花火大会へは電車に乗って行く。
そのため、最寄り駅が同じ春陽、雪愛、悠介は
雪愛は以前水族館デートの時、待ち合わせ
雪愛は、よかったと一つ息を
春陽は駅へと向かっていた。
あらためてになるが、春陽が学校において、前髪で目元を
だから、それでも関わってきたような、今日一緒に花火大会へ行くことになったメンバー相手には一つ目の理由が無くなる。
残るは自分が自分の顔を嫌いということだが、それは春陽自身が自分で決めた、雪愛と出かける時はちゃんとする、という意思を
自分の感情よりも優先すると
春陽にとってはただそれだけのことだが、その結果、今日の春陽は、水族館デートの時のように人目を
春陽が改札へと
静かに
一瞬足が止まる春陽。それは雪愛に見
「雪愛。待たせてごめん」
その声に雪愛の表情がパッと明るくなる。
「春陽くん!…ううん、私もさっき来たところだから」
誰の声かは聞こえた瞬間にわかった。雪愛は声の方へと顔を向け、春陽を目にして、一瞬その目を大きくした。
今日はクラスメイトが何人もいるため、学校の時と同じだと勝手に思っていたからだ。
だが、次の瞬間には笑みを浮かべていた。
理由まではわからなくても、春陽のそういった変化はいいことなのだろうと思うから。
春陽はあらためて雪愛に目を向ける。
雪愛は白ベースにピンク
そんな雪愛は、可愛さと大人っぽさが同居し、とても
「浴衣、よく似合ってる。髪も大人っぽくて。すごく綺麗だ」
雪愛相手だと春陽は
しかし、自分の言葉に
「っ、ありがとう…」
ストレートな
そんなふわふわした
「よー。悪い悪い。俺が最後になっちまったみたいだな」
その声の主に春陽はすぐに気づき、視線を向ける。
「
「約束の時間には間に合ってるだろうが。白月は浴衣なんだな。やっぱ浴衣って夏って感じがしていいな。俺らも着ればよかったか?」
「ふふっ、ありがとう」
悠介が来たことで、春陽と雪愛の間にできていたふわふわした雰囲気は
「俺は浴衣なんて持ってない」
「それは俺もだよ。だから買えばよかったかって意味で言ってんの」
悠介が春陽にジト目を向ける。
「二人とも浴衣似合いそうだね」
そこに雪愛が素直な言葉を
「……次、
「くくっ、そうかよ」
今のやり取りだけでも春陽が雪愛に弱いことが
春陽の
球技大会の頃からその
そんなところも笑いがこみ上げる理由だ。ただ、他の
春陽達が現地に辿り着くと、そこは人でごった返していた。
グループメッセージで現在地の確認をすると、すでに春陽達以外は集まっているようで、その正確な場所を送ってもらった。
駅の出口を抜けたすぐ左手側、そこに
浴衣を着て早く歩くことができない雪愛が人とぶつかることを
そうして、出口を抜け左手を見れば、和樹の頭が見えた。
近づきながら手を上げ、声をかける悠介。
「よー和樹。みんなも早いな!」
和樹の身長が一番高く目立つため、和樹の名を呼ぶ。
近づけば
「お、来たな」
そんな悠介の声に最初に気づいたのも和樹だった。
和樹の言葉に、皆和樹が視線を向けている方向に
そうして、辿り着いた悠介、雪愛、そして春陽を見て、皆目を大きくした。
「「「「「「っ!?」」」」」」
ちなみに、和樹、隆弥、蒼真はラフな私服姿だが、女子は全員浴衣だ。
瑞穂は
皆浴衣に合わせて髪をアップにしたり、髪飾りを付けたりしており、とてもよく似合っている。
「待たせてわりーな、って、おお、女子全員浴衣じゃん。野郎とのギャップがすげーな」
「待たせちゃってごめんなさい」
「悪かったな」
三人とも待たせてしまったと
この場に悠介と雪愛と一緒に
しかし、それがわかっていても理解が追い付かない。
瑞穂と和樹はまさかそう来るとは思っていなかったと驚いたが、以前に見ている分
「風見!あんた良かったの!?」
「良かったのと言われても……。良いも悪いもないんだが」
それはそうだろう。誰かに強制された訳でもないし、
そこに他の皆も復活したが、先に声を発したのは女性陣だった。
「ハルさん、だよねー?」
「あのカフェの……」
「ん?ああ、二人ともフェリーチェに来てたもんな。あそこでバイトしてるんだ俺」
未来は雪愛へと視線を向ける。
雪愛はその視線に気づき、
「そっかー、…そっかー」
それで未来も確信した。
風見春陽があのハルだとわかっただけで、雪愛の話す春陽と自身の持つイメージのギャップが急速に解消されていくから不思議だ。
香奈も未来と似たような考えに至っていた。
それと同時に、未来は、四人でフェリーチェに行った日にハルに恋愛感情はないとはっきり否定できて本当によかったと
雪愛の恋の
けれど、ハルについてあんな話になった時点で雪愛を傷つけてしまっていたかもしれない。そう考えると胸が
本当に誰と誰がどう
未来は、もう絶対にしないとあらためて心に決めるのだった。
蒼真と隆弥からも言葉が投げられる。
「おま、学校と全然違うじゃないか!」
「本当だよ。別人みたいだ!」
「人と関わりたくなかったからな。けどお前ら相手にそれはもう意味がないだろ」
だから気にするな、学校では今まで通りだ、と言う春陽に、もっと早くに教えろ、水
男性陣三人のやり取りに悠介と和樹は視線を
すると、悠介が空気を変えるように言う。
「女子達みんな
下駄で早く歩くのは難しいため、ゆっくり移動しなければならない。
花火は日が完全に落ちてからで、屋台の並ぶ通りを抜けて、
それまでの数時間をどう過ごすかだが、悠介の言葉に皆同意し、一行は屋台を見て回ることにした。
春陽達が集まっていたところから少し離れたところに、ガラの悪い集団が
そんな集団の中で、
そしてその青年の目は真っ直ぐ雪愛に向いていた。
「白月さん……?」
「なんで、なんで、なんで、なんで……。白月さんは男なんかと一緒にいたら
その目は気弱そうな見た目とは違い、その場にいる誰よりも
「佐伯に新条、安田、高橋。もう一人一緒にいた奴は誰だよ!?………あのメンツ……もしかして、あれ、風見なのか?」
もう一人いた見
青年は自分の言葉に目を大きくする。
それが彼の認識で、
それが彼の中での事実だった。
そこに仲間の一人が声をかける。
「おい、どこ見てんだよ?」
そう言って、青年の目線を辿る。
「お前、あの美人見てたのか?はははっ、お前みたいなやつが相手にされるわけねえだろ。しかも男と一緒に来てるじゃねえか」
雪愛へと行きついた仲間の男は青年を
「んなキモイことしてねえでさっさと行くぞ。
最後だけ仲間の男の目が
「だ、大丈夫。ちゃんと持ってきたから」
慌てて答える青年。ここで言葉を間違えれば
その言葉に満足したのか、青年の肩を抱きながら仲間の男が言う。
「そうか、そうか。さすがだぜ。お前みたいに一人
「う、うん……」
青年は必死に笑みを作って答えるが、その顔は引き
だが、そんなことには
そこでようやく一息
「白月さんのためにも、あのゴミを
青年が何をするつもりなのか、準備とは何なのか、それはまだ誰にもわからない。