「「あ!」」
顔を見合わせて思い出した。
私の名前はルビア・フォンデッティン。フォンデッティン伯爵家の娘だ。
そして前世は
高校生だった。
同じく記憶を取り戻しているであろう彼女はレディア・バートリー。
バートリー伯爵家の娘だ。
そして前世は友達の
「舞?」
「葵?」
二人きりになって確かめ合う。
やっぱり葵だった。
「まさかオトソナの世界に生まれ変わるなんてねー」
「そして私はヒロイン、つまりハーレムも夢じゃない!」
「あははー頑張ってねー」
「だから貴方は邪魔しないでね!」
「Oh……」
「待ってて、クラウスー♡ ビルドー♡」
と、攻略キャラの名前を叫んでどこかへと行ってしまった葵基レディア。
友情はこんなにも儚く終わってしまうのかと悲しくて少し泣いた。
なら、私も好きにしてやろう。
私の推し、アドリア・ローランサンはダンピール故に、人から距離を置くキャラだ。
なんとしても関わって結婚まで持ち込みたい!
彼の居る図書館に何となく足を運ぶ。
けれども彼とは接触しない、取りあえずこのオトソナ基「乙女為のソナタ」で彼にはあまり関わらない方がいいのだ。
理由がちょっと分からないが、彼と関わると他のキャラの恋愛値が軒並み下がる。
なので、レディアは関わらないだろう。
「えっと、明日の教科はこの本だよね」
と手を伸ばすが、届かない。
椅子を探すがない。
ため息をつくと──
「これか? 勉強熱心だな」
「あ、有り難うございます!」
お礼を言って本を受け取る。
机に座り、本に目を通し、頭を回転させる。
「えっと明日の錬金術は……」
「ポーションを作るのだろう」
「は、はい」
「それなら基礎だが127頁だ」
「有り難うございます」
「いや、礼はいらん」
こうして、私とアドリアさんの交流は始まった。
本を探し、それを取って貰い、そしてアドバイスを貰う。
ただそれだけだが、私は満ち足りていた。
そして最初の頃は見かけたレディアの姿が見えなくなったのも気にならなくなった。
が、ある日──
「君はレディアという生徒と知り合いだったそうだな」
「はい、一方的に縁切りされましたけど」
「そうか」
という謎の会話が発生したが、私は特に気にしなかった。
そうして三年間毎日のように放課後会話をして、卒業パーティの日になった。
やりきることはやれたか分からないが、悔いはない。
そう思いながら食事をしているとアドリアさんが近寄ってきた。
私は思わず皿を置く。
「ルビア」
「は、はい」
「どうか私と踊って欲しい」
「‼」
それは婚約の申し出の証。
「はい……!」
私はにこりと笑ってアドリアさんの手を取ると、彼も微笑んでくれた。
ダンスフロアは私達の独壇場。
私とアドリアさんがメインになっていた。
皆が見とれ、羨ましそうにする。
そしてレディアの攻略キャラの方々は拍手を送ってくれている。
ダンスが終わり、アドリアさんに友人として攻略キャラの方々を紹介される。
私は丁寧に挨拶をする。
「いやぁ、レディア嬢の元友人だから心配してたんだけど、縁切りをされてたなら大丈夫だったみたいだな」
「あ、あのーレディアは何があったのですか? 一年の頃は授業で見かけましたが二年以降は授業でも見かけなくなったので……」
「あー……」
クラウス殿下は頬をかいて苦笑した。
「不特定多数の男性へのつきまとい行為が学校で問題になって私への被害も深刻だから修道院に入れられたよ、孤島の修道院だから死ぬまで出られないね」
私は顔を引きつらせる。
「……馬鹿な事をしたようで、元友人ですが謝罪します。ご迷惑をおかけしました」
「ははは、君が謝る必要はないよ。それよりアドリアと仲良くね」
「はい……!」
「僕らの友人と仲良くね!」
これで理解した、攻略キャラの恋愛値は下がるが好感度は上がる理由。
攻略キャラ達の友人なのだ、アドリアさんは。
まぁ、そんな事今の私にはどうでもいいかな。
「フィミ、レオナ。あまり遠くに行っちゃ駄目よ」
五年後、私は双子を産んだ。
アドリアと私に似ている可愛い双子を。
「フィミ、レオナ、おいで」
「はい、パパ!」
「うん、ママ!」
二人は私達に近づいて抱きついた。
アドリアとの結婚式、レディアの両親が突撃してきて、何故娘は修道院行きなのにお前はとか言われたが、縁切りをしてきたのはレディアであることを裁判で証明して、また王族が並んだ結婚式に乱入したことでレディアの両親は多額の借金と賠償金を背負う事になった。
レディアが、縁を切らず、一途だったならまた話は違っただろう。
ハーレムを目論んで、友人であった私と縁を切ったのは彼女だ、責任は彼女にある。
まぁ、一途の勝利ってことですよ!