*>>三人称視点
「夜遅くに済まないね」
「いえ、こちらも勇人さんに許可頂かないといけないことがありましたので」
ここにはゆきと那由花の父、勇人がいる。
現在時刻は夜遅く、那由花は花恋と寝ている。
深夜に、2人はリビングにて
「まあ、立ち話はなんだ。コーヒーを入れよう。椅子に座っててくれ」
「はい」
「…、それと。口調は楽なようにしてくれて構わないよ。そっちの方が君らしいからね」
…
「は〜い」
しばらくして、ゆきの前にはコーヒーと少しだけだがクッキーが用意された。ほのかに甘い香りと小麦の香りの両方が部屋に広がる。
ちなみに歯磨きの心配はしなくていい。なんせ今の時代。口の中を一瞬で綺麗にしてくれる便利な道具など。そんな物が世の中に溢れている。
体重?そこら辺も調節はお手の物だ。
閑話休憩
「さて、那由花はあれからどうかな。一応、ナビィからの報告は受けているが、ゆきから見た感じだな」
「那由花の様子に変化はあまりないね〜。たぶん、自分じゃその身体的な変化に気づいていないと思う」
「なるほどな。確かに自分では瞳の変化には気づけないだろう」
那由花は普通の人と違う。
「ゲームの中だと基本バトルの時、集中するなら瞳の色が変わるって技を使ってる。って感じでごまかせていますよ〜?」
「確かに、そんなことも聞いている。だがなにかの拍子にバレるリスクがないかな?」
勇人は自分で用意したコーヒーを1口含み、香りを楽しむ。ほろ苦いブラックの香りは疲れた体をほぐすようだ。
「それも、現時点ではないと思いますね〜。発動してるのは、バトルの途中。相手の攻撃を避けるために「集中力」を無意識でかき集めてる感じです」
目が赤くなる。それは通常人体には絶対起こりえないことだ。が、しかし那由花は瞳を赤く変色させていた。
「ナビィによると、身体的変化は「集中力」「反射神経」「観察力」の3つが上昇しているらしい」
「変化部位が瞳なのと関係があるのかな〜?」
ゆきはコーヒーにミルクと砂糖を入れかき混ぜ。まだコーヒーには手をつけない。立ち上がる湯気を少し吹きながら冷めるのを待つようだ。
「あるかもしれないが、変化部位に関してはバラバラらしい。歴代は多くは髪色、次いで瞳が変化していたらしい。花恋の場合は髪色だな」
「なるほど〜」
花恋は髪色が変わる。と聞いたはいいもののゆきは今まで黒色の花恋しか見た事がない。
「さらに、那由花のように限定的に色が変わるのではなく、大体は生まれた時からその髪色だとか、体のどこかしらに反応が見れたというのも、トビィからの情報だ」
『例外もありますけどね』
どこからともなく声が聞こえてきた。
「トビィか?」
『はい』
ゆきはクッキーを手に取り、それを食べながら考えていた。
「では花恋さんの場合は〜?見た感じ髪色に違和感はありまんよ〜?」
『花恋様は「黒」です』
「なるほど〜、そりゃ〜違和感ないね」
黒色はそもそもこの地球では目立たない。誤魔化しやすくて助かるカラーだ。
「那由花の場合は、生まれた時から頭髪は焦げ茶色。瞳もそれに近しい色合いだったからな。ハーフだとその「能力」は受け継がれないのかと。…少し安心していたのだがな…」
ハーフが故に本来の変色が見られなかったのだろうか?そんな予測をゆきはたてる。勇人もそう結論ずけているようだ。
「ナビィはむしろ、歴代の人達よりもはるかに能力が高いと言ってましたよ〜?」
「それも確認したが、…そこがよく分からないのだ。本来、能力値の高さは部位変化にダイレクトに現れる。それは歴代で証明されていたのだろう?トビィ」
『はい。部位の多さ、色の濃さ、近年では能力発動時の波動でも計測されていました』
「那由花の場合どれにも当てはまらないんだよなぁ…」
少し、疲れているのか。目尻を抑えながらまたもやコーヒーを飲む勇人。無理もない。何せ遥か彼方から帰還したばかりなのだ。
「確か、「花」なんですよね〜?」
『代々色に合わせた「花」。それにまつわる「意味」「そして能力者本人の意思」がその能力の内容になります』
「ちなみに、花恋さんはなんだったんです〜?」
『花恋様は❨クロユリ❩ですね』
「なるほど、だから黒か〜」
「能力は「機械制御」「通信侵害」とかだな」
「…ん?」
いまいちピンと来てないゆき。果たして、花恋にそんな素振りがあったかと思い返してみるが全く思い当たらない。
「例えば、那由花とゆきが遠距離で通話してたとしよう。花恋はそれを聞いたり、妨害したり、改変したりできる」
「う、うわ〜」
サラッと言われたがこの時代にそれは最早最強ではなかろうか?
『この星系とは相性が良すぎますね』
「それに、宇宙船とかそんなのも1人で何隻も操作できる」
「うわ〜…」
技術が進んだこの時代の太陽系でも1人で軽く滅ぼせるのでは?そんなことを思ったが飲み込むゆき。
「条件があるらしいがな」
「なるほど〜」
なんか、こんな話。聞いてよかったのか?と少し後悔しながらもゆきは本題に移る。
「那由花は結局、なんの「花」なのでしょ〜?」
「それがな…。わからん。本人なら何となくわかるらしいのだが、本人も自覚してないからな」
「勇人さんの予想だと〜?」
「まだあまり見てないが、赤い「花」なのは確かだな。赤と言われて思いつくのは、「バラ」「チュウリップ」「彼岸花」赤は色々あるからな。正直予想もできん」
赤は割と定番であるため候補が多すぎる。
『好きな色とかにもその「花」の色が出るようです。歴代も服などの好みで、何となくその「花」に見えるような見た目をしています』
「那由花の服〜?あ、ピンク好きだよ?薄いピンク。「桜」とか?「桃」も好きだね〜」
「なるほど」
『赤とピンクですか。桜だと赤の要素がありませんが…。ピンクが関わる花の可能性は高いですね』
「ではその線でもう少し観察してみよう」
「は〜い」
『はい』
一旦、話が落ち着いて。
「ところでゆき。なにか許可をと言っていたけど何かね?」
「あ、那由花のことなんですが…」
こうして夜は