リカはマサルに電話をしたが、案の定、繋がらなかった。
電話の代わりに、リカは何通のメッセージを送った。
ガイアリング周辺の道路状況、バスやタクシーはどこまで近づけられる、周りに住宅区の有無、テストに持ち込み不可なもの……などガイアリングの周りの環境やテストのルールについていろいろ質問した。
しばらく待っていたら、全部既読になった。
一方、マサルとエンジェはガイアリングのコントロールセンターに座っている。
ガイアリングは戸外と室内、二つの部分に分かれている。
室内部分は「コア」と呼ばれる二階立ての建物。上空から見れば、完璧な円形になっている。
「コア」を囲む戸外部分は「シー」と呼ばれて、森公園のような景色になっている。周りに合金の壁に厳重に保護されていて、上空から見る形は、まるで巨大な玉子。
コントロールセンターは「コア」の一階にある強大な丸い部屋。一面の壁は「シー」に面しているが、ガラスは特別加工されたもので、外から中が全く見えない。
ガラスの前に、ヨーロッパ宮廷風の白いテーブル椅子セットが置かれている。
マサルとエンジェは対面に座って、外の地形変化の演習を見ながら、甘いお茶時間を過ごしている。
エンジェはウェディングドレスの特集を広げて、選んでてとマサルに唆した。
ちょうどその時、リカからのメッセージが相次ぎに到着する。
マサルはスマホの発信先を一目見たら、不愉快そうにスマホを締めようとした。
エンジェはその表情に気づき、やきもちのよな甘い声をあげた。
「うるさいわね。誰なの?重要な仕事時間を邪魔するなんて。あたしたちの知り合いのなかで、こんな殺風景なことをする人は、三人しか知らないわ」
「……」
マサルはエンジェの意味が分かる。
スマホエンジェに見せて、リカのアカウントと電話番号を「非通知」にして、更に「ブロック」した。
その時、一人のスタッフがマサルを呼びに来た。
「マサルさん、ガイアの彫像に何がついているみたい。ちょっと見てくれないか」
マサルはスマホを置いたままスタッフについて外に出た。
エンジェはスマホを取って、リカのアカウントを復活させ、メッセージを読んだ。
「道路の状況?住宅区?持ち込み?何なのよ。無理やりに話題を作ってるのね。マサルちゃんが話に乗ったら、ここの情報を強請るつもりでしょうね」
「残念だったわ、マサルちゃんはもうあなたに一ミリの情もないのよ」
突然に、外に繋がるアナウンサーから変な叫び声があった。
エンジェはガラス窓を越して外を眺める。
いつの間にか、一匹の長毛の野良猫が「シー」に入り込んだ。
ゴロゴロ動いている地形の中でパニックになって、叫びながらあちこち逃げ回っている。
取り乱した野良猫を見て、エンジェはなぜかいい気分になった。
「捨て猫かしら。優良血統とはいえ、飼い主がいなかったら、ただのゴミよ。早く諦めて、楽になればいいの」
エンジェの目の中で、野良猫はリカの姿になり、障害物の間で必死に足掻いて、最後に深い溝に落ちて、姿が消えた。
エンジェは猫好きだ。特に有名種で、値段の高い猫が好き。家でも二匹を飼っている。
なのに、今はあの野良猫の遭難を楽しんでいて仕方ない。
リカに対してもそうだった。
エンジェはリカが好きと自覚している。なぜなら、リカは彼女が望んでいるすべてを持っている。
権力者の祖父、有能な両親、勉強のできる頭、複雑な仕事を処理する能力、与えられたイケメンの婚約者、誰かに媚びを売らなくても生きていける自信——
リカの任務もいつもレベルの高いものだった。
手伝いに行けば、リカはいつも高い評価をつけてもらう。だから、エンジェはほかの人より早いスピードで継承人ランキングを上っていた。
そのままリカに掴んでいけば、自分もリカと同じようなところに上れると思っていた。
だが、それは間違っていた。
リカのと同じようなハイレベルの任務は、彼女に振り込まれない……
リカよりも優れた異能力を手に入れても、家の核心部に受け入れられなかった。
エンジェは不公平と思った。リカの存在もだんだん目障りになった。
その上に、リカの愚かさは耐えられないものだ。
あんなに資源を持っているのに、全く活用していない。
馬鹿みたいにコツコツ任務をやっていて、普段は「仲良し」活動もしない。
必死にみんなと「仲良し」になる自分を舐めているみたい!
七龍頭首席の継承人という肩書を持つだけで、そんな傲慢でいられるのか!
エンジェは悔しかったが、効率よくランキングを上るために、その悔しさを隠し、大人しくリカの傍で務めることを選んだ。
天は自ら助くる者を助く。その悔しさを我慢する時間は無駄じゃなかった。リカの「親友」として家から注目を受けはじめて、リカほどではないが、わりとおいしい仕事を受けるようになった。そして、「貴人」と出会った。
「貴人」の助言で勇気を出して、異世界の件を利用し、一撃必殺でリカをやっつけた。
リカから聖地を守る仕事を奪って、リカに与えられた男――マサルを自分の騎士にした。
長女継承制度も廃止され、ついに、リカと同じ……
いいえ、リカに勝ったんだ!
リカの祖父はお茶会に向かう途中に、何者かによって襲撃された噂を聞いた。
どうやら、運も自分の味方だと、エンジェは密かに笑った。
あの爺の命もきっと長くない。これで、リカを家から追い出す審議は再提起できる。
リカはあの野良猫のように必死に足掻こうとするだろう。
でも、自分は天使のように優しい。
この「実験」で、リカを楽にさせる。
リスクを心配する必要はない。
マサルはリカとお茶会でトラブルした。
マサルはリカの祖父を裏切った。
マサルはこのガイアリングの責任者だ。
リカに何かあったら、責任を問われるのはマサルだ。
本当に、盾になってくれるいい騎士だわ~
エンジェはリカのいない美しい未来を想像しながら、マサルのスマホでリカのアカウントと番号をブロックし、完全に削除した。
これもまた、マサルがリカに敵意を持つ証拠になるだろう。
考えれば考えるほど盾騎士・マサルの状況を見たく、エンジェは入り口まで来た。
そこで、身を屈めて、ガイアの巨大彫像の下部を確認するマサルの姿がいった。
エンジェは速やかにスマホでそのシーンを撮った。
更に、写真に自己流の勝利宣言をつけて、「クラブ」にアップロードした。
「Goodless and her Royal Knight!魔女を打ち破った聖女と騎士はついに結ばれる!Love our honey fate ~ Love our shining future!ハートマーク」
「クラブ」の中で、マサルに不服を持つ若い男たちはどう思うでしょうね?
マサルに勝つためにさらに奮発するのかしら~
「あたしのために争わないで」なんかセリフ、ただの偽善よ。
主人公みんな、本当に叫びたいのは「あたしのために争え!」ってセリフよ!
そう、あたしこそ真の主人公、悪役令嬢だと誤解されたいい女。リカは人生を乗っ取られる元悪役令嬢に過ぎない。誰もそんなリカの消失に興味を持たない。
エンジェはたくさんの男に囲まれる自分の美しい姿に陶酔した。
投稿した勝利宣言に、英語のスペルミスがあるのにも気づかずに。