クエルクス・ワールドにも登場する紺碧の武者こと
その代わり個性的で強力な刀スキルを複数持っている。しかもこの刀スキル攻撃が厄介で俊敏と関係ない原理の速度で襲ってくるのだ。
おそらく今構えているのが、刀の届く範囲に入った敵を即自動反撃するスキル、【八卦陽陰】。
射程範囲に日輪のような輪が浮かびその内側を光が照らしているので危険地帯が分かりやすい。
反撃はすべて【カウンター】扱いになっていて、もし斬撃を受ければ通常の二倍ダメージを貰うことになり、今のレベルで下手に飛び込めば即死することになるんだが…
もちろん俺はこのまま飛び込む!
「【カウンター】」
走り込みながら、こちらも回避直後の攻撃が2倍になるカウンタースキルをかける。
俺が射程距離に飛び込むと同時に
「【八卦陽陰】」
抜刀からヒットまでわずか0.1秒という超高速で居合の斬撃が襲っくる。
俺はスローモーションでその斬撃を見極め、ギリギリで回避すると、そのまま
しかし鎧の硬い
「ほう、八卦陽陰を初見で避けた上、反撃まで繋げるとは天晴れな奴」
鎧のせいで目線は分らないんだけどたぶん見てる。
俺は(ゲームだけど)一度見た技や、来ると分かってる技なら魔法やブレスの範囲系攻撃でない限り絶対に回避する自信がある。
「そんな程度の技じゃ、俺には届かないぜ」
「言いおるわ、お主のような相手は120年振りだ」
俺は偉そうに言ったものの、実は
だがそれはゲームでの話だ!リアルなら突破できるはず。
とその時——
目の前に突然、美月の姿が現れ
——【
美月の見えない攻撃が決まった。
見ると
しかしこのままだと、露見した美月が
「美月!よくあの鎧を貫通できたな」
「私の見えない攻撃は、装備の防御力を無視するの」
なるほどね、あの技を受けるときは、生身の防御力だけってことか。
俺のワールドブレイクほどではないが、
「でも安心しないで、私のは、見られる度に意識されやすくなるから」
なるほど、初見必殺の暗殺スキルってわけね。
あともう一回くらい決めてもらえると助かるんだが。
「拙者の八卦陽陰は消せぬ人影を捉える技、おなごよ…ぬしの技は影をつくりし光そのものも消すようだな」
ほうほう、それぞれの技はそいういう原理なのか、だからといってどうやってるのか分からんが。
しかしさすがは紺碧の武者、
「色々解説しちゃって大丈夫か?
と俺は
「ふん、分かっていても如何にもならないのが、真の技というもの」
そう言うと
「美月!やばいのが来るぞ」
そう叫んだが、彼女の気配はもう既に意識出来ない。
いやー、攻防一体とは便利なスキルだね。
自分の心配をするかということで、俺は攻撃に備える。
すると
【戦乗龐衰斬】
無数の円月型の斬撃を四方八方に繰り出してきた。
斬波にさほどスピードは無いが、とにかく数が多く、そこら中の地面が切り付けられている。雨あられとはこのことだ。
俺が全ての斬撃を【時を統べる者】のスローモーションで回避しつつ、
【雲龍不知火】
(やばい!読まれてる)
俺は、即座に反応し、その斬撃の射程外へ回避行動をとった。
しかし
奴は斬撃が地面に当たると同時に、まだ空中にある両足を輝かせ、そのままの勢いで両膝で地表へ強烈な膝蹴り入をれる。
【四股踏地壊】
その瞬間、一太刀目の斬撃の衝撃と足技の衝撃が重なり、めくり上がった周囲の岩盤が、鋭利な石槍となり無数にせり上がってきた。
空中からは斬波の雨あられ、落下地点への強烈な斬撃、広範囲の地面から無数の石槍。
スローモーションで大半の攻撃はなんとか回避できたが、さすがに全てを避けることが出来ず、HPが半分以下になるダメージを受けた。
