放課後。
「
悠介は時々フェリーチェに来る。それは中学の頃からで、
麻理がコーヒーを出してくれることも大きいだろう。
わかったと春陽が答え、二人で学校を出てフェリーチェへと向かった。
「いらっしゃい――ってあら悠介」
「こんちはっす。麻理さん」
悠介はカウンター席の
今は裏から入り、着替えているところだろう。
「はい、コーヒー」
「ありがとうございます。――やっぱ
「ふふっ。ありがと。今日もバイト?」
「そうです」
「あんたも頑張るわねー」
「いやー、俺はそれほどでも。そういうのはあいつに言ってやってください」
あいつとはもちろん春陽のことだ。
そんな話をしていると春陽がバックヤードから出てきた。
「お疲れ様です、麻理さん」
「今日もいいわね!」
麻理は春陽の方へ体を向けるとぐっと親指を立てた。
「…………」
そんな麻理には何も返さず春陽はそのまま働き始めた。
今日は洗い物が
春陽が働き始めたのを確認し、麻理は悠介に気になっていたことを聞いた。
春陽に聞いても特に何もないとしか返ってこなかったのだ。
「ねえ、悠介。最近学校でハルに変わったことってない?」
「?特にないと思いますけど。何かあったんですか?」
「んーそうねえ。…例えば
コーヒーに口をつけようとした悠介は
「麻理さん白月を知ってるんですか!?」
「まあちょっとね。それでどう?」
「いや、ハルどころか白月が男に自分から話しかけるのなんて見たことないっすね」
この店では悠介も春陽のことをハルと呼ぶようにしている。
春陽のスタンスを知っているため、
「そうなの?」
麻理が驚いた顔で確認すると、はい、と
「……とてもそんな風には見えなかったけどなぁ」
麻理は先日の雪愛の様子を思い出して
雪愛が春陽のことを聞いてきた時などは見てて
麻理と悠介がそんな話をしていると、扉が開き、今まさに話していた人物、雪愛が入ってきた。
「!?あら!雪愛ちゃん!いらっしゃい!」
「麻理さん、こんにちは。先日はありがとうございました」
「えっ!?白月!?」
「あなたは…佐伯くん?」
麻理は気にしなくていいのよ、と言うと、どうぞ、座ってと悠介の
「お!覚えててくれたんだな。サンキュー。白月もここに来てたんだな」
「ええ。この前初めて来たの」
麻理が何か飲むか聞くと、雪愛はカフェラテを注文した。
この間飲んだカフェラテが本当に美味しかったのだ。
はーい、ちょっと待っててねと言って麻理は
雪愛は麻理に何か話があるのか、チラチラと麻理の
麻理がお待たせと言ってカフェラテを雪愛の前に置くまでそれほど時間は経っていないが、悠介にとっては
雪愛はありがとうございます、とお礼を言い、一度カップに口をつけると、おいしいと呟き微笑んだ。
そして、
悠介の事は完全に居ない者
「あの、麻理さん。ハルくんのことなんですが……。二日間探したんですが学校で見つけられませんでした…」
「っ!?」
「そっかぁ。それは残念だったわね」
悠介は
「ちょ、ちょっと待って!白月はハルがウチの学校にいること知ってんの!?」
復活するのも早かった悠介が雪愛に確認を取る。ハルくん呼びも気にはなったが今はこっちだ。
「…ええ。この間麻理さんに教えてもらって、ハルくんも認めてたから――――って、待って。佐伯くんも知ってるの!?」
そんな悠介に対し、
「知ってるっていうか…えーと…」
悠介は何と言ったらいいかわからない。雪愛がどこまで知っているのか、どういう理由で探しているのか、何もかもわからない中で
そんな二人を見て、はっきりと苦笑を浮かべた麻理が助け船を出す。
「ねえ、雪愛ちゃん。もし良かったら、この間のこと悠介に話してもいいかしら。こいつ、ハルとも結構長い付き合いでね。もしかしたら
