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第7話

 占いの館の案内係の女学生と会ってから数日――。

 俺はいつもどおりに会社に出掛け、彼女は転校した小学校に通い出した。ここまでは極普通のものだ。

 しかし、俺の生活には大きな変化がある。それは一人で暮らすよりも楽になっているということだ。もちろん、理由は彼女にある。

 実年齢九歳の少女でも、中身は大人の女性。しかも、元主婦。学校から帰ってくるのが早い彼女は、帰宅すると掃除に洗濯、家事全般をこなしてくれている。それは非常にありがたいことなのだが、最低限、自分でやることを自分でやらないと、些か落ち着かない。

 そのことを彼女に話したところ――

「私の娘が生活するのだから、衛生や食事には気を遣いたいの。口出ししないで」

 ――と、追い払われてしまった。

 俺の食事についても、栄養価の偏ったものを娘の前で食べられては教育に良くないから『私の作ったものを食べなさい』という理由で料理が用意されている。また、俺が酒も煙草もしない人間なので、彼女はここに寄生して居るとも言っていた。彼女が親戚の家に長居できなかったのは酒と煙草も原因のようだ。

 まあ、悪いことをしているわけではないので、俺は素直に従うことにした。その一方で、世のお父さん達は、こうやって女房の尻に敷かれていくのか……とも思わなくもない。

 そして、本日、仕事から帰ると、彼女から『占いの館の女学生からメールが届いた』と報告があったのである。

「何て書いてあったんだ?」

 先にノートパソコンでメールを確認していた彼女は、リビングのソファーに座りながら説明する。

「彼女らしいやり方で調べてくれたみたい。インターネットの掲示板で情報を集めて、直感による嘘か本当かの書き込みの選択をして、統計を取ってくれたんですって。そして、実際に情報源のサイトを調べて候補を挙げてくれたらしいわ」

「手間かけさせちゃったかな?」

「いいえ、これも占い師になるためにはいい練習になったって。この分野は偽者が多いから、本物を見分ける勉強になったそうよ」

「なら、良かった」

 俺が対面のソファーに座ると、彼女は俺に目を向ける。

「場所は東北。見料五千円と霊媒師としては安い方ね」

 俺は腕を組んで、首を捻る。

「どれぐらい信用できるんだろう?」

「分からないわ。だけど、実績もあるし、彼女の話では自分の失敗をサイトに載せているのが信用できる決め手になったって」

「どういうこと?」

「つまり、自分の力量の限界をちゃんと載せているってことよ。だから、症状の度合いによっては霊を祓えると明言できている。逆に、こんな症状が出た時は手に負えないとも載せているの」

 なるほど。金儲けを優先するだけの偽者なら、自分の功績だけを書き連ねるはずだ。占いの館の女学生が報告してくれた通り、自分の力量を公開しているのは信頼できる判断材料の一つかもしれない。

「それで、君の症状については?」

「私の見立てでは改善できると思っているわ」

「じゃあ、また週末に……だな」

「ええ」

 こうして、俺と彼女は再び霊媒師を求めることになった。ただし、今回は東北ということで、関東に住む俺達にとっては、かなりの距離である。念のため会社には休暇を二日貰い、彼女の通う学校には、手続きのため、彼女の親戚の家に二日ほど戻るという嘘の連絡を入れることにした。

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