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第13話

「お母さん、僕は将来プロサッカー選手になってみんなのヒーローになるんだ」


「瑞樹ならなれるよ」


あの時は自分の夢に向かって一直線で頑張っていたし、自分はプロサッカー選手になるのが当たり前のように思っていたのかもしれない。

それがいつの間にか自分の中で「俺はプロサッカー選手にはなれない」と踏ん切りをつけていた。

踏ん切りをつけたのがいつだったのかはわからないけど、なんとなく相手チームに自分より上手な人がたくさんいあたときに子供ながら自分の実力を察したのかもしれない。

それでも中学3年生まではそれなりにサッカーを頑張れたいたと思う。

でも、3年生になった時にキャプテンに任命されたものの周りとの温度差で孤立して最後まで中途半端に終わってしまった。

あの時お母さんに子供ながらに約束した夢は春が終わると当たり前のように散る桜のようにいつの間にかなかったかのようになっていた。


「お兄ちゃん起きて」


「うん。。。」


「今日球技大会でしょ」


「うん。。。。」


「久しぶりのサッカーなんだから、愛ちゃんにかっこいいとこ見せなよ」


「うん。。。。」


「起きろ馬鹿」


「わかったわかった」


なんで滅多に見ない子供の時に夢をみたのかは言うまでもない。昨日球技大会の出場選手決めがあったからだ。。

俺としては適当にドッジボールにでも出て流そうと思っていたんだけど、敬都と二人人数が足りていないサッカーに入れられたのだ。

まぁサッカーは未経験ではないからドッジボールよりもうまくやれるかもしれないけど。

なんとなく憂鬱感が抜けない。

それよりも今日はある人に呼び出しを受けていた。なんとなく要件はわかっているけど憂鬱だ。

二つの憂鬱が重なってなおさらベッドから出たくない。


「仕方ない。いくか。」



「松岡くん来てくれてありがとう」


朝一いつもは人が少ない学校の屋上に俺は来ていた。

呼び出し人は愛の友達の春乃桜。

まぁ呼び出された内容は愛関係のことだろうけど、交際を反対されたり、お前は釣り合っていないとか言われるのかな。。。


「急に呼び出されたからびっくりしたけど、こうやってちゃんと話すのは初めてだよね」


「そうだね」


「それで要件は?」


「愛ちゃんと付き合っているの?」


やはり予想通りに質問だ


「付き合っているね」


「やっぱりそうだったんだ。最近愛ちゃんが一人で帰る機会が増えたから少し後をつけてみたら松岡くんのお家に入っていったから。最初はびっくりしたけど愛ちゃんのことはある程度はみてきかたら、その愛ちゃんが松岡くんの家に入っていったから付き合うようになったのかなと思って」


「まぁそんなところかな。愛と付き合い始めてからそんな日も経っていないのと。俺としては愛との交際は秘密にしておく方がいいかなと思っていたから。でも春乃さんにはいうべきだったかもしれないよね。ごめん。」


「それは全然大丈夫だよ。元々愛ちゃんは自分のことを話すタイプではないし」


「そうなの?てっきり秘密にしておいたことを怒っているのかなと」


「あはは。確かにちょっと寂しい気持ちもあるとは思うけど、愛ちゃんとは結構長い仲だからそんなもんかなって割り切っているよ」


俺が思っていた以上に春乃さんは良い人なのかもしれない。

俺が読んでいたラノベなんかでは親友ポジションの人は「隠し事」「秘密」みたいなのは大っ嫌いで嫉妬の対象になるって勝手に思ってたから。


「なるほど。それで話って何かな?」


「付き合ってほしいの」


一瞬春乃さんが言った言葉にドキっときてしまったのは単純に可愛い春乃さんの口から「付き合ってほしい」という告白ワードが飛び出したからだ


「はっ?付き合ってほしい」


「うん。多分もうすぐ来ると思うから」


「来る?誰が?」


春乃さんが何をいっているのか全く理解できなかったけど、後ろからドアが開く音がした。

振り返ってみると、そこには愛が立っていた


「みっちゃん、桜おはよう」


「愛ちゃんはみっちゃんって呼んでいるんだ。ふーん」


「二人で何してたの?」


「ただお話ししていただけだよ」


「お話って?」


「付き合ってほしいって」


「はぁ」


春乃さんのその言葉を聞いただけで愛の声のトーンが変わって一瞬黒いオーラのようなものが見えたような気がした。


「ごめん嘘。愛ちゃんのバスケットの練習に付き合ってほしいって言っただけだよ」


「バスケット。。。」


なおさら意味がわからない。

確か球技大会で愛はバスケットに出場するといっていたような。


「なんで愛のバスケットの練習に付き合わないといけないの?運動神経が悪いってイメージはないけど」


「うううう~」


「愛ちゃん、松岡くんに言っていないんだ」


「だって恥ずかしいもん」


「流石に彼氏には隠せないと思うよ」


「そうだよね」


「まぁ本人が恥ずかしいみたいなので、私が説明するね」


春乃さんは俺に丁寧に説明してくれた。

要するに愛は運動神経は悪くはないらしい。むしろ運動神経はいいらしい。

ただ、初めてする競技なんかは慣れるまで時間がかかるしい。

今まで才色兼備の完璧な女の子というイメージをできるだけ壊さないようにスポーツをする前にこうやって春乃さんが練習に付き合っていたらしい。

春乃さんいわく「愛ちゃんは初めてする競技は大変」ということらしい。

全然イメージはできないけど、球技大会まで春乃さんは俺に愛のバスケットの練習に付き合ってほしいということだった。


「なるほど、どこまで役に立てるのかはわからないけど手伝わせてもらうよ」


「ありがとう」


「みっちゃんありがとう」


「そうだ!!敬都も誘っていいかな?あいつもサッカーに選ばれたとき顔が天国に行きそうになっていたんだよね。敬都の練習は俺がするとして」


「いいじゃん。4人で球技大会の練習しよう!!


初めて話したけど春乃さんはめちゃくちゃいい子だ。

友達想い、気を使える。なんで彼氏がいないかはわからないけど。

でも球技大会は自分が出場する以外でも彼女の活躍している姿が見れるだけでも少しテンションがあがるかもなって思った。

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