の人達って、基本色白で髪も白系とか銀色系統なのかな?――
色々と想像はするけど、確証は持てない。
何せ城にいる人達は位の高い人ばかりだし、自分のお世話をしてくれる方だってそうだろう。
とりあえず、自分で色々と見聞きできるようになれば分かるか、と大人しく赤ん坊時代を過ごすことを決めた。
「だーうー……」
赤ん坊用の玩具を手にして適当に暇をつぶす。
「ダンテ様は本当に、お可愛らしいですわ」
「ええ」
メイドさん達に褒められて悪い気はしない。
嘘を言ってないのは分かるし。
と、のんきにしていたら、ぞわっと背筋が凍り付く様な視線を感じた。
色んな感情が混ざり合った視線。
――あ、無理――
いくら大人の知識、前世の記憶、人格は美鶴という私であっても、体とかはダンテという赤ん坊。
そちらに引きずられてしまう。
とてもじゃないが、無視したり、我慢するのはできない。
「ふぎゃああああああ!!」
あーあ、泣いてしまった。
「ああ、ああどうなさいました?」
メイドさんが抱っこをして私をあやしはじめる。
「――エドガルド殿下? どうなさい……殿下?!」
乱暴に扉が閉まる音が聞こえた。
「どうしたのですか?」
「……エドガルド殿下が、ダンテ様を睨んでおられたのです」
――あ゛ーなるほど、視線を向けたのはダンテ、基今の私の兄のエドガルドか――
あやしてくれたのとか色々あって若干落ち着きを取り戻す。
――そうだった、確か最初の難関がエドガルドなんだよね……――
『確か、ゲームではそこまでにダンテの成長パートがあって規定値を達してないと強姦されるのだったか?』
――そうそう、それが地味に大変なのよ……私一度も防げてないんだ……――
美鶴だった時、ゲームで一度もそのイベントを回避できなかった苦い思い出。
『まぁ、安心せよ』
――何が?――
『ダンテの成長パートが始まる基、ゲームで直接操作する前からお前は行動できるのだ、その上、お前には私がいる』
――ほむほむ――
『さぁ、お前が望む結末への一歩だ、間違えるなよ?』
真面目で、甘くはないけれども、心強い神様の応援、サポート。
果たして私は第一の難関を突破できるのだろうか?