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第8話  クエストの存在


 名前:神崎遊一かんざきゆういち

 レベル:5

 魔力:94

 固有能力:『上限突破ハイオーダー

 保有スキル:鑑定Lv.1,敵感知Lv.1

 称号:アーリープレイヤー



「おお~、レベル五ですかー! って、雑魚じゃないですかっ!?」

「あ、やっぱそう?」


 雑魚呼ばわりは心外だが、俺もそれは同感だ。

 レベル五は弱いよな。


「でもさっき俺が見た時より成長してるんだぞ。元々レベルはいちだったのが五に上がってるし、『敵感知Lv.1』とかっていう新しいスキルも覚えてるし」


 敵感知は、まあ文字通りのスキルだろう。

 ただこのスキルレベルはいちだから、どこまで使い物になるかは分からんが。


「ねぇ、いま元々レベルいちだって言いましたよね。なら、何のモンスターを倒してレベルアップしたんですか?」

「オークだな。たしかレベル九だったか」


 レベル九のオークとレベルいちの俺。

 今さらながらこのレベル差でよく勝てたな。

 上限突破ハイオーダーがなかったら普通に死んでたくらいには強敵だった。


「レベル九のオークですか。レベルいちなら瞬殺もいいところですが、よく倒せましたね。原因はこの固有能力でしょうか」

「やっぱそうだよな」

「はい。ていうか、そもそも固有能力持ちってかなりレアですよ。多分アーリープレイヤーか、ボス級のモンスターくらいしか有してないと思います」

「そう、なのか。まあ、この上限突破ハイオーダーもそこそこチートだからなぁ」


 だが、上限突破ハイオーダーの使用には代償もある。

 まだ両足が筋肉痛の時みたいにじんじん痛むからな……。

 恐らく上限突破ハイオーダーは、一時的に本来の性能以上の能力を引き出す能力なのだろう。

 そして、使用後は反動が返ってくる。


「ていうか、お前はどうしてそんなことが分かるんだ。この《新世界》の何を知ってる」

「私がアクセスしているのは閲覧可能な《新世界》のデータベースです。そこに記載されていることであれば何でも知っていますし、答えられます」

「データベースだと? それは俺も見れるのか」

「多分ムリじゃないですかね。今のところアクセス権があるのは妖精と管理者の方々だけみたいですし」

「マジか。てことは、お前はあの管理者Xと同じレベルでこの世界を構成する情報に触れられるのか」

「全ての情報ではありませんがね。私に閲覧権限与えられている範囲のものだけです。だから管理者Xさんと比べられちゃうと困っちゃいます」


 プリムは胸の前で大きなバッテンを作った。


「そうか……。それで、お前は現状の俺のステータスを見てどう思う? これからどうしていった方が良さそうとかアドバイスあるか」

「そうですね。まずは遊一のステータスを上げていくのが良いのではないでしょうか。何をするにしたって、力がなければ話になりません。暴力は正義ですよ!」

「お世辞にも可憐を自称する妖精が吐くセリフじゃねぇな」

「やん! もう遊一ったら! 私を世界一可憐な超絶プリティー妖精ちゃんで全てを投げ出したいくらい愛してるだなんてっ!!」

「お前耳腐ってる?」


 バカなことを宣うアホ妖精にツッコミをいれる。

 が、そんな俺の声などは欠片も届いていないようで、プリムはひとしきり自分の可憐さに酔いしれた後、ビシッと指を立てて俺の鼻先に迫り来る。


「とにもかくにも、さらに強くなりたいならモンスターを倒していくことをオススメします! 自分よりちょっと格上のモンスターを倒せばより効率的ですよ! そこで攻略すべきなのは、『クエスト』です!」

「クエスト?」

「はい。《新世界》では様々なクエストが設定されたり、状況によって追加されたりするんですよ。それをクリアすることで、武器とかスキルとか特殊イベントとか、色んな良いことがあるんですよ」

「そう言えば管理者Xも『クエストクリアおめでとう』とか言ってたな。あれはそういうことだったのか」

「ただ、このクエストは通常のプレイヤーには開示されないので、普通なら手探りで進めていくか、あるいは偶然クエストを達成していたことでご褒美が貰えるのを期待するかの二択しかありません。私が《新世界》のデータベースにアクセスしてクエストの情報を教えなかったら、遊一は一生かけてもクエスト内容を知ることなんてできないんですからねっ! 今から言うことは、遊一では到達できない領域にある情報であるということを理解し、プリムちゃんに全力の感謝をしてくださいっ!」

「へいへい、感謝するから教えろよ。そのクエストってヤツを」

「そうですねぇ。今の状態だと手頃なものは……あ、これなんてどうでしょうか?」


 プリムは、ひょいっと空中で宙返りして距離を取る。

 それと同時、俺の目の前にウインドウ画面が表示された。


『ノーマルクエスト:モンスター十体の討伐』


「モンスター十体の討伐、か。ふむ、まあ悪くはないな」


 もっとトンデモ案件クエストを引っ張ってくるかと思ったが、意外と現実的なクエストだった。

 それに、モンスターの索敵も新たに獲得したスキルである『敵感知』によって効率化できる。


 俺が納得の意を示すと、プリムは得意気に胸を張って満面の笑顔になる。


「でしょ!? それでは、モンスター狩りといきましょうか!!」

「だな。モンスター狩りと平行して、他のプレイヤーもいたら接触を図ってみるか」


 プリムは、レッツゴー! と叫びながら、先導するように張りきって前を飛んでいく。

 俺はまだ若干痛みが残る両足に力を入れ、プリムの後を追いかけていった。



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