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第55話:それぞれの道、エンディングは順調に!(後編)

 場所は長野県軽井沢。

 四季折々に変わる自然、悠久なる時の流れ、その美しさは訪れる者を魅了する。


「社運を賭けた大勝負だ」


 蓮也は古い洋館の前に立っていた。

 屋根は檳榔子黒びんろうじぐろ、壁は月白色で構成されていた。

 背後に広がる原生林の中から、微かな風の音や小鳥のさえずりが聞こえる。

 それは怪しくも幻想的、例えるなら江戸川乱歩の世界観がよく似合う。


「緊張はするが――男は常に立ち向かわんとな」


 蓮也は扉の前まで来た。

 鍵がかけられていない扉をゆっくりと開ける。


「飛鳥馬家の別荘にようこそ」


 老人が立っていた。

 大島紬の和服姿だ。


「会長が直々にお出迎えですか」

「大事な交渉だからな」


 老人は飛鳥馬不二男、IBO会長であった。


☆★☆


 蓮也は洋館の客間の赤いソファーに座っていた。

 目の前には、大事な交渉、商談相手がいた。


「小夜子は元気かい」

「え、ええ……」


 アスマエレクトニックのCEO、飛鳥馬実である。


「あいつが辞めちゃって大変だよ。恋は人を盲目にするね」


 実は黄色い折り紙で器用に何かを作っている。


「これからは二人で仲良くね」


 トンと出来上がった折り紙をテーブルに置いた。

 その形からキリンであることがわかる。


「お互い、首を長くして待ってたろ」

「は、はァ……」

「気のない返事だね」


 実は天井を見上げながら言った。


「全部、君達の仕込みだとは思わなかったよ」

「……すみません」


 紫雲電機のBU-ROADバトルの参戦、黄龍祭の開催等々。

 これまでのことは『ある人物』が蓮也や不二男を説得し、裏から動かしていた。

 全てはBU-ROADを軍事転用させないためだ。


「CEO……その件ですが」

「やめるよ。君達との勝負にも負けたしね」


 大会終了後、BU-ROADの特許権は既にIBOが管理することになっている。

 後日、不二男が正式に発表し、軍事転用の反対を表明する予定である。


「それに君のアイデアの方が面白い」


 蓮也は実に資料を渡していた。

 資料には小型のヒト型メカが描かれている。

 その名はMediBot。BU-ROADの技術を応用した遠隔操作型の医療用マシンだ。

 手術や診断、介護支援など医療現場での様々なタスクに活用出来ることが説明されている。


「ベンチャー企業だけでやるのは厳しいだろ。全面的に我が社が協力するよ」

「あ、ありがとうございます!」


 蓮也が実に深々と頭を下げると、不二男が入ってきた。


「交渉は終わったようだな」

「か、会長」

「父さん、これも想定通り?」

「俺は龍博士の頼みを聞いて、動いただけだぜ」

「ウソウソ、父さんは勝負事が好きなだけでしょう」

「へへっ!」

「ホント……お二人とも、まどろっこしいのがお好きで」


 不二男の後ろには男がいた。

 不気味なフランケンシュタインのマスクを被っている。

 まごうことなき龍博士であった。


、いい加減そのマスク外しなよ」


 実がそう述べると、


「少し――」


 龍博士はマスクを脱いだ。


「遊びが過ぎたかな」


 龍博士の正体は――飛鳥馬将であった。

 将はツカツカと歩き、蓮也の肩にポンと手を置いた。


「小夜子のことを頼んだよ」

「は、はい!」


☆★☆


「戻るのか」

「ダパーラに緑の大地を作るのが、不屈さんとの約束だからね」

「大丈夫かよ?」

「職員さん達もいるし、新しい仲間が増えたしね」

「ゼダって人か。何でも社長を殴り倒して辞めたとか」

「罪滅ぼしだって」

「罪滅ぼし?」

「深くは聞かないよ。ともかく、あの人の能力は水脈探しに役立つから大歓迎さ」


 颯とルミは紫雲電機の開発室にいた。

 二人はボロボロになった烈風猛竜ルドラプターを見ていた。


「ルミちゃんは?」

「御影製作所に行こうと思ってる」

「灰野さんか」

「ああ、あんたと最初に戦ったのはあたしだってね」


 颯は尋ねた。


「黒澤さんとの婚約はどうなったの」

「あちらから婚約破棄を伝えに来たよ」

「よく暦さんが許したね」

「あの人も丸くなったのさ」


 ルミは烈風猛竜ルドラプターに手を置いた。


「お前のお陰で、ファイターとして蘇れた」


 同じく、颯も烈風猛竜ルドラプターに手を置いた。


「君のお陰で、俺は夢を持てた」


 二人はお互いの拳を合わせる。


「目的も済んだし、烈風猛竜こいつともお別れだ」

「俺達の闘いは終わった。お互いの未来へと進もう」

「それぞれの道――」

「エンディングは順調に!」


≪了≫

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