大広間には張り詰めた静寂が漂い、ラウレンツ陛下の重々しい声が響いた。
「イリス、お前は王国の民を欺き、虚言で城を混乱に陥れ、さらに我が息子アルファンを冒涜した罪により、断罪する。」
その宣告は、まるで空気を切り裂く刃のように大広間に響き渡り、周囲の者たちは息を呑んで身動き一つ取れなかった。緊張が肌を締めつけ、空気は重く感じられる。
アルファンは煮えたぎるような怒りと憎悪を込めた瞳でイリスを見据えていた。彼の視線は鋭い刃のように彼女を貫き、かつての信頼が崩れ去った代わりに、燃え盛る憎しみが心を支配していた。
「この罪により、お前には修道院行きを命じる。そこで余生をかけて罪を償うがよい。」
ラウレンツ陛下の言葉は冷酷かつ容赦なくイリスに下された。イリスは震える唇を噛みしめ、目を伏せて怒りを抑え込もうとしていたが、その瞳には燃え上がる憎悪の炎が揺らめいていた。
「あの女さえいなければ…全てがうまくいったはずだったのに…!」
低く呟かれたその言葉には激しい執念がにじんでいた。かつて完璧だと思っていた計画は、クラリスの介入で全てが崩壊してしまったのだ。
クラリスの登場が暴動を沈静化させ、イリスが引き起こそうとした騒乱はあっけなく終息を迎えた。その後すぐにイリスの罪が次々と明るみに出され、彼女は絶望的な状況に追い詰められている。
「こんなはずじゃなかった…!」
心の中で繰り返されるその言葉は、全てがクラリスのせいだと訴えていた。あの女さえいなければ、全ては思い通りに進み、自分は成功を収めていたはずだったのに。
彼女の鋭い視線が大広間をさまよい、クラリスの姿を探すが、そこには彼女の姿は見当たらなかった。
衛兵たちがイリスを力強く押さえつけ、無理やり彼女を連れ去ろうとする。嫉妬と恨みに歪んだ彼女の表情が扉の向こうへ消えていくと、重々しい扉がゆっくりと閉ざされ、その音が大広間に響き渡った。
「あの女だけは、決して許さない…!」
扉が閉ざされる寸前、イリスの最後の叫びがかすかにこだまする。
アルファンの拳は強く握りしめられ、関節が白くなるほど力がこもっていた。「お前がクラリスにしたこと、決して許さない…」
アルファンの心の中で渦巻く怒りは、イリスに対するかつての感情を遥かに超え、今や彼の魂すべてを燃え上がる憎悪が支配していた。
大広間には再び静寂が訪れ、ラウレンツ陛下のため息だけが響いた。
「はあ…私が城に不在の間に、まさかこんな事態が起こっていたとは…」陛下は深いため息をつきながら、頭を抱えた。
ラウレンツ陛下が一年間も城を空けていた理由は、王国にとって極めて重要な使命にあった。隣国との関係が緊張する中、陛下は戦争回避を目的とし、同盟を強化するために長期の外交旅に出ていたのだ。隣国との経済的結びつきを強化し、平和を維持するための交渉は困難を極め、時には命の危険も伴うものだった。
その努力がようやく実を結び、王国は一時の平穏を取り戻したが、その裏で城内では不穏な動きが起こっていた。陛下の不在をいいことに、イリスの野心が加速し、彼女の策謀が王国を揺るがすほどの事態に発展してしまったのだった。
「アルファン…そなたも大変だったな。よくこの困難を乗り越えた。こちらに」とラウレンツ陛下はアルファンを抱き寄せ、その腕の中に優しい父親の顔を見せた。先ほどの冷徹な姿とは一変し、親としての温かさが感じられる。
「それからリオネル、お前もよくやった」
陛下は部屋の隅に立つ男性を見つめた。「イリスの罪を暴いたのはお前だと聞いた!よくやった」
「当たり前ですよ、兄上の冤罪を晴らしたかったので」
リオネルは満面の笑みで答えたが、アルファンの目には疑念が浮かんでいた。
「兄弟仲が良くていいことだ」陛下は目を細めて言ったが、アルファンは冷たく自分の弟を見つめていた。