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第14話

土曜日のお昼。

俺と愛と敬都と春乃さんはバスケットゴールがある近所の公園にきていた。

目的は愛の球技大会に向けての練習だ。

球技大会ごときでなんで練習?と思う人もいるかもしれない。

確かに俺と敬都みたいな陰キャポジションの人間が球技大会で活躍しなくても誰も気にしないだろう。

多分いつの間にかいなくなっていても気づかれないレベルだ。

しかし、才色兼備の完璧な女の子というイメージを持たれている嶋野愛はどうだろうか。

勝手に刷り込まれているイメージかもしれないが、幻滅されたときのがっかり感は俺たち陰キャの非にならないだろう。

だから愛の友達の春乃さんは中学の時からこうやって愛のために時間をかけて協力してくれている。

本当に春乃さんは良い人すぎる。

ちなみに俺も愛に対して運動神経が悪いという印象は全く持っていなかったのだが、実際にバスケットをしているところを見て思ったのは。

力の制御ができていない主人公みたいな印象だ。

顔は確実に主役をはれるのに、バスケっとしている姿は力任せの暴力的なスタイルだ。

見た目は繊細、プレイはパワー系といったところでギャップに驚かされている。


「瑞樹いくよ~~」


「おう」


そして俺は俺で見た目通り運動神経がそうでもない敬都のサッカーの練習相手をしている。

俺は小学生からサッカーをしていた分それなりに人に教えれるぐらいはできると思う。

まぁ本番は適当に流すつもりだけど。


「敬都まっすぐ足を振って、ボールの真ん中を蹴るんだ」


「わかった!!ってごめん変なところいった」


「大丈夫」


パスというよりは俺は球拾いに勤しんでいる

サッカーは思っている以上に難しいといわれている競技だ。

素人だとこんなのが当たり前。

逆に横でちゃんとバスケットをするのが初めてなはずなのにバスケット部並みに上手な愛の方がすごいんだろう。


「ごめん瑞樹へたくそで」


「想定内だから大丈夫」


「それは喜んでいいのかわからんな」


「素人だったらそんなもんだろ。サッカーは簡単そうに見えるけど実際にやってみると難しいという人が多いスポーツだ。普段は足よりも手を使って何かをすることが多いだろう。だから急に足でボールを蹴ったり、ボールを止めたりするのは慣れが必要ってこと」


「なるほど、陰キャのくせスポーツマンみたいなこと言うな」


「元スポーツマンだからな」


「でも素人目からみても瑞樹はサッカーが上手だと思うけど部活は入らないの」


「俺は中学で燃え尽きたからいいんだ」


「燃え尽きたなら仕方ないね」


敬都は特に追求することはしない。

なんとなくで察しているのかもしれない。


「そうだな。よし練習するぞ」


さて愛と春乃さんの方はどうかな


「愛ちゃんもっと優しくゴールにパスするような感じだよ」


「わかってるけどそれが難しいんだよ」


難航しているみたいだ。

愛が打ったシュートは力加減が間違っていてボードに跳ね返ってくるか、枠外に飛んでネットには一切触れていない。

でもフォームはできそうな感じはでている。

ちょっと不思議な感じだ。


「嶋野さんも苦手なものがあるんだね」


「それは俺も驚いた。でも愛の苦手は苦手というよりは何かが噛み合っていない感じに見えるけどな。敬都の苦手はただの苦手だけどな」


「おい喧嘩売ってんのか」


「ほらボールいったぞ」


「わわわ、急にボール蹴るなよ」


予想通り敬都はボールを後ろにそらして走ってとりにいった


「やっぱり苦手じゃん」


「覚えてろよ~~」


雑魚キャラの捨て台詞をはいて敬都はボールをとりにいった。


「みっちゃん調子はどう?」


「敬都は想像通りの上手さかな。今もあっちにボール拾いにいっているし」


「ははは、でもみっちゃんサッカー上手だね」


「私もそう思っていた。流石元サッカー部だね」


「上手なんかではないよ。ただ小学校から中学3年生まで続けていただけ」


「でも続けるのもすごいよ。私は一つの競技を長くはやってきたことがないから」


「そうなんだね。でも続けてこれたというよりはサッカーしかできなかっただけなのかもしれないな」


「なんでやめたの?」


「特に大きな理由はないけど、人間関係で上手くいかなくてもういいかなって思って」


「そっか。それなら仕方ないね」


「まぁ俺のことはいいとして、練習の続きしよう」



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