「クラリス、明日は部屋から出るぞ」
この監禁生活にも徐々に慣れてきたころ、アルファンが、冷静な声でそう告げた。
「…?!?!」
言葉にならない声が、かろうじて口から漏れる。彼の瞳はいつものように冷静で、感情を読み取ることはできない。だが、その落ち着いた表情が逆に彼女の不安を掻き立てた。
「いや、実は私の父が城に戻ってきたのだ。それで、キミに会いたいとのことでな」
その一言が、クラリスの中にさらなる恐怖を生み出した。陛下が戻ってきた?自分に会いたい?その理由が思い当たらないまま、心臓がどんどん速く鼓動を刻む。
この城に閉じ込められていた自分が、陛下の目に触れるということは…?その可能性を想像するたびに、冷たい汗が背筋を伝う。ま…まさか…
( 今更、断罪を受けるとか、離縁を突きつけられるとか?! )
彼女の心は恐怖と疑念で乱れた。陛下からしたら、自分は得体の知れない花嫁、見ず知らずの存在に過ぎない。何も知らない自分が、果たしてこの場にふさわしい存在なのか?そんな疑念が頭をよぎるたびに、胸の不安が増幅していく。
( 嫌な予感しかしないよ… )
手は知らぬ間に服の裾をぎゅっと掴んでいた。心臓が痛いほど早く打ち、息が詰まりそうだ。