リリスはその顔をじっと見つめながら、内心で言葉にならない感情を抱えていた。彼は音もたてずにリリスの手首を掴み、両腕をドアについてリリスを見下した。リリスの太ももには彼の股間が押し付けられ、彼の存在が嫌でも感じられた。
「え……エリオットさん?」
驚きと戸惑いで小声を漏らすと、エリオットは少しも動じずに、彼女の耳元で冷たく笑う。
「ほら、愛しの彼に助けを求めてみろよ。」
彼の言葉に皮肉が混じっているのがわかる。エリオットの息が耳にかかり、リリスは思わず身震いした。彼の手がまるで確かめるように彼女の胸を鷲掴みにし、さらに背中にぴたりと密着した固い木のドアが、彼女の体温を引き立てる。
「や……やめてください、エリオットさん……!」
リリスは少し弱々しく抗議の声を上げるが、内心ではその声とは裏腹に、なぜか高揚感が抑えきれなくなっていた。彼の大きな手が胸に触れるたびに、彼女の身体が敏感に反応し、頬が紅潮していくのが自分でもわかる。心のどこかで「こんなふうに触れられるなんて」と、思いながらも、満たされている自分がいることに気付いた。
「本当にやめてほしいのか?」
エリオットは、耳元で意地悪そうに囁くと、リリスの耳たぶをふわりと噛んだ。その瞬間、彼女の身体に甘い衝撃が走り、思わず小さな声が漏れてしまう。
「……んっ……!」
「そうか、お前は彼氏以外にも欲情するんだな。」
エリオットは冷淡にそう言いながら、さらに彼女に自分の体を密着させ、下半身の硬い感触がより鮮明に彼女に伝わる。リリスの心臓は激しく鼓動し、彼の存在に圧倒されながらも、身体が期待に震えているのを自覚していた。彼の手が自分の胸にあるのを感じながら、リリスの頭の中には、不意にもっと自分たちが深いところで触れ合う光景が浮かんでしまう。
「どうした、顔が赤いぞ。」
エリオットの声に、リリスは慌てて顔をそむけようとするが、彼の手がしっかりとリリスの頬を押さえつけて、逃げられない。
「……な、なんでもないです……」
「そうか? なら、もう少し手伝ってやる」
そう言うと、エリオットは再び彼女の胸を掴んだまま、片腕で彼女の両手首を頭上のドアに押し付けた。彼の腕がリリスの頭を包むように覆いかぶさり、彼女を完全に包み込むような姿勢になっている。その密着した体勢が、まるで二人が他に誰もいない場所で深い愛を交わしているような錯覚を起こさせ、リリスはその状況に頭がぼんやりとし始める。
「エリオットさん……」
リリスは息を荒げ、頬を真っ赤に染めながら視線をそらした。彼女の心は高鳴り、エリオットが自分を離そうとしない様子に、内心で高揚感が膨らんでいく。彼が自分をどうしたいのか、そして自分がどうされたいのか、リリスは本能的に理解していた。
「……エリオットさん、こんなの……だめ……」
リリスは抗うように体をよじらせ、潤んだ目でエリオットを見上げる。だが、その目はどこか挑発的でもあり、彼女が「プレイ」としてこれを楽しんでいることが伝わるかのようだった。エリオットは、彼女の表情にますます苛立ちと興奮が混じった複雑な感情を抱き、彼女に顔を近づける。
「ダメ? 本当にそう思ってるのか?」
エリオットはリリスの耳元に囁き、意地悪そうに笑みを浮かべた。彼女の小さな抵抗がむしろ彼の劣情を煽り、心のどこかで「もっと彼女を困らせたい」という衝動が強まっていく。
しかし、リリスは怯むどころか、ますます彼の期待通りに振る舞っているように見えた。その時、廊下から入り口からタイラーの元気な声が響いてきた。
「リリー、どこだー。帰るぞー。」
リリスは驚いてエリオットの腕の中でピタリと動きを止める。エリオットも不意を突かれて表情を硬くし、彼女の体から少し距離を取った。エリオットは施錠したカギを開け、何事もなかったかのように服を整えながら自分のデスクに戻っていく。リリスも息を整え、慌てて乱れた服を整えながら、静かにドアを開けた。
「ああ、こんなところにいたのか。」
「心配かけてごめんなさい、タイラー。まだ仕事に慣れなくて、エリオットさんに教えてもらっていたの。」
「そうか。リリーは仕事熱心だな。」
そう言うと、タイラーはいつもと変わらない屈託のない笑顔を向けた。無邪気な彼の言葉に、リリスは思わず微笑んで頷いた。だが、その瞳にはまだどこか熱が残っている。
「そうだ。エルにも差し入れを持ってきてたんだ。」
タイラーはエリオットのオフィスのドアをノックして「入るぞ。」と声をかけると、ビニール袋を手に提げて部屋に入っていった。