「単刀直入に言うなら、最後のトドメは俺が決めようと思っている」
手にした双剣をジャキンと握る。
それは、俺の覚悟の表れだ。
「トドメはキミが……? 一応聞くけど、その双剣でかい?」
「そうだ。今のところ俺が持ってる一番の武器はこいつだからな」
まあ、固有能力の
もちろん、
しかし、あくまでも攻撃の決定打になり得るかという視点で論じるならば、この【不棄の雷双剣】に勝るものは現状の俺の手持ちスキルでは存在しない。
頼みの綱は、この二本の短剣である。
男は話が見えないとでも言いたげな表情でガトリングガンを撃ち鳴らす。
「すまない。さっき聞き間違えたかもしれないが、キミは接近戦しかできないんじゃなかったのかい? それとも今のあのレッドトロールの炎の鎧にも勝ち筋が見えているのかな」
「聞き間違えじゃないから安心しろ。確かに俺は基本的には接近戦しかできねぇよ。この双剣だって例に漏れず敵に直接叩き込まねぇとダメージは与えられないしな。特殊効果とかも……あるにはあるが、やっぱ近接系統の能力なのは同じだ」
「ならどうするつもりだ。僕が奴の足を破壊しても、それじゃあ何も状況は変わらないぞ。それとも、時間稼ぎでもして別の作戦の準備でも進める気か?」
その質問に、俺は首を横に振った。
「いいや。そんなことはない。さっきも言ったろ? レッドトロールは俺がトドメを刺すって」
「……何か必勝法でも思い付いたって顔だね」
「必勝法、って呼ぶにはだいぶ博打要素が強めだがな。それでも、万が一失敗したって俺が消し飛ぶだけだ。アンタが奴の足を破壊してくれてさえいれば、他のプレイヤーが逃げるくらいの時間は稼げるだろう」
「へぇ。覚悟は決まったってわけか」
「んなもんとっくに」
俺は自分でも思わないほど低く底に響くような声音で答えていた。
その発言に、男は面白そうなものを見るように目を細める。
「了解だ。具体的にどんな策を思い付いたのかは分からないが、それは後での楽しみにとっておこう。キミの中では勝機は見えているんだもんね」
「精々その目に焼き付けておいてくれ。あ、でも楽しみにしすぎて自分の役割を疎かにするのは止めてくれよ?」
「ははっ、言うじゃないか。それこそ無用な心配だ。あの巨人の片足くらい、僕が何本でも破壊してやる。何なら景気づけに両足とも再起不能にしてやってもいいぐらいだね」
「そりゃ頼もしい。んじゃ、そっちは任せたぜ」
「ああ。キミの健闘も祈っているよ」
それだけ言い交わし、互いに小さく笑い合う。
男はガトリングガンの射撃を緩め、場所を移動するべく動き出した。
その男に対し、俺が思い出したように後ろから声をかける。
「あ、そうだ」
「どうかしたかい?」
「アンタの名前、聞かせてくれよ。俺しか名乗ってなかっただろ」
今さらながらに気付いたが、俺はこの男プレイヤーの名前を知らない。
互いの素性こそ完全には明かせなくとも、最低限名前くらいは教えてくれてもいいだろう。
一応、間接的にとはいえ、これから両者の命運を懸けた一戦が始まるというのだから。
その質問に男は一瞬驚いたように喉を詰まらせるが、やがてしかと俺の目を見据えて返してきた。
「
葦原環、か。
脳内で一度反芻した後、俺はニヤッと口角を歪ませる。
「それじゃ、あのデカブツの後ろは任せたぜ。葦原!」
「ああ。遊一君も、精々死なないようにね」
その一言を皮切りに、俺たちは別々の方向へ走り出した。
いよいよ、エリアボス戦も佳境に入る頃合いだ。