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第5話



教室の隅に静かに座る私は、いつものようにおとなしく、自分の世界に閉じこもっていた。


周囲のクラスメイトたちの雑談や笑い声が賑わっているけれど、その音は私には遠くから響くようで、まるで自分だけが異次元に隔離されているかのようだった。


今日もまた、自分の存在が周囲の空気に溶け込んでいることを痛感する。


放課後の掃除の時間になると、クラスメイトたちはその場に集まり、いつものように日和(ひより)を名指しで選んだ。いつもなら、彼女はおずおずと頷き、掃除道具を手に取ったが、今日は何かが違った。


「私はやらない!」と、日和は震える声で初めて反抗の意志を示しのだ。目は必死に睨みつけるものの、足は震え、心臓は激しく打っていた。それでも、たった数日だがアルファン推しとして過ごしてきた中で、私の中で何かが確実に変わりつつあった。


「ねぇ、あなたごときが何を生意気なこと言ってるの?」一人の女子生徒が冷笑を浮かべて言う。


その言葉に、一瞬怯んだが、心の奥底から沸き上がる決意が私を突き動かした。「もうこれからはあなた達の言いなりにはならない!」


声は震えるが、もう負けない!こんな私から変わりたい!脳裏にはアルファン様の姿が浮かび、私を支えてくれる。そう、私はもう1人じゃないのだ。


「えらそうに!」その瞬間、突然誰かが彼女を押しやった。力強く押された日和は、驚きと恐怖に包まれ、無力感が体を支配した。


よろけながら背後にある階段を転げ落ち、にぶい痛みを感じる。


「きゃあああ!」周りから悲鳴が上がり、混乱と焦燥が広がる中で、美来の叫び声が遠くからぼんやりと聞こえてきた。「ひより!ひより!」美来の声は涙に濡れ、心に深く刺さった。美来の号泣する姿が目に浮かび、その悲しみに対して無力さを感じた。



「ああ、こんな形で、情けなく私の人生は終わるのか。」


深い虚しさと悲しみが胸を締めつけ、頬を涙が静かに伝う。ぼんやりとした意識の中で、自分の無力さを呪いながら、意識が次第に遠ざかっていくのを感じた。世界が回り、全てが深い暗闇へと沈んでいく。


完全に意識が閉じるその瞬間、クラリスは最後に「アルファン様…」と、彼の名前を微かに呟きながら、静かに意識を手放した。


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