保健室の扉が開いた先に立っていたのは
「母さん...」
俺の母親の松岡真奈だった
「瑞樹大丈夫?先生から頭を打って倒れたって電話があったから」
「うん。さっき起きたところだけど大丈夫そう」
「そう。よかった。」
「心配かけてごめん」
「いいのよ。ってそちらは」
「わ、わ、私は瑞樹くんの彼女の嶋野愛と申します」
「瑞樹の彼女?」
「は、は、はい。瑞樹くんと健全な交際をさせていただいております」
こんな緊張している愛をみるのは初めてで、面白いし可愛いと思えてきた
「あらそうなの。瑞樹にこんな可愛い彼女がいたなんて。母さん初耳なんですが」
「いうタイミングがなくて」
本当は家に何回も連れていて真紀もしっているぐらいだ。
母さんは基本的に仕事で日中はいないからそのうち紹介すればいいかなぐらいで思っていて彼女ができたことをいっていなかった
「まぁいいけど。愛ちゃんこれからよろしくね」
「はい。お母さま」
「真奈でいいわよ」
「はい!真奈さん。よろしくお願いします」
いきなり息子の彼女に名前呼びさせる母親ってどうなのかっていいたくなるが
愛も母さんも楽しそうだからいいか
「瑞樹に彼女ができていたことにも相当驚いたけど、学校の先生から電話があったときに球技大会のサッカーで頭を打ったときいたときも同じぐらい驚いたわよ。瑞樹がまだサッカーをしてくれているなんて」
「どうゆうこと?」
「私はあなたの母親よ。あなたがサッカーを辞めた理由もなんとなくは理解しているし、本当はまだあきらめがついていないことも理解しているつもりよ」
母さんにはすべてお見通だった
「それに瑞樹は覚えていないかもだけど、瑞樹は「お母さん、僕は将来プロサッカー選手になってみんなのヒーローになるんだ」っていっていたときの顔は今も忘れない。私はなれるなれないは関係なくあんな顔しているあなたのことが大好きで誇らしかったのよ」
「でも、あなたが中学の最後にサッカーを辞めるといったときの顔は辛そうで辛そうで、その顔をみているのが私も辛かった」
「ごめん」
「だから瑞樹がまたサッカーをしていたことは嬉しかったし、今の瑞樹の目は辛そうな目じゃなくて夢と希望にあふれていたあの時の目に似ているわ。だからそれが嬉しいかな」
「母さん...」
「愛ちゃんごめんね。急にしんみりする話しちゃって」
「いえいえ。真奈さんのことが大好きになりました」
「あら嬉しいこと言ってくれるのね」
「母さん」
「どうしたの?」
「部活とかはもうしないんだけど、またサッカーを始めようと思うんだ」
「そう」
中学の最後の時の母さんの顔はとても辛そうにしていた。
でも今の母さんの顔はとても笑顔で幸せそうな顔をしてた。
「辛」に1本足すと「幸」になるか。
愛が言った言葉は本当かもしれない。
俺にとっての1本は愛や母さんみたいな存在なのかもしれない。
プロのサッカー選手になるって夢はもう無理だけど、これからの自分はこの支えてくれている人たちの笑顔を守っていけるようなヒーローになれればいいな
「瑞樹が大丈夫そうなら私はこのまま帰ろうかなって思うけどどう?」
「うん。もう少し休めば大丈夫そうだから帰ってゆっくりしててよ」
「私がみっちゃんをお家まで送るので安心してください」
「あら、それなら今日の晩御飯家で食べていかない愛ちゃん?」
「「えっ」」
俺と愛の声が同時に重なった
「私も久しぶりに早く帰ってきたし、お父さんも早めに帰ってくるっていっていたから、愛ちゃんも一緒にご飯でも食べようかなって。お父さんも真紀も愛ちゃんに会ってみたいだろうし」
「ぜ、ぜひお願いします」
「いいの?」
「大丈夫」
言葉とは裏腹に愛の顔は緊張一色って感じになっているけど
まぁ真紀とは初対面ではないし、父さんも大丈夫か!
「わかった。終わったら一緒に帰ってくる」
「じゃぁそうゆうことで」
そういって母さんは保健室を後にした
目を覚ましてからもう一つ気になることがあった
「愛は俺とここにいていいの?というか冷静に考えて俺はどうやってここに運ばれたの?」
「それは。。。えっと~~~。」
「何その反応」
「まぁそれはおいおいでいいとして」
「愛がそうゆうならいいけど」
「みっちゃんが大丈夫そうなら教室に戻ろうか」
「俺は大丈夫だよ」
「立てる?」
「うん」
愛に手を引いてもらい俺たちは保健室を後にした
「このまま一緒に教室に帰って大丈夫?」
付き合ってからも学校では絡みは極力避けていたのもあり、俺と愛に繋がりがあると思っている奴はこの学校にはいないはず。だからこそこうやって俺と愛が一緒に教室に入るのはダメじゃないか...
「まぁ大丈夫でしょ」
さっきから愛の様子がちょっとおかしい気がする
学校での愛と俺の前での愛は違うからそのギャップに悩んでいる感じかな
そして俺たちは教室に入った
教室に入るとクラス全員の視線が俺たち二人に集まった。
すごく気まずい
「松岡大丈夫か?」
話しかけてくれたのは森田だった
「うん。なんとか。倒れた後の記憶はないから、どうやって保健室までいったのかもわからないんだけど」
「えっ」
クラス全員の反応が「えっ」となっている
いやどうゆうことだ
すると一人の女子が愛に向かって話しかけた
「ねぇ嶋野さん」
「なに」
「嶋野さんって松岡くんとはどうゆう関係なの」
「彼女」
「えっ」
今回はさきほどよりもクラス全員が「えっ」となっている
敬都は下を向いていて、桜さんは額に手を当てている
「友達とかじゃなくて」
「うん。彼女」
ええええええええええええええええええええええええええええええええ
クラス全員の「え」が学校中に響き渡った
そして俺の心の中ではクラスのみんなと同じ反応だった
「なんで突然言っちゃったの???」