「それでは、CEOのことをよろしくお願いいたします!必ず、必ず治してあげてください!これはCEO一人の問題ではなく、
リカはサーブルの先端を青野翼の鼻の前に置いたら、彼はやっと無駄な涙話を止めた。
青野翼は一台の青色のスマートフォンをリカに渡して、家庭教師の仕事の本題に入った。
「これはCEOの治療に特別に開発されたスマートフォンです。三つの重要なアプリが入っています。一つ、CEO評価システム;二つ、家庭教師支援システム;三つ、GPSと緊急連絡機能」
「まずは、CEO評価システムです。精神状態、肉体機能、他人への印象など合計18個の採点項目があります。リカさんの仕事は、それぞれの項目の基準に沿って、CEOの毎日の行いに採点とコメントを入れることです。そして、CEOはその基準にふさわしくない行動を取った場合、彼を取り締めることです。採点とコメントは毎日0時に自動的に僕たちの戦略チームに送られます。その採点とコメントを分析して、CEOの治療計画を随時に最適化します」
「次に、家庭教師支援システムです。それはリカさんのマイページです。仕事のガイドブック、CEOのスケジュール、給料の詳細など仕事に必要な情報が入っています。経費精算、仕事のレポートもそこから提出してくだい。何かご不明なところがありましたら、そこに書いた連絡先に問い合わせをしてください」
「GPSと緊急連絡機能は、そのままの意味です。ワンタッチでSOS信号を出せます。このスマホを持っていれば、僕たちの戦略チームはお二人の居場所が分かります。CEOも同じタイプなスマホを持っているので、リカさんとCEOはお互いの位置をチェックできます」
「このスマホは神農グループ専有の衛星ネットワークを使っています。外部からの盗聴は不可能で、通信できる電話番号もあらかじめ制限されています。内蔵は大きいけど、あらゆるゲームに対応していません。仕事以外のことに使えません」
リカは説明を聞きながらスマホをいじっている。
CEO評価システムで「人間関係」という項目を見つけたら、さっそく入力し始めた。
「秘書の仕事能力と社会常識に懸念があります。CEOを含めて、周りによくない影響を与えているので、代わりの人を探してください。重要度:緊急。」
更に、採点欄に「-250」を入れてから、青野翼に見せた。
「こんな書き方でいい?」
青野翼の悲鳴の中で、リカは確定ボタンを押した。
親切にも、スマホから「スコアダウン」のイメージメロディーが響いた。
「それでは、戦略チームに報告しに行きます。CEOのこと、よろしく頼みます……」
青野翼はタクシーに乗る前に、ハンカチで涙を拭きながら二人に一度振り向いた。
イズルの顔は梅雨明けの青空みたいに輝いている。
リカの目は冬の風でも吹けそうに冷たい。
二人の表情の意味に悟った青野翼は、首を垂れて無言に車に乗った。
「お姉ちゃん」
イズルの可愛らしい呼び声を聞いたら、リカは冷たい目線を返した。
言っていた年齢は自分より年上なのに、年下の振りをして甘えんでいる。
下手な猫かぶりだ。
でも、精神的な年齢でいうなら、小学生レベルかもしれない。とりあえず、大目で見てやるか。
リカの厳しい目線に気にしないのか気付いていないのか、イズルは甘く微笑んだ。
「翼ちゃんのことなら気にしなくていい。わたしはとても話やすいです。毎日付き添いなんて馬鹿馬鹿しいですよね。彼の目線が届かない時に、別々で行動しましょう。お姉ちゃんは遊びにでも行って。後で口を揃えて、翼ちゃんとあの戦略チームとかに誤魔化せばこちらの勝ちです」
「契約したのに、守るつもりはない。その上、人を騙すことを考えている」
リカは軽蔑そうにつぶやいた。
評価システムの中から、「人柄」という項目を見つけて、
コメント:「契約精神は微塵もない、不正行為を提唱している」と点数:「-250」を入力した。
「見たでしょう?わたしは無理矢理に契約されたのです。そもそもリカさんも彼のことが気に入らないですよね?だったら、わたしたちは仲間です。共通な敵に立ち向かうべきです!」
リカの認めを求めるために、イズルは青野翼を生贄にした。
「それでも彼はあなたの命を思うあなたの秘書で、私は雇用された部外者だけ。私は敵を作りたくない。誰の敵にもなりたくない」
リカはスマホ画面をめぐって、「判断力」という項目を見つけた。
コメント:「上司なのに責任を部下に押し付ける。敵味方の区別ができていない。」、点数:「-250」を入力した。
「暗黒組織なんてはそんなにあるものか!デタラメです!リカさんのために言っているのです!あの契約は普通じゃない。若い男女の同居が条件ですよ!リカさんの名誉に損があったらどうします?健康保険料と住民税も自分で納めなければならないし、残業代のことも書かれていない!よし、こうしよう!わたしの言う通りにしてくれれば、こっそりボーナスをつけてあげる!」
イズルはだんだん焦ってきて、言葉もどんどん意味不明になっているけど、リカはただ平静そうにスマホをいじり続ける。
正攻法が利かないと理解したのか、イズルはため息をして、その好青年の顔を一変した。
「正直な話、オレは愛人を作るのが趣味だ。現在、史上最高記録の99人を持っている。家庭教師だなんて、ただ彼らはオレを監視するための言い訳だ。お前の存在は邪魔なんだ。それに、オレは女に暴力を振るうのが日常茶飯事だ。分かったらさっさとお金を持ってどこかに去れ……」
イズルの脅かしに全く動じない、リカはスマホで減点を続ける。
「性格」、「ロジック」、「精神力」、「言葉遣い」、「気品」、「表情管理」など……あらゆる項目に厳しいコメントを書き込んだ。
「他人思いを騙っている利己主義の発言」
「論理的に自分の観点を説明できない、話をまとめる能力がない」「精神的に不安定、切れやすい」
「発言に一貫性がない」
「全身に矛盾だらけ」
「嘘が利かない時の悪あがきが醜い」
「被害妄想の可能性がある」……
25分後、息が詰まって、何も言えなくなったイズルに、リカはマイナス25000点のスマホ画面を見せた。
そして、宣言する。
「契約をした以上、私は契約通りにやる。今から荷物を取りにいく。夜21時前にあなたのところに到着する。その前に、コメントをよく読んでおいて、どうやって人生をやり直せばいいのか考えてみてください」
「点数とコメントは編集できるけど、パスワードと生体認証が必要。パスに私の指紋と目を設定した」
「不正などを考えないほうがいい。私が提示した条件によると、あなたが違約した場合、賠償金は月給の一万倍。あやしい企業とはいえ、それだけの金額を一介の家庭教師に出費したら、さすがCEOもまずいでしょう」
呆然とスマホを受けとったイズルは、確かに「絶望」という言葉の意味を実感した。