ジュリエットお嬢様と我が愛すべきプチデビル後輩がプレイボーイ大国イギリスへと旅立って3日目。
ゴールデンウィークもいよいよ折り返し。
そろそろ新入社員が退職届を願い出るべくアップを始める今日この頃。
俺はお屋敷に置いてあったバイクに乗って、珍しく私服姿のまま【おとぎばな】市の中で一番大きいショッピングモールへとやってきていた。
「ってぇ、なんで妾まで着いてこなきゃいかんのじゃ!?」
――プンプンと怒り狂うマリアお嬢様と一緒に。
「まぁまぁ。せっかくのゴールデンウィークだっていうのに
「だからと言って妾を連れ出すこともあるまいよ!?」
「いいじゃないですか。どうせ今日1日予定が無いってマリア様もボヤいていたことですし、ちょっと自分に付き合ってくださいよ」
「……確かに予定はないと言ったが、それでも学院の予習やら復習やらで妾は忙しいんじゃぞ!」
大体護衛も着けずにこんな場所に来るなんぞ初めてじゃわ! とマシンガンの如く愚痴を飛ばすマリアお嬢様の服装は、ゴールデンウィーク初日に会った時と同じサマードレスだった。
改めて見ると何てエロい格好をしているんだ、この
白を基調とした明るい色合いのロングのサマードレスに彼女の金色の髪がよく似合っている。
が、問題はソコじゃない。
問題は肩がガバァッ! と剥き出しになっている所だ!
優秀な諸兄の皆さまなら俺が何を言いたいのかもう分かってくれていると思う。
そうっ! 彼女の陶磁器のような剥き出しの白い肌に、男の欲情を刈りたてるブラジャーの肩紐が無いというコトだ!
ど、どういうことだ!?
何故ブラジャーの肩紐がない!?
ノーブラか?
ノーブラなのか!?
上半身暴れん坊将軍なのか!?
おいおいマイケル? マリアお嬢様ったら、このゴールデンウィークをエンジョイプレイする気満々やでぇ!
「気持ち悪いコトを言うな!? これは服にカップが入っておるからブラを着けていないだけじゃ!」
「な、何故自分の考えていることを知って……ハッ!? さては領域展か――」
「違うっ! キサマが気持ち悪くブツブツと呟いていただけじゃ!」
というかコッチを見るでないわ、このケダモノがぁ! とマリアお嬢様が自分のお乳様を俺から隠すように両手で覆ってしまう。
それはそれでグラビアアイドルみたいでエロい、もとい可愛い。
マリアお嬢様はしばしの間俺をキツく睨みつけていたが、やがてどこからともなく小さくため息を吐くなり、観念したように首を横に振った。
「ハァ……こんな所で言い争っても時間の無駄じゃし、しょうがないわい。今日だけは特別にキサマの遊びに付き合ってやろう」
「ありがとうございます、マリア様!」
「もっと感謝するんじゃぞ? 妾の時間なんぞ万札を
「はいっ! お優しいマリア様!」
「うむ、下郎にしてはいい返事じゃ。よし、では今日だけ妾をエスコートする権利をキサマにやろう。では最初はどこへ――ひゃぁぁぁッッッ!?!?」
ふんぞり返っていたマリア様の右手を俺が握った瞬間、何故か素っ頓狂な声をあげる彼女。
途端に「なんだ? なんだ?」と周りに居たお客さんたちが
俺は慌てて「何でもないですよぉ」と愛想笑いを浮かべながら、マリアお嬢様に小声で抗議した。
「と、突然変な声を出さないでくださいよマリア様! 撮影中かと思われるじゃないですか!」
「と、突然手を握ってきたキサマが悪いんじゃろ!? というか何故手を握る!?」
「いや今日は人が多いですし、迷子にならないように手を握っておこうかと……」
「な、なるほど。そ、そういうことか……」
「あ、あのマリア様? さすがに俺も照れるので、あんまり恥ずかしがらないでもらえますか?」
「ッ!? は、恥ずかしがってなどおらん! 断じておらんからな!?」
そう言って顔をこれでもかと真っ赤にしたマリアお嬢様がぎゅ~っ! と俺の手を握り締めてくる。
これが花山さん家の薫くんだったら、今頃俺の手は粉砕骨折している所だ。
「ほ、ほれ! さっさと妾をエスコートせんか!」
「か、かしこまりました」
心の中だけで『りょうかインリン・オブ・ジョイトイ♪』とM字開脚を行いながら、マリア様の手を引いてゆっくりと歩き出す。
やはりゴールデンウィークということもあり、家族連れが多いなぁ。
「
「たっきゅ~ん♪ 次どこ行くぅ?」
「う~ん、どこ行きたい~?」
「ん~、たっきゅんと一緒ならどこでも❤」
「あっはっは~♪ コイツぅ~☆」
「「…………」」
もう見ているだけでコチラが恥ずかしくなるようなやり取りをするバカップルから目を逸らす。
もうあんなの公然わいせつ物だろ?
はやくモザイク処理をしろよ政府。
ちゃんと仕事してんのか?
変なモノを見たせいで、俺とマリア様の間に微妙な空気が流れる。
どれくらい微妙かといえば、寝惚けたまま布団に股間を擦りつけている所をママンに見られたときくらいの微妙な空気感だ。
その空気を嫌ってか、マリアお嬢様がらしくもなく慌てて口をひらいた。
「と、ところで下郎? コレはどこへ向かっているんじゃ?」
「ん? あぁ~、これはですね……って、言っている間に着いたんですけどね」
「むっ? これは……」
横を向いた俺の視線を追うようにマリア様も首を横に向けた。
そこはカップル御用達の聖地であり、独り者にはワンダーランドな、
「映画館……か?」
「はい」
俺は呆然としているマリア様の手を引っ張って映画館の中へと歩みを進めた。