毎日のように、ジョーカーがクラリスの部屋を訪れるようになった。彼の訪問はいつも予告なし。まるで風のように、ふと気づけば部屋の中に立っているのだ。
「また来たの?」驚いて振り返ると、そこにはすでにジョーカーの姿が。軽やかな足音すら感じさせないその登場に、いつもクラリスの心臓は跳ね上がる。
「君がいると、自然と足がここに向かってしまうんだよ」ジョーカーは軽い口調で、甘く囁きながら彼女にぐっと顔を近づけた。その瞳には、隠しきれない魅惑的な輝きが宿っている。
クラリスは思わず目を逸らそうとするが、ジョーカーの瞳に捕らえられたまま、動けない。
クラリスは目の前に立つジョーカーを見上げた。かつての紳士的な態度はすっかり影を潜め、今や彼の瞳はまるで獲物を狙う猛獣のように鋭く光っている。もう、その本性を隠すつもりは微塵もないらしい。
彼の顔に浮かぶニヤリとした笑みが、さらにクラリスの心拍数を上げていく。
「会いたかったよ、クラリス。」
その低く甘い声が、まるで挑発するように耳元で響く。
「な、なんで毎日来るの…?」クラリスは顔を赤くして、なんとか平静を装おうとするが、彼の余裕に満ちた態度に心が乱される。
「本当は嬉しいんだろ?」ジョーカーは微笑みながら、クラリスの顎を軽く持ち上げた。冷たい指先が触れた瞬間、クラリスの胸は締め付けられるように痛くなる。
「嬉しいわけないでしょ!」クラリスは顔をそむけるが、心の中で(ちょっとは嬉しいかも…)とつぶやく自分がいた。
「君は、ほんと面白いな」ジョーカーは彼女の反応を楽しむように笑い、その笑顔が一層輝いて見えた。クラリスは思わず息を詰めるが、どうしても彼から目を逸らせない。心のどこかで、この危険な男に引き寄せられている自分を、意識してしまう。
だが次の瞬間、ジョーカーの笑みが妙に色っぽくなり、彼は一気にクラリスを押し倒そうと腕を伸ばしてきた。
「ちょっ!!」クラリスは驚きながらも、間一髪でジョーカーの手をかわした。
「な、なに!?」
「気づいたら行動するのが俺の流儀だ」と、彼は悪びれもせずに答え、いたずらっぽく片目をウインクする。彼の真剣なのか冗談なのか分からない態度に、クラリスはまた心臓が跳ねるように感じた。
「だ、だからって押し倒すことないでしょ!」クラリスは真っ赤な顔で抗議するが、そんな彼女の反応に、ジョーカーは満足そうに笑みを浮かべている。
「まぁ、急ぐ必要はない。長期戦でいくよ」ジョーカーは軽く肩をすくめ、まるで恋の駆け引きを楽しんでいるかのようにクラリスの手を取った。
クラリスは心の中で確信する。
「この男…チャラすぎる…!」
クラリスの本能は警告を鳴らし続けるが、どうしようもなく惹かれてしまう自分がいることに気づいてしまった。