「アンナ殿、アンナ殿」
「ん…?」
メイに揺さぶられ、目を開ける。
「もう着きますよ。ほら、ヴェイングロリアス領都シンビです」
起き上がり外を見る。
ぼんやりしていた視界が徐々にハッキリしていき、懐かしい故郷が姿を現す。
「初めて来ましたが、大きな街ですねー…」
塀の向こうに覗く背の高い建物群を仰ぎ、メイが感嘆の声を漏らす。
「そんな良いもんでもねぇよ、ウチなりの見栄だ」
その内に関所へ着くと、兵士に引き留められる。
すかさずアンナが顔を出し、懐から家紋の入ったペンダントを見せる。
「私だ、通してくれないか」
「あ、アンナお嬢!?お久しぶりです!」
「ああ、すまない急ぎなんだ」
「分かりました、お通りください!」
馬車が動き出すと、外の兵士は皆頭を垂れる。
「はえー…本当にお姫様なんスね」
思わずマンジュがそう漏らす。
「そんな大それたもんじゃねぇさ、コイツらにとっちゃ近所の悪ガキみてぇなもんだ」
「でも普通、あそこまで顔パスしないっスよ。変装の可能性もあるし、せめて馬車の中くらい検めるっス」
「それだけ民から信用があるか、見間違えなどありえないほど民と交わっているか、どちらにせよ良い統治の賜物ですね!」
メイが笑い掛けると、アンナはバツが悪そうに外を向いた。
暫く進むと領城の前に着く。
既にギルドから報せが入っていた為か、門前で数人が待機していた。
「お嬢、お久しぶりですな」
「ああテンショウ」
兵士たちの先頭で白髭を蓄えた男が頭を垂れる。
「後ろの方々は?」
「今回の臨時パーティメンバーだ」
「それはそれは…」
髭を揺らしながら前へ出てくる。
「ワシはテンショウ、ヴェイングロリアスの兵団長をしております。以後お見知り置きを」
シュテンを一瞥して、メイが前に出る。
「我々はパーティ名をオニ党といいます。こちらがリーダーのシュテン、そっちはマンジュ、私はメイと申します、よろしくお願いします」
メイが頭を下げると、マンジュも会釈したので、シュテンも倣う。
「テンショウ、親父は?」
アンナがそう言うのに対し、テンショウは頷いた。
「皆様中へ、領主がお待ちです」