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第十六話/領都シンビへ

「アンナ殿、アンナ殿」

「ん…?」

メイに揺さぶられ、目を開ける。

「もう着きますよ。ほら、ヴェイングロリアス領都シンビです」

起き上がり外を見る。

ぼんやりしていた視界が徐々にハッキリしていき、懐かしい故郷が姿を現す。

「初めて来ましたが、大きな街ですねー…」

塀の向こうに覗く背の高い建物群を仰ぎ、メイが感嘆の声を漏らす。

「そんな良いもんでもねぇよ、ウチなりの見栄だ」

その内に関所へ着くと、兵士に引き留められる。

すかさずアンナが顔を出し、懐から家紋の入ったペンダントを見せる。

「私だ、通してくれないか」

「あ、アンナお嬢!?お久しぶりです!」

「ああ、すまない急ぎなんだ」

「分かりました、お通りください!」

馬車が動き出すと、外の兵士は皆頭を垂れる。

「はえー…本当にお姫様なんスね」

思わずマンジュがそう漏らす。

「そんな大それたもんじゃねぇさ、コイツらにとっちゃ近所の悪ガキみてぇなもんだ」

「でも普通、あそこまで顔パスしないっスよ。変装の可能性もあるし、せめて馬車の中くらい検めるっス」

「それだけ民から信用があるか、見間違えなどありえないほど民と交わっているか、どちらにせよ良い統治の賜物ですね!」

メイが笑い掛けると、アンナはバツが悪そうに外を向いた。


暫く進むと領城の前に着く。

既にギルドから報せが入っていた為か、門前で数人が待機していた。

「お嬢、お久しぶりですな」

「ああテンショウ」

兵士たちの先頭で白髭を蓄えた男が頭を垂れる。

「後ろの方々は?」

「今回の臨時パーティメンバーだ」

「それはそれは…」

髭を揺らしながら前へ出てくる。

「ワシはテンショウ、ヴェイングロリアスの兵団長をしております。以後お見知り置きを」

シュテンを一瞥して、メイが前に出る。

「我々はパーティ名をオニ党といいます。こちらがリーダーのシュテン、そっちはマンジュ、私はメイと申します、よろしくお願いします」

メイが頭を下げると、マンジュも会釈したので、シュテンも倣う。

「テンショウ、親父は?」

アンナがそう言うのに対し、テンショウは頷いた。

「皆様中へ、領主がお待ちです」

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