デートの次の日の1時間目、俺たちのクラスは体育だった。
しかも授業内容は2人1組という友達がいない陰キャにっては試練でしかない授業内容。
ちなみに授業内容はキャッチボール。
さて、相手はどうしようかな。。。
そう考えていると中村敬都が一人で俺のことをみていた。
多分、あいつも一人だけど声かけるのか悩んでいるって感じだろ
「中村も一人?」
「うん」
「なら組もうか」
「うん」
元々おとなしい印象だったけど実際に喋ってみると想像以上におとなしいな。
今おとなしいのは性格だけが原因ではないのかもしれないけど
「なぁ中村」
「何。」
俺たちはキャッチボールを終えて隅っこに腰をおろした。
陰キャは隅っこ暮らしなのです。
「昨日の夕方○○のゲームセンターにいなかったか?」
「。。。。。」
中村は驚いた顔をした後、顔を下に向けた」
「単刀直入に聞くけど、お前っていじめられているの?」
「松岡くんってデリカシーないね」
「いや、あの場面をみたうえで回りくどく聞く方がデリカシーなくないか」
「確かにそうか」
そういって中村はまた下をむいてうなずいた
「いじめられているというか、金をあげるようになったのは最近で。たまたま○○のゲームセンターで遊んでいたら話しかけれれて、最初は一緒にゲームしていたんだ。」
「あ~また負けた。って金もうねーじゃん」
「僕がおごろうか?」
「まぢ?サンキュー」
最初は100円200円の話だったのが、次第に額が増えていき、いつのまにか昼ご飯をおごらされるようになって、今に至るそうだ。
もちろん中村は断りもしたらしいのだが、3人組のリーダーが暴力的なおどしをしてきたことによって1週間に1度お金を渡すことになったそうだ。
話をきいているうちに怒りがこみあがってきたがなんとか中村にばれないように平常心を保った。
陰キャの弱い部分につけこんで全く許せないやつらだ。
「なぁ中村これからどうしたい?」
「できることならこんな状況をかえたいよ」
「そうだよな」
「でも僕みたいな弱い人間があんな強い人たちに対してできることなんて何もないから」
「ならあきらめるのか」
「あきらめるしかないだろ!!松岡くんは被害者じゃないからわからないだろ」
「確かに俺は被害者じゃないから中村の気持ちを全部わかるの無理だな」
「じゃぁ余計なこと言うなよ」
「でも。。。悔しいだろうなって気持ちはわかってやれるかもな」
中村は目を開いてこっちをみている
「確かに被害者には被害者にしか感じれない気持ちがあると思う。第三者はきっと同じ気持ちを共有することができても同じ気持ちには絶対になれない。でも理解しようと努力することはできると思うんだ。俺じゃなくても今の中村の気持ちを「悔しい」って思う人はたくさんいると思う。特に俺たちみたいなポジションにいる人間は」
「正論をいってくるやつはいる。「嫌なことをされたら嫌というのが相手には一番きく」と。でも言えないから困っているんだし、実際に嫌といってもどうにもならなかったから苦しむんだ。弱い人間の気持ちは強い人間にはわからない。逆に強い人間の気持ちも俺たちにはわからない。違うか?」
「そうかもしれない」
「だから俺が中村にしてあげるのは直接助けることはできないかもしれない。でも話を聞くことはできると思うんだ。まぁ頼りないかもしれないけど」
「松岡くん。本当は誰かに話したかった。でも誰も話す人がいなくて苦しかった」
そういって中村は涙を流した。
嶋野愛は周りからの評価で才色兼備の完璧な女の子でいないといけない空気になった。
中村敬都は強い人間に逆らえない空気になった。
やはり目に見えないけど「空気」は怖いものだと俺は思う。
例えば中村がいつでも言い返せるような空気ができあがっていれば、今の辛い状況にはなっていんかっただろう。
例えば嶋野愛が私は裏では甘えん坊なんだといえる空気があれば、今の嶋野愛は出来上がっていなかっただろう。
俺たちは知らず知らずに空気と戦っている。
でもその空気とずっと戦う必要はない。
空気とは時には戦って時には逃げればいい
愛は空気が大きすぎて逃げ道を作ってあげた。でも中村は逃げても追いかけられ続ける。ならこの空気と戦うという選択肢をとろう。
「とりあえず、俺に少しだけ考えがあるから今日の放課後俺の家こないか?」
「えっ。ならお邪魔しようかな」
中村の中では少しは信頼を得れたのかなと思う。
やはり腹を割って話すのは大事なことだ。