麻理は、雪愛に向けていた顔を最後だけ悠介に向けて言った。
麻理の言葉通りなら、悠介はハルとかなり
「……はい」
雪愛の同意を得た麻理は先日のことを
雪愛も麻理の話に当時の状況や自分から見た春陽のこと、帰りの時の話などを
悠介は春陽が雪愛を助けたと聞いたときも驚いたが、あの雪愛が男である春陽に
ちなみに、当然のことだが、こんな話をしながらも、麻理はきちんとお客さんが入ってくれば声をかけるし、注文が入ればコーヒーを
しかし、春陽にとっては、自分に関わってこない分には問題ないと
まさか自分の話で
「だからこの二日間、二年の教室を全部見て回ったんだけど見つからなくて……」
雪愛が最後にそう
「なるほど……そんなことがあったんすね…」
そう言った悠介の内側は大変なことになっていた。
(なんだその展開は!?あの春陽が女の子を助けた!?しかもそれが白月で!?白月はなんか春陽のことめっちゃ気になってるし!ってかこんな白月見たことあるやついんの!?それでも春陽はブレずに
自分で自分にツッコんでしまうほどだ。
「そうなの。それで悠介。何かいい案ない?」
そんな悠介の内心を知ってか知らずか、麻理からかなりの
いい案と言われても悠介だって
麻理がいったいどういうつもりなのか、それがわからなければどうにもならない。
悠介は春陽をチラッと見てから
「麻理さんは
これは確認だ。春陽が嫌がっていることをわかった上で雪愛に知られてしまっていいのか、と。
麻理も悠介が何を言いたいかはもちろんわかっている。
麻理は春陽のことを
春陽のことも雪愛のことも考えてしまって、まどろっこしいことをしていると麻理自身
けれど、それでも――――。
「ええ。もちろんよ」
悠介は、麻理の返事を聞いて、わかりましたと答えてからあらためて考えた。
そして、かなりの
「あの、麻理さん。今年も今度の連休のやつってやるんですよね?」
「ん?もちろんやるつもりよ。この週末にでも確認しようと思ってたけど悠介と
悠介が確認したのは、春陽がここに住んでいた頃から始まったもののことだ。
悠介自身、中学二年の時から参加させてもらっている。
ちなみに楓花とは悠介の二つ下の妹のことだ。悠介に現在彼女はいない。
楓花は悠介が中三、楓花が中一の時から参加している。
佐伯家の
春陽の
「それはもちろん。俺は参加で。風花も参加だとは思いますけど一応確認しておきます。それで……白月も一緒ってのはどうですか?」
「!ああ!そっか。そういうのもアリね!」
悠介の提案に
雪愛だけが取り残され「なんのことですか?」と
「ねえ雪愛ちゃん。五月四日って何か予定あったりするかしら?」
五月四日は連休中の一日だ。もし雪愛に予定があればそもそも
「いえ、特にはありませんけど……」
雪愛と沙織は五月の連休に出かけることは
「そうなの!それじゃあ―――――」
そこから麻理はその日に何を予定しているかを話した。
話を聞いていくにつれ、雪愛の目が
「―――という感じなんだけど。雪愛ちゃんも一緒にどう?」
「ぜひ!行きたいです!」
その反応に麻理は満足そうにし、悠介は本当にこれがあの白月雪愛かと
そして、それならば連絡が取れた方がいいということになり、雪愛は麻理と連絡先を
ここで悠介は交換しなくていいのか、というと、雪愛の連絡先自体は始業式の日に
なので、当然『風見春陽』の連絡先も雪愛は知っているのだが……。
麻理と連絡先を交換した雪愛は早くハルとも連絡先を交換したいと強く思ったのだった。
その後も、しばらく話していたが、悠介がそろそろバイトだということでバイト先に向かい、雪愛もいい時間だと家に帰ることにしたのだった。
こうして春陽の知らないところで