中学2年生の勇斗は、クラスの人気者。毎日、友だちとワイワイガヤガヤ、「楽しいな〜」
そんな勇斗は中学2年生にして、競馬に詳しい。大の競馬好きのお父さんから、話を聞いたり、お父さんの競馬新聞を読んでいるうちに自然と詳しくなった。今では、お父さんより予想が当たるほどだ。当然、いつも赤鉛筆を耳に挟んでいる(ほんまかいな)。
今日は仲良しの山田くん、林くん、佐々木さんに思い切って競馬の話をしてみた。「そんなの興味ないよ〜」と言われると思っていたが、「もっと教えて」と皆んな興味津々で、大盛り上がり。
そのうち林くんが、「クラスの皆んなも誘って、賭け競馬をしようよ。一人、100円づつ出してあって、1等を予想して当たった人で山分けで」。山田くんも佐々木さんも「面白そう。やろう、やろう」と決定。結局、クラスのほとんどが参加することに。自然と、勇斗がこの賭け競馬を仕切ることになる。
それから、毎週月曜日は朝から「当たったー」「外れたー」と大騒ぎ。勇斗のクラスメイトは「チンジャオロースーか、俺好きやねん。ええ名前や。この馬にしよう」とか適当に決めて賭けている。結局、トータルでは勇斗が儲かって「ええ小遣い稼ぎや」とにんまり。
3ヶ月が過ぎた頃、突然、鬼の体育教師の佃先生が教室にやって来た。いつも竹刀を持っている(ちなみに実際には使用しません)。「このクラスで賭け競馬をやっているやろ!参加している者は全員、放課後、体育館に集まること!」
佃先生が教室を出ていったあと、皆んな顔が真っ青に。「どうしよう」「大変なことになってもた」「誰がバラしたんや」と犯人探しも始まる始末。そんな中、山田くんが「皆んな冷静に。こうなったら、とりあえず正直に体育館に行くしかないやろ」
さて、体育館に集まった皆んな、ドキドキ、オドオド。そこに佃先生が登場し「皆んな、目をつぶれ!絶対に開けるな!」そして「賭け競馬の首謀者は手を挙げろ」
勇斗(心の声)「え〜!首謀者は俺やん。めちゃくちゃ怒られるんやな。親が呼ばれるやろか。ひょっとしたら退学か!」頭の中が、ぐるぐるぐるぐる。「でも俺が手を挙げんと、どうにもならないぞ。挙げるしかない」
覚悟を決めて、えい、やーと手を挙げる。シーンとした時間が過ぎる。勇斗には永遠の時間に感じた。
すると、佃先生が「手を下げてよし。二度としてはあかんぞ。次やったら許さん。それでは、解散」と言って体育館を出ていった。
なにもなかった。きょとんとして目を開けた勇斗「どういうことや」。山田くん、林くん、佐々木さんも、クラスの皆んなもポカーンとしてる。
そのころ、佃先生は職員室に向かいながら「首謀者は競馬に詳しいはずや。こっそり、次のレースの予想を聞きたかったのに4人も手を挙げるとは、誰に聞いたらよいか分からん。それにしてもあの4人の友情は確かやな」とちょっと嬉しそうでした。