「……なんつーか、予想はしていたんだが」
校門をくぐって街に降り立った。
俺はジト目で、北沢はあわあわと混乱しながら通学路の光景を眺める。
「な、なな、なによこれ……! ま、街のそこら中にモンスターが溢れてるじゃない!?」
北沢の悲痛な叫びが無人の街に響き渡る。
うん、まあそうかもなと思っちゃいたんだが、やっぱりモンスターは校内だけにいる訳じゃないらしい。
具体的な規模は不明だが、これは街中にモンスターが解き放たれていると考えた方がいいか。
「ま、これで無駄な説明は省けたな。さっき俺たちが戦ったジャイアントスライムは夢でも幻でもない。本当に現実に存在している生命体なんだよ。それがこの《新世界》だ」
「《新世界》……」
北沢は半ば呆然としながら反芻した。
このまま
「だが、安心しろよ。あれくらいのモンスターなら簡単に倒せるし、何なら無視して行っても問題ないくらいだ」
「ほ、ほんと? 本当に大丈夫なの?」
「ああ。スライムなら校内で何体も倒したしな」
幸いと言うべきか、今俺たちの目の前の車道や歩道に蠢いているのは、多種多様な色味をしたスライム。
鑑定で調べたが、レベルも一から三程度で脅威にはなりえない。
「とはいえ、さっきの戦いで武器をかなり消耗しちまったからな。できれば無駄な戦闘はしたくない。今回は無視して俺の家まで直行しよう」
「そ、そうね」
そう決断して歩みを進めると、俺の頭上を飛ぶプリムが意味深な笑みを浮かべた。
「……ふっふっふ。どうやらお困りのようですね、遊一」
「なんだその腹立つ顔は」
「可愛いお顔と言ってください。それよりも遊一、ひとつ大事なことを忘れていませんか?」
大事なこと?
そんなの何かあったっけ――――あっ!
俺が閃いたと同時、プリムはそれに呼応するようにビシッと人差し指を突きつける。
「そうです! さっきのジャイアントスライムを討伐したことにより、進行中だったクエストが達成されたのです!」
あああああああ!
そうだった!
ジャイアントスライム……というか、北沢の悲鳴が聞こえてくるまでずっと進めていたクエスト――
プリムはウインドウ画面を派手に見せつけた。
『ノーマルクエスト:モンスター十体の討伐【CLEAR】』
「おおおお! ついにクエスト達成かっ!」
「それだけではありません! なんと先ほどのジャイアントスライムを討伐したことにより、もう一つ別のクエストも達成されました!」
眼前に表示されているクエストクリアの画面の上へ追加するように、別のウインドウが現れた。
『ノーマルクエスト:レベル10以上のモンスターの討伐【CLEAR】』
「うわ、マジか! クエストW達成かよ! いやー、あのデカブツスライムから逃げずに立ち向かった甲斐があったな!」
「ふふふ、遊一。喜ぶのはこれからですよ。クエストを達成したことにより、それぞれからクリア報酬が貰えるようです!」
クリア報酬。
そのワードに、俺の心臓が跳ねるのを感じる。
すると、プリムと俺の間の空間が、パアァァ! と光り始めた。
その光の中から何かがゆっくりと何かの物体が出現し、俺の手に収まる。
果たしてそれは、二双の短剣だった。
「なんだこれ……短剣? いや、双剣か?」
俺が疑問を口に出した瞬間、剣の上部にウインドウ画面がポップアップする。
『【
効果:雷属性を付与された双剣。魔力を通すことで雷魔法を行使可能。「
「【不棄の雷双剣】……!! めっちゃくちゃカッケェじゃねぇか!!」
全体的に青白い色合いを基調とし、持ち手から刀身に渡って枯れ枝のような細い黄金の紋様が刻まれている。
大きさは一般的なナイフより一回り大きいくらいで、持ち運びも容易だ。
「まだそれで終わりではありませんよ! 二つ目のクエストの方からもクリア報酬が進呈されています! ステータス画面を確認してください!」
言われた通りに、自分のステータス画面を表示してみる。
名前:
レベル:9
魔力:118
固有能力:『
保有スキル:鑑定Lv.2、敵感知Lv.2、身体強化
称号:アーリープレイヤー
ざっと確認する。
まず最初にレベルや魔力値が上昇していることに気づいた。
これはジャイアントスライムを討伐したことでレベルアップしたんだろう。
だが、その他に変わったところと言うと……このスキルか。
「スキル:身体強化……もしかしてこれがクリア報酬ってやつか?」
「ご名答です! 新しいスキル三つ目です! しかも肉体に関係するスキル! 肉弾戦ばっかりの脳筋プレイヤーである遊一にはピッタリのスキルじゃないですかー!」
「ぬぐぐ……心当たりがあるから強く言い返せねぇ」
俺としてはスマートに戦っているつもりではあるのだが、追い詰められると真っ向からぶつかっていくスタイルになってしまっている。
だが、これは俺の固有能力の特性的に仕方がない面もあるだろう。
そう納得し、俺は手にしていた二双の剣に再度視線を落とした。
「試しに、この双剣を使ってみるか。ちょうどいい標的が転がってることだし」
俺はスライムに向けて双剣のうち一本を握り、
軽く腕にも
剣は風を切るような鋭い音をたてながら、一瞬の内にスライムを両断する……だけでなく、剣からバチバチッ! と青白い稲妻が迸り、スライムの肉体を木っ端微塵に粉砕した。
「うおおっ、すげぇ! あれが雷属性の恩恵……いわゆる追加攻撃のようなもんか。それに双剣自体もこれまで使ってた安物のナイフとは次元が違う。めちゃくちゃ手に馴染むし、殺傷能力も段違いだ!!」
驚くのはこれで終わりではなかった。
遠くに飛んでいってしまった剣が、俺の手元に再召喚されたのだ。
適度な重みが右手に伝わる。
「なるほど、これが『
そして、嬉しい結果がもう一つ。
「俺の右腕も
心なしか、これまでよりも体が軽くなった気がする。
クエスト攻略……想像以上にクリア報酬が充実してるじゃねぇか!
マジで最高だ。
俺の