1回戦を順調に勝った俺たちは続けて2回戦が始まろうとしていた。
2回戦の相手は先ほど戦った相手よりも強いらしく、森田いわく優勝候補らしい。
しかも相手の中心選手は敬都と因縁がある木村である。取り巻きの二人も同じクラス。
俺はあのときセットしているときだったから今の俺があの時の俺とは木村達はわかっていないだろうが
敬都に関しては別だった。
「よぉ中村」
「は、はい」
「今日はセットしていないのか」
「うん」
「この前嶋野愛の登場でうやむやになってしまったけど、あの時の借りは今日返させてもらうわ」
「お手柔らかに」
「調子に乗るなよ」
木村たちの敬都に対する態度は相変わらず高圧的で、相手のクラスの生徒たちも木村たちにびびって従っているといったところだろう
「敬都、大丈夫だ。今回はお前ひとりじゃないから」
「ありがとう」
試合が始まるとお互いのクラスの中心選手が攻める構図でうちのクラスは森田と佐々木、相手のクラスは木村と取り巻き二人が攻めてくるといったところだ。
「敬都いったぞ」
「うん」
「雑魚は消えろ」
敬都にパスを出すと、すかさず木村が敬都に向かって体を当ててきた
これにはサッカー部の子もファールをとった
「おい!なんで今のがファールなんだよ」
「後ろからいったから」
サッカー部の子も木村のことは怖いらしく木村の圧に負けている感じだ
そのあとも敬都に対するあたりはきつく、ハーフタイムには敬都は泥まみれになっていた
「敬都大丈夫か」
「うん」
「無理しなくていいんだぞ」
「大丈夫だよ。昔の僕ならここで折れていたけど、今の僕は昔の自分よりも強いから」
「そうか」
「おい中村、お前木村に何かしたのか」
話しかけたきたのは森田と佐々木の中心的存在だった
「それは」
敬都はいっていいのかわからなくなっていた
「敬都は木村達に一時期金をたかられていたんだ」
「瑞樹。。。」
「中村、それは本当か?」
「うん」
「よし!」
森田と佐々木は少しだけ黙った後、急に話し出した
「ならこの試合で木村たちをぼこぼこにしてやろう」
「ぼこぼこ?」
森田が言った言葉に敬都は困惑していた
「ボコボコっていっても殴るとかじゃなくて、あいつらのクラスに勝ってプライドをへし折ってやろう」
「それいいね」
佐々木も続く。
森田は体育会系といった印象だが、佐々木はクールイケメンといった印象で、噂ではかなりモテるらしい。
「二人とも。。。」
「後半も頑張ろうな」
「うん!!」
「松岡!」
森田はピッチに入る前に俺に話しかけてきた
「中村の悔しさを一番理解しているのはお前だろうから、お前も頑張れ」
確かにゲームセンターで敬都が木村に殴られそうになった時のことは今でも後悔している。
実際敬都にしてやれたことは少ない。
「よし!!」
本気になる準備ができた。
本気になる理由ができた。
あとはやるだけだ。
後半が始まる
スコアは2-2
試合の展開は前半と同様で森田と佐々木が中心になって攻めて、相手は木村と取り巻きが中心で攻めてくる。
だが前半と違っているのが森田が木村のマークにつくようになったこと
「なんだお前、俺を止めれるとでも思ってんのか」
「それはどうだろうね」
「っく。。」
木村は森田のディフェンスに苦戦している
「お前らフォローせろ」
「おう」
「松岡いったぞ」
「おっけ」
俺は木村が取り巻きに出したパスをカットした
後半になってこのシーンが既に2回訪れている
「くそ、またか」
木村のフラストレーションは少しずつ溜まっているのがわかる
だが、こちらの攻撃も相手のディフェンスが頑張っていてなかなか得点が決まらない時間が続いた
後半になって木村の敬都に対するあたりは弱くなっていた。
弱くなっていたというより当たれない状況にしてやった
前半の敬都は一度ボールをとめてから次のプレイをかんがえていた。
その時間で木村に強く当たられていた。
だから俺は公判が始まる前に
「敬都。後半はボールを止めずに俺か森田か佐々木にダイレクトでパスを出せ」
「ダイレクトなんてできないよ」
「大丈夫、2週間練習しただろ」
「うん。。。頑張ってみる」
最初こそ不安そうだった敬都も実際にやってみると思っていた以上に上手くいったみたいで、後半はダイレクトでパスを出すようにしていた。
そのおかげで木村は敬都に当たれなくなっていた
あとは。。。
「よぉ木村、対して上手くないのにいきがってんな」
明らかな挑発だ。
俺も木村に対してはイライラが溜まっていて、ここで発散させてもらう気でいた
「誰だお前」
「ゲームセンターであったじゃないか」
「お前となんかあってねーよ」
「そうか。覚えてないなら仕方ないな」
「陰キャが調子に乗るな」
木村は俺に対しても強く当たろうした
「瑞樹!!」
「大丈夫」
俺は木村のあたりを簡単にかわして抜き去った
「はっ??」
木村も取り巻きも何かが起きたのかわかっていなかった。
サッカー部にかわされるならわかるだろうが、相手は自分たちが陰キャと認識していたモブAだ。
それは他の生徒も同じだったかもしれない、森田と佐々木は驚いた様子はなかったけど
「お前にはぶつけたいイライラが溜まっているんだ」
「なんだと」
「こいよ雑魚」
別に彼女の前だから強気な姿勢を出しているわけでは決してなくて、中学のときなんかは、こんなボス猿みたいなやつと何度も対峙してきたし、時には口げんかもたくさんしてきた。
だからこれは今が勇者モードになっているんではなくて、単なるサッカーモードなだけだ
「お前殺す」
「やってみろ」
「なんか瑞樹くんのキャラ変わっていない?」
「みっちゃんかっこいい」
「愛ちゃんにとって瑞樹はどんなであれかっこいいんだろうね」
「みっちゃんしか勝たん」
「愛ちゃんが現代っ子みたいな言葉使っている」
「がんばれみっちゃん」
挑発は見事に成功して、木村の標的は敬都から完全に俺の方に移った。
しかし木村の怒りとは裏腹に俺はいたって冷静にプレイすることができていた。
木村の強いあたりもかわしていたし、たまにはちょっとしたフェイントをして抜き去ったりもした。
周りからも「誰あいつ?」「うまくね」みたいな声が聞こえていた。
だが少しやりすぎたことを後から後悔する
後半も終盤に差し掛かったときに、俺は木村と取り巻きを全員かわして森田にスルーパスをだして森田が点を取り均衡が崩れた
3-2
「くそ」
木村のフラストレーションはピークに達していた
俺もこのときはこのまま試合を終わらせようと思った
しかし世の中はそんなに甘くなかった
木村のボールをカットした俺は次は佐々木にパスを出した
パスを出した後、「ドンっ」という衝撃が横から襲ってきた