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第14話


クラリスは部屋に引きこもり、その日の光さえも拒むように、重いカーテンを閉め切っていた。外界との接触を絶ち、自らを薄暗い空間に閉じ込めたかった。部屋の中は陰鬱で、時計の針が刻む音だけが静寂の中で響いている。


ベッドに横たわりながら、無表情で天井を見つめていた。時間の感覚はとうに失われ、日が昇り、沈むリズムすらも無意味なものと化していた。


心の中には、深い闇が広がっていた。その闇は彼女の全てを覆い尽くし、温かさも、希望も、すべてを飲み込んでいた。感情の輪郭はぼやけ、かつては彼女を生かす力となっていたすべての感覚が鈍く、遠く感じられるようになっていた。


時折、イリスの声が廊下の向こうから聞こえてくることがあった。扉の向こうで名前を呼ぶ声に、少しばかりの罪悪感が心に浮かんだが、その感情さえも薄れ、すぐに闇の中へと沈んでいった。イリスの存在に触れることすら、今の自分には負担でしかなかった。外の世界で何が起こっているのか、誰が何を考えているのか、そんなことはもうどうでもよかった。


部屋の中は荒れ果てていた。テーブルの上には、飲みかけの紅茶が冷たくなり、そのまま放置されている。床には読みかけの本が投げ出され、そのページが風もないのにふわりとめくれた。しかし、それらを片付ける気力など、今は微塵も残っていなかった。


食事も運ばれてはきたが、ほとんど手をつけることなく、ただ放置することが増えていった。体はまるで鉛のように重く、ベッドから起き上がることすら億劫だった。


アルファンへのかつての情熱も、今ではただの冷たい灰となり、心の奥底に沈んでいた。「救いたい」と思ったことが、どれほど愚かだったのか、その後悔が心を蝕んでいた。


彼女は、自分には何もわかっていなかったのだと痛感していた。もしも彼を好きにならなければ、この孤独や胸が張り裂けそうな苦しみを感じることもなかっただろう。


「どうでもいい…」その言葉を呟く自分の声すらも、どこか遠くで響いているかのように、虚ろで無力だった。


今の彼女は、ただ存在しているだけの空っぽな存在に過ぎなかった。生きる意味も価値も見失い、すべてを諦めた私にとって、時間がただ過ぎていくのを見守ること以外に何もできなかった。


心の中で何かが壊れたことを感じながらも、それをどうすることもできず、感情が枯れ果てて何も感じられなくなっていた。ただ、静かな絶望に包まれながら、無感動にその暗い部屋の中で過ごしていた。


疲れ切ってしまったのだ。すべてに。もう何もかも捨てて、このままどこか遠くへ逃げ出したい、楽になりたい――そんな気持ちが、日々彼女の心を支配していった。


「どこか遠くへ逃げたい。」ふと、吐息混じりに呟いた。けれど、そんな願望すらも行動に移す力は残っていなかった。ただ、月日が過ぎていくのを見つめることしかできなかった。


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