ジスの姿はまた犬に戻る。
小さくて短足の毛の短い犬。
ありふれた姿の。
特別じゃない。
島にもたくさんいる犬だ。
カトリーヌの前をちょこちょこ歩いている。
『見たことない奴だったが誰だ?』
ジスはカトリーヌの頭に直接語りかける。
テレパシーだ。
町の人がジスがしゃべるのを見てしまうと騒ぎになるのでテレパシーで会話をする。
『問題です。さて誰でしょうか?』
『謎解きか? オレはそのての遊びは苦手だ。早々にお手上げだ』
ふふっとカトリーヌは笑った。
『まあ、私も直接は会ったことはないのだけれど。噂はよく聞いてた』
石畳をジスの鼻を頼りに歩くと島の村外れのお菓子の工房に着いた。
「これなくして困っているんじゃないかしら」