「ん。ユキ。ナユカ。立って待ってて」
と、ヒカリさんに言われたので私たちは席から立ち上がりその場で待機する。
「会場カスタム起動。新規空間を作成」
《承認。仮想空間をチャンネル6に生成します》
アキアカネさんが何かやってるのだが、私にはよく分からない。そんな私の隣にユキがいるのだが、ユキは私を見かねて教えてくれた。
「普段闘技場は1会場につき5試合まで同時進行できるんだけど、アキアカネとか他の「実況」は稼働状況を見て同時進行数を増やすことができるんだ〜。今は新しくチャンネルを作った瞬間だね〜」
「へ〜」
初めてそんなゲームの情報を知ったよ。ちなみに後でユキに詳しく説明してもらうと、プライベートなどで部屋を作ってバトルするカスタムバトルは一般のプレイヤーでも作り放題らしい。
あくまで、ランキングバトルだけそういった仕組みのようだ。試合開始まで少し待機時間があるのもこれが理由。その調整なんかもアキアカネさんの「実況」の仕事なんだとか。
実況だけが仕事じゃないんだね…?
「チャンネル6を明日の舞台用のセットに変更」
《実行。完了しました》
「ここにいる4人をチャンネル6に入室」
アキアカネさんがそういうと、さっきまでいた部屋から、今度はいつもとはちょっとだけ雰囲気の違う闘技場のバトルステージに移動していた。
「ここが明日、ナユカさんとユキさんの舞う会場です」
「お〜、なんかほんとにアイドルみたいだね〜」
「ほんとに。アイドル」
バトルステージは見るも無惨に、舞台のあちこちにさらにコンサート会場のようなライトや機材が置いてある。
現代にはそんな機材は必要ではないはずだが、ライブ感を出すためにわざと機材を並べているみたい。上には闘技場の天井があるだけで普段と変わらないから、空を飛んだりしても邪魔になることはない親切設計だ。
「とりあえず、前みたいに技を発動してみてくれませんか?」
「ユキは。歌う?」
ということなので、私たちは一応装備をバトル用の服に変更。
「私はどうしようか〜。ナユカみたいに歌える自信がないんだよね〜」
歌詞とかは一緒に作った
「〔歌唱〕や〔効果音〕とかのスキルを持ってないしね〜」
「あ、そっか」
確かにそこら辺のスキルないと歌ってもこの会場中に響かせることができないかも。
「ユキさんはナユカさんの歌う「会場を魅せる」感じの弾幕でも張りますか?」
「そうだね〜。1回ナユカにリハーサルみたいにしてもらって〜、それに合わせる感じで弾幕飛ばそうかな〜?」
と、なんだかんだと細かい内容も決まっていく。
「あ、そうでした。ナユカさんにはこれを。上から渡して欲しいと言われていまして、どうぞ受け取ってください」
《アイテム・RBGメインテーマ音源パート別カスタマイズ機能 が譲渡されました》
お!おおーー!!
これ公式音源だーー!!しかもご丁寧にそれぞれのパートや楽器別に分けてある!!
試しに流してみよー。
[魔法陣1:〔効果音〕〔歌唱〕]
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スキル:効果音
カテゴリー:音響系
ランク:白
発動:アクティブ
概要:好きな効果音を鳴らせる。外部コンテンツや、〔録音〕の使用も可能。
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スキル:歌唱
カテゴリー:音響系
ランク:緑
発動:パッシブ
概要:〔歌唱〕時、自身の魅力値に上昇補正。
ーーーー
《♪〜》
おー!!便利!!
「これでその場で楽器の音並べなくて済むー!!」
「え?ちょっと待って!?どういうこと?」
ん?
「え?いや、これでいちいち音楽作って〔効果音〕として魔法陣から飛ばさなくていいなと…」
…。
ん?
「ごめん。今までその場で楽器の音を1音1音並べてたの?」
「え?うん、そうだよ?」
「え?全部?」
「全部」
え?なんかおかしいこと言ったかな?
「ウソン…。普通の人間にはできそうにないんだけど?」
「いや?そんなことないよ?音を鳴らすっていっても、その音を頭の中でイメージすればいいからできるよ?」
「ん。非常識」
ヒカリさんがストレートに悪口言ってきた!!
「それを歌いながらやってたの?」
「うん。その代わり色んな音を同時にイメージするのに慣れてなくて動けなくなっちゃうんだけど…」
「ナユカ〜、問題はそこじゃないんだよ〜」
呆れた様子のみんなはほっといて。この後、しっかりリハーサルしてユキと連携の取り方を練習しました。
練習が終わった頃にはもう夕方になっていたので今日はもうログアウトし、ユキは現実の方で自分の家に帰っていった。
*>>三人称視点
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報告資料
姫様に新たな「力」の可能性が発見されました。
・記憶力の強化。
・音に対しての分析能力の強化。
・マルチタスクの強化。
詳しくは、勇人様の帰宅時にご報告致します。
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「ナユカの花がさらに予想が付けにくくなったな」
「あなたは何だと思ってるのー?」
先程ナビィから送られてきたデータを見ながら、勇人は1人そう呟いた。
「それがよく分からない。瞳の色は赤。だから赤い花なのは間違いないのだが…。やっぱり総合的に能力が向上しているのだろうか」
「赤ねー。始祖様もどちらかと言うと赤…。赤単色なのは始祖様だけなのよねー」
「始祖様の花はなんだったんだ?」
「❨ワイルドストロベリー❩よー」
「果物も有りなのか?」
「あまりいなかったけどー。❨ユズ❩や❨ビワ❩なんて事例もあったらしいわー。あと❨ジンジャー❩ねー」
「はぁ、選択肢が増えたな…」
「まだナユカが単色だと決まったわけじゃないしー」
「今後出てくると?」
「混色の場合は好きな物やー、好みの服の色なんかにでる場合もあるわねー。発見に時間がかかるー…始祖様にお目通り願えたら正確な情報が分かるのだけど…。今は無理だから」
「わかった。今後もユキとナビィにナユカを任せるとしよう」