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第7話  超絶プリティー妖精ちゃん


 半壊した廊下に取り残された俺は、とりあえず校舎の中を慎重に探索していた。


「これどこに向かってるんですか? あっ、もしかしてちょっと休憩できるような所とか探してたりします? でも、本当に休憩だけで済むんですかねぇ~? 私が超絶プリティーだからって、野獣のごとく襲いかかってきたらダメですよ! そうなったら私も自己防衛のために拳を握らないといけなくなっちゃいます! きっと魔法も撃つことでしょう! そんなの食らったら、ぶっちゃけ今の遊一なら七回はお陀仏ですっ!」


 謎は多い。

 だからまずはこの近くにいるらしいプレイヤーと接触しようと思っている。

 管理者Xの言葉を真に受ける形になるが、疑ってばかりいても行動できないからな。

 もしプレイヤーがこの学校の生徒なら、見ず知らずの他人よりは話しやすいはずだ。


「ねぇねぇ、聞いてます? さっきから神妙な面持ちで歩いてますけど、本当は大したこと考えてないんでしょう? どうせ私と対面するのが恥ずかしいから、なんて切り出そうか熟考してるんですよね。ですが安心してください! この世に私ほど話しやすい相手はいませんよ! どんな話題だって付き合ってあげます! えっちな質問は殴りますが!!」


 結局、この世界が何なのか、俺に与えられた使命はあるのか、そして元の世界に帰ることはできるのか、重要なポイントは何一つ不明なままだ。

 これは最悪の場合、ある程度の長期戦は覚悟しておかなければならないかもしれない。

 仮に現実世界への帰還条件がボスモンスターの討伐とかだったら、さすがに今の俺の状態じゃ太刀打ちできない。


「ちょっとぉぉおおおおおお! 聞こえてんでしょおおおおおお!! 無視すんなー! 応答しろー!! こうなったら口を聞くまで耳元で叫んでやるっ! プリムちゃんは超絶プリティーで最高ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「だぁあああああああ!! さっきからうっせぇぞピンク妖精!!」


 さっきからシカトを決め込んでいたが、あまりのうるささにたまらず反応してしまった。

 ピンクの髪を肩口でカールさせる妖精――プリムは、腕を組んでぺったんこの胸を張る。

 管理者Xに無理やり押し付けられた、事故物件ならぬ事故妖精である。


「うっせぇとは何ですかっ! この私がさっきからずっと話しかけてあげてるっていうのに! もしかして遊一ってコミュニケーション能力が致命的に欠如している人間ですか? 人が話しているときは目を見ながらきちんと耳を傾けましょうって教わらなかったんですか? 義務教育受けてます??」

「受けとるわ! いま高校生だろが!」


 口を開けばキュートだのプリティーだの、こいつの自己肯定感はどうなってんだ!

 ベラベラ延々と喋ってんじゃねぇか!

 俺は、頭を振って怒りを振り払いつつ、一応プリムにも相談してみる。


「で、お前は何ができるんだよ。俺をサポートするとか何とか言ってたが、本当に役に立つのか?」

「のっけから失礼な人ですね。いえ、遊一は最初から無礼でした」

「そこの河原に捨てるぞ」

「ですが、私は心も広い妖精なので許してあげます! それで私の役割ですが、遊一のサポート全般ですよ。戦闘面から情報収集、果てには寂しい時のお喋り相手まで、何でも私に頼っちゃってくださいな!」


 プリムは自信満々に言い放つ。

 胸元にある大きなリボンが存在をアピールするように大きく揺れた。


「それじゃあ教えてくれよ。今から俺はどうするべきだと思う? 俺は他のプレイヤーと接触しようかと考えてるんだが」

「その前に、今の遊一の状態を教えてください。まずはステータス画面を見ないと、アドバイスもできないですし」

「……分かったよ。ステータスオープン」



 名前:神崎遊一かんざきゆういち

 レベル:5

 魔力:94

 固有能力:『上限突破ハイオーダー

 保有スキル:鑑定Lv.1,敵感知Lv.1

 称号:アーリープレイヤー



 俺は階段の踊り場で立ち止まり、ステータスを表示した。


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