「めちゃくちゃしやがる!でもすげえ」
「う…」
すぐ近くで美月の声が聞こえた、どうやら美月もダメージをうけたらしく、残りHPが俺より少ない。
そうか、意識されないといっても、本当に消えているわけじゃない、俺と同様に広範囲攻撃をされると厳しいってことか。
「大丈夫か!美月」
「ちょっと厳しい、地面がこうだと技が」
そうか、
ってことはあいつ、まだ俺の方を舐めてるわけだな、好都合だ。
今のは三つのスキルを合わせたコンボ技・・・CTからいって再び使うにはまだ時間がかかるはず、ていうかもう一度使われたら俺らは全滅だ。
今やつが出せるのは八卦陽陰と、俺が攻略出来なかった最強奥義ってところだがどうする。一か八か、やってみるか。
俺は狂気の腕輪を装備しスキルを発動する。
【ラストリゾート】
攻撃力が3倍になる代償にHPが残り1になる玉砕技だ。
「ほう、ここで玉砕を選ぶとは、大した覚悟だ」
「決着といこうぜ、おまえの最強奥義を出せよ」
すると、
(よしくるぞ)
「その見上げた心意気に我が奥義で応えてやろう....」
「奥義 【八卦八相八閃】」
この奥義は相手が八卦陽陰の射程圏に入ると同時に、八方向から八連続の斬撃を0.1秒以内で発動するというチート級の大技だ。
俺は以前ゲームでは、その斬撃の一部を回避する事が出来なかった。その時は奴にそれ以上近づくことが出来きず、途中で撤退するしかなかったのだ。
「拓海、大丈夫なの?あのゲームでも、誰も攻略したことがない技だよ」
そうこれのせいで、このクエストは無理ゲー、運営のバグと言われてたくらいだ。
「大丈夫だ、ゲームでは避けられなかったが、今回はやれる!」
「わかった、信じる」
「よし、【カウンター】」
俺は【カウンター】スキルを起動させ棍棒を握り締める。
身体中のアドレナリンが湧き上がるようなこの感覚、やはり俺は困難なほどに集中力が高まるんだなあああ!
「いくぞ!
俺が射程に入った瞬間、
八つの方向からの斬撃、俺の集中は最高潮に高まり、いつも以上に世界の時間が伸縮する——
一撃目を回避、二撃目を回避、三、四、五、六、そして七撃目(ゲームではここで食らったが)、これも回避、時間が止まったと錯覚するこの感覚、そして最後の八撃目も回避!
「【ファストアタック】」
【ラストリゾート】で3倍、さらに【カウンター】で2倍となった合計6倍攻撃力に【ワールドブレイク】が確定、防御貫通攻撃がヒットする。さらに二連撃目の追い討ちも決まり、
「よっしゃーーーー!!最高だ!」
胡座をかくように崩れ動かなくなった
「すごい…本当に倒した」
「なんで…ゲームでは倒せなかったんでしょ?」
「それはだな、フレームレートってやつだ」
「フレームレート?」
「ああ、クエルクス・ワールドは、ゲームクオリティを維持するためにフレームレートを1秒間60フレームに固定されてるんだ」
「それとこれと、どんな関係があるの?」
「
「うん、たしかに、それで?」
「あーだからさ、0.1秒の間で認識出来るのは6撃目までで、それ以上はフレーム不足になって表示されないから流石の俺でも見えないものは避けられないわけよ」
「なるほど…リアルな世界にはフレームレートが無い」
「そう、今回はすべての斬撃が最後まで見えた。だから回避出来たってことだ」
「拓海…やっぱりヘンタイ」
「そう褒めるなって」
そんなやりとりをしていると突然、
「拓海…復活する!」
「まじかよ…それは反則だろぉ!」
すると、
まさか…こいつ不死身なのか?俺達は絶望感に包まれた。